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都市伝説は真実だった

Auteur: 結城慎二
last update Date de publication: 2026-06-02 18:00:25

「じゃあ次は概要ね」

 と、リリムは言う。

「世界の概要は現世の知識があるから割愛ね」

 あらま。

「あなたは転生の際にDNAってやつに細工されていてね、神様曰く人よりちょっと優秀になってるそうよ」

 え? ちょっと?

「そこはとても優秀になってんじゃないの? テンプレ的に」

「いくら世界に干渉できる環境にある神様だってそんなことホイホイしたら世の中のバランスが狂っちゃうでしょう?」

「異世界転生は世界のバランスを崩さないのか?」

「崩すわよ。それなりに。そもそも異世界人を招き入れるのは世界のバランスが神様の思惑からずれかけているからなんだし」

「それは……いわゆるテンプレ的な魔王軍の侵略とか?」

「主に人間の政治関係よ」

「なんとまぁ」

「そもそもこの世界は多神世界であなたを呼び込んだ神様は人族担当なの。魔族がやらかしたら魔族の神が責任取るのが普通でしょ?」

「あー、そんなもんですか」

「もちろん人間側でも手助けするわよ。たまに勇者召喚とかしてね」

「そっちがよかったな」

「スーパーハードモードよ?」

「今より?」

 そんな質問をしたらすげぇ冷たい視線を投げてよこしてきた。

「これ、この世界じゃノーマルモードなんですけど……」

 マジですか。

「話を戻すわね。あなたがこの世界で生き抜いてくれればそれでかなりの干渉になってある程度神様の考えた世界になるの。一緒に頑張りましょうね」

 生きてるだけでいいってのは確かにノーマルモードだな。

 特に何かをなさなきゃいけないわけじゃないんだから。

「判った。とりあえずサバイバルゲームか何かだと思えばいいわけね」

「ま、そう言うこと」

「よくあるゲーム的な職業的な……」

「テキテキうるさいけど、今のあなたは孤児Aだから」

 あ、あぁ……そうだね、確かにそうよね。

「……まずはこの冬を生き延びねば……」

 突然現実が目の前に広がった結果、ノーマルモードがハードモードに見えてきた。

「ここは魔法が使える世界だったよね」

「そうよ」

「僕もその……使えるようになる?」

「残念だけどそれは無理ね」

 マジか。

 チートどころか魔法も使えないだとぅ!?

「な、なぜでしょうか?」

「神様が言うには転生者で魔法が使えるようになるには、前世で三十歳までDTとか言う状態でいなきゃいけないんだって」

 なんですとぅ!?

 前世の都市伝説は真実だった。

 僕は、前世で曲がりなりにも結婚してたし、高校生の息子もいた。

 …………。

 うん、仕方ない。

 諦めよう。

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Dernier chapitre

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    武器の調達は戦の行方を左右する

     それだけじゃない。  戦が続けば戦闘員が不足する。  最初は家の子郎等だけで戦っていた武士も農民兵を徴収しだす。  いわゆる足軽だ。  ちなみに、こっからは歴史オタク的うんちくなんだけど、『足軽』の記述は平家物語にすでにあるんだ。  当時の足軽は戦闘員ではなく後方支援部隊として輜重や陣の設営を担当していたらしい。  源平合戦の頃は「やあやあ我こそは……」でお馴染みの一騎打ちの時代だったから通常は直接戦闘に参加しなかったんだろう。  それが『悪党』の戦力となり、集団戦の時代の重要戦力として組み込まれる。  まさに「戦さは兵力ですな」だ。  もちろんこれは日本の事例であって、異世界の話だ。  けど、人の歴史なんて似たようなもんだろ。  今は志願兵で揃えられている各領主の戦力もいずれ徴兵で揃えられることになる。 ──というのが僕の見立てなんたけど、こんな前世知識をもとにした分析で村人を説得できるわけもない。  ないんだけど僕には、もう一つの知見がある。  オギンやジョーたちが持ち込む情報だ。  今年になって村に来た人たちの体験も侮れないよ。  そう言った様々な情報を出し、出させて自分たちが置かれている状況を理解してもらう。  議論は深夜まで及んだ。  こういう危機を煽るやり方は、さじ加減を間違えると暴発するんでできれば使いたくないんだけど、効果的なのも事実なのよね。  ということで、村は秋の徴収まで面従腹背を通し領主に対して叛旗を翻すことになった。「去年の野盗との戦いは村の男のほとんどが戦闘に参加したわけだけど、今回はどうしようね」 と、サビーに訊ねると「弓師と矢師は外してください」 と、明確だ。「他の職人も大事ですが、武器の調達・メンテナンスは最重要です」「それをいうなら、ジャリもじゃないのか?」「殴ればある程度ダメージを与えられる剣と違って、飛び道具は命中精度に響きます。それに、率直に言ってジャリ程度の鍛治師ならいくらでも調達できます」

