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さゔぁいぶ-後篇-

Author: 結城慎二
last update publish date: 2026-06-02 12:00:02

 村に戻った僕は村人の埋葬をする。

 人の死には慣れている。

 現世の僕が、だけど。

 この世界は前世の世界と違って文明水準が高くない。

 当然医療水準も高くない。

 田舎だからってのはあるかもしれない。

 大きな街はもしかしたらすごく発展しているのかもしれない。

 魔法のある世界だから、当然治癒魔法もあるはずだ。

 でもそれがどれくらいの効果があるかもわからない。

 だからこの村はよく人が死んだ。

 子供は特によく死んだ。

 僕にも姉と妹がいたらしい。

 妹の方はかすかに覚えている。

 姉は怪我がもとで、妹は流行病で亡くなったそうだ。

 村人は誰が誰だかほとんどわからないから、申し訳ないけど、まとめて村の墓地に埋める。

 そんな僕のことを見ていた奴がいた。

 気づかなかったのも無理はない。

 四日も気の休まらない樹上生活で疲弊していたのと、作業に集中していたからってのもあるけど、相手が妖精だったからってのが一番の要因だ。

「大変だったね」

 と、そいつは埋葬が終わって埋葬の呪まじないを唱え終わった僕に声をかけた。

「!?」

 当然ビビるわな。

 前世の僕は当然として、現世の僕も妖精を見るのは初めてだった。

 妖精は十二スンブくらいの女の子で、髪は長くて栗色で、背中に透明なトンボのような羽が生えている。

 うん、フェアリーだね。

「案外冷静ね」

 驚いてるよ。

「さてと……」

 妖精はヒラリと飛ぶと、僕の肩あたりにやってくる。

「最初のクエスト『生き残り』クリアおめでとう!」

 なんですと?

「頭にハテナが浮かんじゃってる? 無理もないか。前世の記憶は戻ってるよね?」

 僕は、ゆっくり頷く。

「早い話が君はなろうテンプレ的に転生したわけ」

 あ、やっぱり。

「ま、神様が誤って殺しちゃったとか悲劇的な死をかわいそうとか思ったわけじゃないんだけどね」

「じゃあ、どうして転生を?」

「ん? それは知らない。とにかく、最初のクエストをクリアしたら私がこの世界のナビゲーションとしてあなたのサポートをするようにって神様から仰せつかったわけよ」

 てことは、神の眷属とか天使の類か? この妖精は。

「うむ、我輩は天使(見習い)である。名前はまだない」

 漱石さんちの猫ですか? あなたは。

「てことで、第二クエストは私に名前をつけること」

 …………。

「早くして?」

「真っ先に浮かんだのはチャムかリリスかなんだけど、権利凸が怖いから間をとってリリムってことにしよう」

「異世界にまで凸できたらすごいよね?」

 あー、それもそうだね……。

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  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    二年放置のツケ

     雑木林の管理ってものなかなかどうして大変だ。  もっとも収穫を減らしたのはキノコ類だ。  収穫量で去年の六割に届かないという報告が来ている。  冬の大事な食料なのにやばいな。  西の森にはキノコが多いんだけど、西は断崖になっていて迂回しなければ登れないのとスクリトゥリがいる。  戦闘演習以外ではあまり入りたくない森だよな。  サビー、イラード、ガーブラには北の森で狩猟を。  ザイーダには雑木林で肉食獣に襲われないように護衛を頼んである。  村の留守番にはチャールズと子供達、それから身重のヘレンを残してある。  クレタは収穫班についていきたいと言っていたけど、居残りで子供達に読み書きを教える役を押し付けた。  村が襲われる心配は今の所ほとんどないからできることだ。  ひと月(二十五日)ほど経った頃、ジョーのキャラバンが戻ってきた。  その中に消沈したドブルがいる。  他にふた家族計八人を連れてきていた。「お帰りなさい」 声をかけたジョーは挨拶もなしににやけた顔でこういった。「話はこいつらに聞いたぞ。野盗を殲滅したんだって?」 そこにオギンはいなかったけど、複数形にしたってことは話を聞いた時点ではオギンもいたってことだ。「一人生き残りましたけどね」「それも聞いてる。街の宿で逃げられたそうだ」 予定通りなんだけど、ポーズとして表情は作っとかなきゃな。「え? そうなのか?」 ちょっとわざとらしかったかな? と反省しながらドブルに訊ねると、大きな体を目一杯たたむように小さくなってうなだれた。「で? オギンは?」 と、これも僕の指示で戻ってきていないのを知っていながら訊ねると、「逃げられてすぐキャラバンと出会いまして、オレだけ報告のためにキャラバンに同行しました。オギンは後を追うといって別れました」「そうか……」

