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第二十話

Author: 水沼早紀
last update Last Updated: 2025-12-17 10:34:57

「聖良、行ってくる」

「行ってらっしゃい。棗さん」

夫婦二人はでの初めてのデートの後から、私たちは少しだけだけど、お互いのことを知る努力を始めた。

「今日は仕事をなるべく早めに切り上げてくる。夕飯を作って待っていてくれ」

「はい。わかりました」

「行ってくる」

「行ってらっしゃい」

棗さんが出社するのを見送った後、私は掃除や洗濯、花の水やりなどをした。 でもこれが私のいつもの日常生活、なんにも変わらない普通の生活だ。

だけど棗さんが私のことを本気で愛してくれているんだと、あのデートの時に初めて知った。

その気持ちを知って複雑だったのは、確かだった。

だけど「一生愛してやる」と言われた時、私の心は確かに彼の言葉に掴まれていた。 私は彼のことをもっとよく知っていきたいと、初めてそう思った。

彼のことを好きになれたら、私はもっと幸せになれるのだろうか? そんなことを思うようにもなった。

もちろん棗さんと結婚したんだから、この先も幸せになりたい。……確かに、そう思う。

そういえば、今日の夕飯は何を作ろうかな……。

棗さんは何でも美味しいと言ってくれるけど、私みたいな一般人の妻が作る料理を美味しいと言ってくれる優しさも、きっと棗さんだからなんだと思う。

棗さんは優しいから……。気を遣ってくれているのだと思っていた。

だけどそれは本当のことだと、棗さんは教えてくれた。 それだけでもう、私の心はいっぱいだった。

「美味しいって、言ってもらいたいな……」

私は棗さんのために、美味しいものをこれからたくさん作っていくから。

「今日も一日、頑張ろうね」

 棗さんのために、私は出来ることをやろう。

✱ ✱ ✱

「え、もうこんな時間……!」

夕飯作らなきゃ……!

いつの間にか夜になり、私は夕飯を作る準備を始めた。

「よし、今日の夕飯はクリームシチューかな」

今日は棗さんが食べたいと言っていた、クリームシチューを作ることにした。

クリームシチューは私も大好きで、よく母親が作ってくれていていた。 いわば、母の味だった。

クリームシチューを作っている間に、私が考えていたのは棗さんのことだった。

棗さんは、普段はあまり家では仕事のことを話そうとはしない。

でも棗さんは御曹司として、鷺ノ宮グループを担っていく一人として、しっかりと自分の役目をこなしていることを私はよく知っている。

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