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     肚が決まれば行動は早い。  その日の夜には村人全員を緊急集会に招集して昼の一件を報告する。  村の人口は八十に近い。  キャラバン不在でさえだ。  キャラバンの隊員を含めれば優に百人を超える。  そんな村人が口々にざわめくのだからなかなか収拾がつかない。  ここは一番、声の大きなガーブラに騒ぎを納めてもらおう。「あー、静かに、静かにっ!」 すげーでけー声で突然言われたので、中央広場はしんと静まりかえる。  先生に一喝されてしゅんとなる児童みたいだ。「みんなにも色々意見はあると思うけど、村は当初から自治独立を目指していた。この件については一応全員説明を受けていたと思う」 説明を受けていたからと言って納得していたとは限らない。「王国の北西の僻地に隠れ里的な村があるらしい」 的な噂を頼りに戦火を逃れてきたような人たちが、「すわ、男爵が徴税に来たから武力で追い返すぞ」 なんて言われても「おいおい待ってくれ、俺たちは戦いから逃げてきたんだ。おとなしく税を払ってなにが問題なんだ?」 とか思っても仕方ない。  でも、納税したからと言って安泰なんてありえない。  『ご領主様』の要求なんてエスカレートするのが前提だ。  やがて税額が高騰する。  戦ってのはとにかく金がかかるものだ。  前世日本では米本位制の期間が長くて歴代政府は主に米で税を徴収していた。  教科書では江戸時代の年貢は一般に五公五民と教わった。  実際には中期以降四公六民だったみたいだけど、実に収穫量の半分を徴収されていたことになる。  ところが安土桃山時代、例えば有名な太閤検地後の年貢率は基本「領主が三分の二」という法令が出ていた。  戦国の時代が収束してなお、三分の二も持って行かれていたのだから、戦国期はどれだけ取られていたか判ったもんじゃない。  もちろん、地域によって条件も違っていて、穀倉地帯なら五公五民だったかもしれないけど、土地の痩せたところでは八割持って行かれてい

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  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    早速役に立ってもらう

    「家がルンカー造りだべ?」「あ! ああ!」 この国ではルンカーで家を作れるのは法律で決められた一定額の税を納めた者だけということになっている。  もちろん、最終的には領主と一戦構える心算だけど、それは今じゃない。  今は全力で門前払いをするのが僕の至上命題だ。「お館様」 すっと、オギンが僕のそばに立つ。「あと、八半時間ほどで到着します」 !「オギン」「はい」「今の見張りはガーブラだったよね」「はい」「使者に声が届く距離まで来たら僕を大声で呼んでくれるように頼んでくれ」「かしこまりました」「あ、その時は村長って呼ぶように念を押してね」 ひとつ頭を下げ、村へと戻る。 八半時間の半分もしないうちに、「おや……村長ぁ! 誰かやってきます!」 でけー声だな……。  つーか、どんだけ声届くんだよ。  使者だと判るってことはホルスに乗ってきたってことだろ?  並足で歩かせてるとして、あと八半時間の半分ちょっとはかかるってんだから一カルは先にいるんじゃねーの?  まぁ、いい。  僕は見張りを見上げ、道の向こうを見る演技をする。  そして手ぬぐいで汗をぬぐって農作業をしていた他の村人と畑から出ようとする。(リリム)「なによ?」(使者はホルスに乗ってるよな? 歩かせてるか? 走らせてるか確認してくれないか?)「はいはい」 リリムはすっと飛び上がるとすぐに戻ってくる。「結構な速さで向かってきてるわよ」 おおぅ!  じゃあ、もう少し芝居しとこうか。「みんな! 急いで村の中に戻るんだ!」 なんて大声で叫ぶ。  村人は「突然なんだ?」という困惑を浮かべながら、それでも指示に従ってくれる。  僕は指示を出しつつ殿をつとめるふりをして使者との距

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    衝撃の事実発覚!