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    村人総動員令発令

     とにかく施設の必要性は村の規模拡大にあたって必要なものであるということで、村人を説き伏せていく。  ただの農村にいらないってのは確かだ。  だけど、百二十人規模の街にしようとなったときにどうしても必要になってくる。  必要だと判っていて準備しないなんて都市計画として最低だからなんとしても必要になる前に完成させておきたい。  前世のことわざで「泥棒を捕らえて縄をなう(略して「泥縄」)」というのがある。 「物事に出会ってから慌てて準備をすること(大辞林)」 平時ならともかく有事に際してそんなんじゃ世の中渡っていけない。  サラリーマン時代、よくそんな状況に追い込まれてた。  大抵は先輩や僕らの指摘を上司が無視して、危機が現実になってから理不尽に上司に対策を迫られた。  居酒屋で先輩たちと愚痴ったもんだ。「最初から判ってたべや、な?」 ってな具合だ。  不承不承なところもあったかもしれないけど、この件に関しては村長の権威で押し通し、計画を実行に移すことにした。  あんまり強権的に物事を進めると後々しっぺ返しが怖いんだけど仕方ない。  翌日から村は動き出した。  まず、今年も北の森から木材を切り出す。  ついでに北側を開墾して農地にする計画だ。  去年から随分木を切り出しているので割と拓けた感じになっているけど、その時の切り株が残ってる。  ルダー曰く「根を抜くと地盤が緩む」っていうんでそのままにしていたんだけど、これを抜いてしまわないと畑にならない。  この作業は伐根というらしい。  なかなかに重労働だ。  抜いた根は炭焼きに回す。  こっちの作業は男手の大半を割いて行われた。 女手は雑木林での収穫に当てる。  今年もピサーメ、マルルン、ダリプと豊作だ。  ただ、この二年手入れが行き届かなかったんで味が落ちている。  雑木林が荒れたことで野生動物も近づかなくなって土枯れしたせいもあるだろう。

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    朱夏-ある中年のつぶやき-

    「人生やり直せたらなぁ……」 そう思っていたことが僕にもありました。 ありましたが……。 だからってこれはないんじゃないでしょうか? こんな状態で前世の記憶が蘇るとか、神様の仕業だとしたら「あんたバカぁ!?」って罵ってやりたい。 いいや、一発殴らせろ。 こんな切羽詰まった状態だが、現在の状況を冷静に確認分析だ。 まず、ここは村はずれの雑木林をちょっと入

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    都市伝説は真実だった

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  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    五日ぶりの温かい飯

    「で、僕のステータスはどうやったら確認できるの?」「なにそれ、美味しいの?」 え?「うそうそ、そんな便利機能現実世界にあるわけないじゃない」 だよねー。「数値が知りたいなら体力測定とかIQ検査でもしてみる?」「それって実際あてになるの?」「参考程度には」 だめじゃん、そんなの。「まぁまぁ。ホラ、そろそろ準備始めなきゃまた木の上で寝ることになるよ」 リリムに言われて気がついた。  お日様がだいぶ西に傾いているらしく、僕の影

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    晩秋の枝の上で八方塞がり

     さて、ここからは前世の記憶をフル活用だ。  襲ってきたのは、十数人の盗賊団。村には女子供を含めて三十人ちょっと。ここは本当に農村の一集落だった。  ん? この世界は前世知識的にどれくらいの文明水準なんだ?  くそっ、ど田舎の未成年じゃ参照知識がなさすぎる。  異世界転生ものならそれなりの環境に生まれ直させろっての。  ──って言っても仕方ないわけで、そもそもテンプレの神様にあった記憶がない。  現世の記憶を手繰り寄せてもなろう系のお作法である知ってるゲーム世界的な場所でもなさそうだ。  あ、もっとも僕、

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