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第十九話

Penulis: 水沼早紀
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-13 19:50:15
「……なあ、聖良」

「はい……?」

観覧車が頂上に着く頃に、棗さんが私の隣に来て名前を呼んだ。

「……聖良、俺の妻になってくれてありがとう。 いつも、本当に感謝している」

「……いえ」

棗さん、どうしてそんなことを言うのだろう……。

棗さんは私に優しくしてくれる。こうして感謝の気持ちまで、ちゃんと伝えてくれている。

「聖良、お前は俺の妻だ。 一生愛してやるから、覚悟してくれ」

「……はい」

だけど時々、こうして強引に私に言葉をぶつけてくる。……強引なのに、その言葉に私の心は揺らいでしまうんだ。

彼の気持ちを知って、嬉しくない訳ではないんだ。

だけどその気持ちの真意が分からないまま、彼と一緒にいるなんて、私には……。

「……聖良、好きだ。 これからも俺は、君のことを妻として、一人の女性として愛していきたいと思ってる」

こんなに真剣な眼差しで見つめられたら、私は彼を好きになってしまう。

「棗、さん……」

「聖良……好きだ」

棗さんは私の頰を優しく撫でると、そのまま私の唇に甘くて優しいキスを落としていく。

「んっ……棗さん……」

優しいキスのはずだったのに、二回目のキスは少しだけ乱暴なキスだった。

「もう離さない。……誰にもお前を渡さない」

「棗さん……恥ずかしい、です」

こんなに愛を囁かれたら、ドキドキしてしまう。

「キスの続きは、家に帰ってからな」

「そ、そ、そんなの……言わなくていいですからっ」

はずかし気もなくそんなことを言える棗さんに、驚かされてばかりだ。

観覧車を降りた時には、もうすっかり日が暮れようとしていた。

「さ、日も暮れてきたし、帰ろうか」

「はい」

一日は本当にあっという間で、もうデートは終わってしまう。

とても楽しいデートだった。棗さんの意外な素顔を見ることも出来たし、満足した。

「今日は楽しかったか?」

「楽しかったです、とても」

「なら良かった。 またデートしよう」

私は車を運転する棗さんに「あの、今度は貸し切りとかにしなくていいですからね? ちゃんとしたところで、デートしましょう」と話したら、棗さんは「そうか。わかった」と返事をした。

「棗さん、私……棗さんと結婚して、良かったかもです」

棗さんは私の言葉に「かも?」と引っかかたようだ。

「あ、いえ。 良かったです」

「今度また行きたいところがあったら、遠慮なく言ってくれ」

「わかりました
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