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第959話

Author: 小粒キャンディ
夏海はあまりよく眠れず、翌日の朝早くに目が覚めてしまった。

彼女が部屋を出てきた時、誠はやはりすでにいなくなっていた。

ソファの上にはブランケット等が綺麗に折りたたまれていた。

誠は何も残していかなかった。テーブルの上にあったケーキの箱もゴミと一緒に持っていってくれていた。

彼は本当に風のように突然来て、いつの間にかいなくなってしまう。

夏海は誠が昨日寝ていた場所に座り、心が苦しくなった。

感情とは一体なんなのだろう。

どうして互いに惹かれ合っているのに、こんなにも難しいのか。

好きな人に限ってなぜ離れていってしまうのだろうか。

夏海はとても疲れていて、会社に一時間遅刻した。

彼女が会社の受付前を通りかかった時、誰かが一花に早く会いたいと焦っているのを見た。

「社長でしたら暫く不在にしておりますが、何かご用でしょうか?」

普通、一花に会わせてほしいと受付に言いに来る人はいないので、夏海はおかしいと思った。

前回、このように一花に会おうとして来たのは誠だった。

受付はすぐに相手の名刺を夏海に見せた。

「こんにちは。私は以前、伊集院社長
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    夏海はあまりよく眠れず、翌日の朝早くに目が覚めてしまった。彼女が部屋を出てきた時、誠はやはりすでにいなくなっていた。ソファの上にはブランケット等が綺麗に折りたたまれていた。誠は何も残していかなかった。テーブルの上にあったケーキの箱もゴミと一緒に持っていってくれていた。彼は本当に風のように突然来て、いつの間にかいなくなってしまう。夏海は誠が昨日寝ていた場所に座り、心が苦しくなった。感情とは一体なんなのだろう。どうして互いに惹かれ合っているのに、こんなにも難しいのか。好きな人に限ってなぜ離れていってしまうのだろうか。夏海はとても疲れていて、会社に一時間遅刻した。彼女が会社の受付前を通りかかった時、誰かが一花に早く会いたいと焦っているのを見た。「社長でしたら暫く不在にしておりますが、何かご用でしょうか?」普通、一花に会わせてほしいと受付に言いに来る人はいないので、夏海はおかしいと思った。前回、このように一花に会おうとして来たのは誠だった。受付はすぐに相手の名刺を夏海に見せた。「こんにちは。私は以前、伊集院社長の医療チームのメンバーだった医者です」夏海が名刺を見ると、彼女は松本杏という名前だった。名刺にはセンター医療大学の特別外科医と書かれてある。「どうも、あのう、何かご用でしょうか?」杏はすぐに答えた。「伊集院柊馬社長にお会いしたいんですが、彼とは知り合い程度で連絡先を持っていません。伊集院グループの本社にお伺いしたのですが、いらっしゃらなくて。社長の病気は少しは良くなりましたか?ある治療法を彼に試していただきたくて今日はお話に来たんです」M国から戻った後、杏はネットで柊馬に関する噂を目にし、ずっと心配していた。そして彼らの結婚式のニュースを見て、ようやく安心できた。ここ暫くの間、彼女は父親と一緒に漢方を利用した腫瘍治療の研究をしていた。以前まで多くあった偏見はこの時すでに消えていた。西方の伝統的な治療方法では、柊馬の腫瘍は暫定的に進行を遅らせる程度で完全な治療まではいかない。これではやはり悪性に変化したり、病変する危険がある。しかし、父親の治療方法を採用すれば、大きな確率で完治することが可能だ。杏は自分のその目で、父親がある患

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    「わからないわ。でも、あなたが何を心配しているのかはわかるよ。だからさっき、来栖さんにチャンスをあげたかったの」一花から笑顔が消えた。彼女は柊馬の腕を掴み、小声で後ろめたさを吐き出した。柊馬の考えは明確だった。一花はどちらかというと感情的で、彼のほうは理性的だ。柊馬は身内に甘いタイプだ。陽菜と湊では、柊馬は湊に傷ついてほしくないと思うはずだ。それにあの二人が互いに気持ちがあったとしても、陽菜は一般家庭出身ではない。湊が彼女と一緒になろうと思えば、そう簡単に家柄の差を乗り越えることはできないだろう。それに、柊馬は陽菜のことをよく知っているので、彼女がその障壁を乗り越えるのは困難だとわかっていた。「……」……夜の帳がだんだんとおりてきて、賑やかな街がキラキラとした明りに照らされ始めた。中心地はこの時間帯が最も賑やかだ。一日の仕事を終え、帰宅する人や飲み会、ショッピングに向かう人々が行き交っている。このような光景には夏海はただ嫌気がさしていた。街が賑やかになるにつれて、彼女はますます孤独を感じてしまう。しかし、今日はいつもとは違った。スーパーの中を行ったり来たりして、値引き品に人が集まっているのを見て、夏海は珍しく満たされていた。「これが食べたいけど、値引きにはなってないな」誠の声が聞こえ、夏海がその方向を見てみると、彼はショッピングカートを押して生鮮食品売り場に行っていた。そこには新鮮な牛肉やモツが並んでいた。彼は真面目な顔をして商品を持ち、夏海に見せた。「値引きじゃなくても気にしないでください。私がご馳走するって言ったんです。お客さんなんだから、遠慮しなくていいですよ」夏海は笑い、すぐに誠が持っている物を受け取って、カートの中に入れた。たくさん持ってきたとしても、一度食事をするだけだ。誠は明日にはいなくなるだろう。今夜のこの食事が終われば、次にいつ一緒に食事ができるかわからない。実は、誠は柊馬と一花の無事を確認したら、黙って去る予定だった。しかし、夏海の姿を見てしまうと、彼はどうしても彼女に会いたかった。夏海も誠が長くここに留まることはないとわかっていた。しかし、どうしても夕食を一緒に食べようと彼を熱心に誘ったのだ。それに誠は同意したが、夏海が作った料理しか食べ

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