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第十五話

Author: 水沼早紀
last update Last Updated: 2025-07-14 10:50:11

そんなことを知らずにいた私は、ちょっとだけ棗さんにドキッとしてしまった。

だけどそれは、棗さんには言わない。……言いたくない。

「棗さん、ごちそうさまでした。 とても美味しかったです」

「それはよかった。また来よう、二人で」

「……はい」

棗さんは駐車場に着くまで、私の手をギュッと握りしめてくれていた。

だけど棗さんの気持ちを知ってしまった私は、その手を離すことも出来ないのだ。

棗さんが私のことを好き……。そんなこと言われても、まだ信じられない。 棗さんは私のどこが好きなんだろう……。

人を好きになったことは、私ももちろんある。 だけどその好きを、まだ棗さんに感じてる感じはないと思うんだ。

……いっそのこと、棗さんのことをこのまま好きになれたら、楽なのにな。

「……聖良、どうした?」

「え? あ、いえ……」

また車に乗り込み、私たちは自宅へと運転手さんの運転でまた戻った。 相変わらずカッコいい横顔だな、肌もキレイだし。

「聖良」

突然名前を呼ばれて、棗さんの方へと振り向く。

「はい?何でしょうか?」

「今日は嬉しかった」

「……えっ?」

急にそう言われて、びっくりしてしまった。

「聖良と一緒に食事が出来て、嬉しかった。 たくさん話も出来たしな」

「……はい」

確かに今日は、棗さんとたくさん話をしたな。 色々と話して、楽しかった。

「これからも、なるべく時間がある時は二人で話をしよう。お互いのことを知るために」

私は棗さんにそう言われたので「……はい。そうですね」と答えた。

「俺も聖良のことを、もっとよく知りたい。……妻としてではなく、俺の好きな女性として、聖良のことをもっとよく知っておきたい」

「はい。私も、あなたのことをよく知っておきたいです。……棗さん、あなたは私が永遠の愛を誓いあった人ですから。 旦那さんのことをよく知ることは、当然のことだと思います」

「そうか。 まあ、それもそうだな」

「……はい。そう思います」

そんな私に、棗さんは「なら、俺から一つ提案がある」と言い、私の方を向いた。

「……なんでしょうか?」

「今週の日曜日に、二人でデートをしよう」

「へっ?」

デート……? 私と棗さんが、二人でデート……?

そう言われれば確かに、結婚してからもする前も、私は棗さんとデートしたこともなかった。

そもそも、デートする前に結婚してしまった
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