     村は急ピッチで発展を遂げる。  秋蒔きのフレイラを刈り取って、春の種蒔きが終わる頃には人口が倍近い七十六人になっていた。  戦火を逃れてきた農民がほとんどだったのは、町ではなく他領の農村でこの村の話を広めた成果でもある。  なぜ、そうしたかといえば、態勢が整う前に男爵の茶茶が入らないようにっていう配慮だったんだけど、こんだけ一気に増えたら嫌でも悪目立ちするよな。  てな訳で、初夏に入る前の天気のいい日、ついにズラカルト男爵の使者がやってきた。「あー、来ちゃったんだね」 と、第一報を受けた僕はため息をつく。  場所は北の開墾地。  見張りからの報告だったんで、到着までには多分まだ一時間はある。「とりあえず、到着したら門の前で待たせておいて」 と、頼んで着替えることにする。  …………。  いや、このままで行こう。「どうして?」 あ、リリムおまっ、また人の心を読んだろ!「あのね、この際だからいっとくけど、私はあなたのために神から遣わされた神の眷属なんだから、本来考えるだけで会話できるんだからね」「え? え!?  今までずっと思考垂れ流しだったの?」「そうよ」 や、やべー。「それって一種のサトラレ状態ってことじゃねーの?」「ね」「…………」「安心して、恥ずかしいこと考え始めたら意図的に思考をブロックしてるから」 僕は、声も出せずに口をパクパクさせるしかない。「ひ、一つ確認してもイイデツカ?」「なによ?」「その能力は、例えば遠く離れてても有効だったりする?」「そもそもこの能力は神への報告のための能力なんだから、当たり前じゃない」 …………。 もはや天を仰ぐしかない。「そろそろ質問に答えてもらってもいい?」「え?」「どうしてその格好のまま会おうとしているか」「あ、ああ……人は見た目が九割って話があ

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-後篇-

     村に戻った僕は村人の埋葬をする。  人の死には慣れている。  現世の僕が、だけど。  この世界は前世の世界と違って文明水準が高くない。  当然医療水準も高くない。  田舎だからってのはあるかもしれない。  大きな街はもしかしたらすごく発展しているのかもしれない。  魔法のある世界だから、当然治癒魔法もあるはずだ。  でもそれがどれくらいの効果があるかもわからない。  だからこの村はよく人が死んだ。  子供は特によく死んだ。  僕にも姉と妹がいたらしい。  妹の方はかす

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-前篇-

     僕は十五歳の朝を木の枝の上で迎えた。  この世界の元服、つまり成人の儀式が行われる日だ。  確かに一生忘れられない日にはなったけど……切ない。  あまりにも切ない。  秋とはいえ、昼頃になればそれなりに暖かくなる。  今日は天気もいいので昼頃にはむしろ汗ばむほどの陽気になった。  慎重にあたりの気配を確認しつつ、木から降り集落に戻ると、まだプスプスとくすぶっている焼け跡の中を歩く。  あたり一面、嫌な臭いが立ち込めているのは、村人の焼けた臭いだろう。  昨日から何も食べてないのに込み上げてくる胃液を吐き出し

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    五日ぶりの温かい飯

    「で、僕のステータスはどうやったら確認できるの?」「なにそれ、美味しいの?」 え?「うそうそ、そんな便利機能現実世界にあるわけないじゃない」 だよねー。「数値が知りたいなら体力測定とかIQ検査でもしてみる?」「それって実際あてになるの?」「参考程度には」 だめじゃん、そんなの。「まぁまぁ。ホラ、そろそろ準備始めなきゃまた木の上で寝ることになるよ」 リリムに言われて気がついた。  お日様がだいぶ西に傾いているらしく、僕の影

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    泣ぬれるは枝の上

    「逃げたのはガキ一匹か」 と、僕の真下で傷だらけのごつい男が言っている。  こいつが盗賊団の頭目と見た。「へい、多分」「多分だと!?」「へ、へ……」 あたふたした下っ端が頭目にぶん殴られ、仰向けにぶっ倒れる。  気絶してろ!  盛大に気絶してろよ、でなきゃここにいることがバレる。  僕の祈りは天に通じたのか、そいつは白目をむいて動かない。「このさらに奥に行ったかもしれませんぜ」「ならいい」 頭目は、一言吐き捨てて踵

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