Masuk「で、僕のステータスはどうやったら確認できるの?」
「なにそれ、美味しいの?」
え?
「うそうそ、そんな便利機能現実世界にあるわけないじゃない」
だよねー。
「数値が知りたいなら体力測定とかIQ検査でもしてみる?」
「それって実際あてになるの?」
「参考程度には」
だめじゃん、そんなの。
「まぁまぁ。ホラ、そろそろ準備始めなきゃまた木の上で寝ることになるよ」
リリムに言われて気がついた。
お日様がだいぶ西に傾いているらしく、僕の影が僕の二倍以上に伸びていた。 秋の日は釣瓶落としと言いまして、確かにここでただ喋っているのは時間の無駄だ。 僕は村に戻って今日の寝床の準備をすることにした。 焼け跡の村でまずは…………。
あれ?
何か忘れているような?旅の一行は次の宿場町を目指す。 こちらはまだ建設中だ。「あ、お館様」 最初に気づいたのは今や若き棟梁としてなかなかに親方の風格を身につけ出しているジャスである。 なかなか目ざといな。 普段から目配り気配りしているんだろう。 やるじゃん。「順調かい?」「ぼちぼちってとこですね。それより、ご視察ですか?」「いやいや、隣村のその先まで行く途中なんだ」「面白そうですね」「楽しみではあるけどな」 ここは長居しても邪魔になるだけだろうからとジャスと軽く打ち合わせをして隣村へ向かう予定でいる。「なるほど木賃宿ですか」「そう。うちの町ではもうみんなそれくらいの金を持ってるのが当たり前になっていてすっかり失念していたんだけど、田舎の村ではお金なんて滅多に見るものじゃなかっただろ」「確かに」「じゃあ、適当な感じで頼むよ」「判りました。それはそうと、ここのところ移住者が減ってますけど、何があったんでしょうね?」「ん? 減ってるの?」「ええ、こっちの建設始めてから一度も来てませんよ。まぁ、仕事がはかどるんでオレとしてはありがたいんですけどね」 そういえば、前の宿場でも僕らが最初の客だって言ってたな。 何かあったんだろうか? 町の人口飽和もあるし、確かに今のところは助かる現象だ。「まぁ、その件は調べてみるよ。ところで、ジャスからみて、ジャスの代わりになりそうな大工はいるか?」「え? オレ、棟梁クビですか?」 あ、ビビらせちゃった。 全く言葉足らずにも程があるな。「ああ、すまん。ジャスには任せたい仕事があるんであとを任せられそうな人員を確保しておいて欲しいんだ」「嬉しいこと言ってくれますね。筋のいい奴が二、三人いるんで試しにここの建設やらせてみます」「よろしく頼むよ」 建設現場を後にして、僕らは隣村へと急ぐ。 まだ日も高いうちに田
町での相場感からいくと一泊二食付きなら二百から三百銅貨ってとこだろうけど、他所から来た人はおおむね金を持っていなかった。 そういう世の中だ。 そういったとこを全然考慮に入れてなかったじゃないか。 まいった……。 江戸時代初期辺りまでは自分で食材を用意する素泊まりの宿が多かったそうで、その飯を炊くのに薪の代金を払ったことから木賃宿と呼ばれる。 対して旅籠は基本一泊二食付き、いいところはチェツクアウトの際に道中で食べる昼の弁当を出してくれたという。「木賃宿を建てなきゃだめだな……」 と呟いたら、「それ、オレが建てます。そこ、そのままオレが主人でいいですかね?」 そういったのは、ここが気に入ったといって町から奥さんを呼んで住み着いた元建設作業員。「客用の炊事場があって雨風しのげりゃいいんですよね?」「ああ。ただこの辺は冬は寒いからちょっと考慮しなきゃ凍死する客が出かねないぞ」「そこはオレも心得てますよ」 っていうなら大丈夫だろう。「で、薪の値段って五銅貨でいいですか?」 町での薪の相場がそんなもんだったっけ? 町長特権で炭しか使わないんでよく判んないや。「そうだね、自給自足で暮らすんなら原価販売もいいけど、薪を用意するのだって一苦労だろうし、宿の掃除洗濯だって結構重労働だろ?」「じゃあ、十銅貨ってことで」 原価率五割は前世感覚だと高いけど、こっちじゃまだまだそんなもんか。 むしろ利益乗せすぎとか言われそうだ。 そのほか諸々も差配しているうちに日が暮れて、カイジョーたちが帰ってきたのでみんなでちょっとした宴会になった。 ペギーによれば、毎日こんな感じなんだという。 飯場かよ。 宴のあと、僕は宿のスイートルーム的なところで酔いでフラフラする中、ロットとチャールズ宛に手紙を書く。 ロットには生活物資の補給のお願いを、チャールズには宿場町が使う用の飛行手紙を用意してもらうためにだ。
魔法使いなら魔力をチャージできるそうだけど、魔法使いは絶対数が足りない。 なぜこんなものを作ってもらったかというと道中に一箇所、グフリ族のテリトリーがあるからだ。 グフリ族は夜行性でたびたび旅人を襲うことで知られているのだそうだ。 それだけ聞くと元日本人的には討伐対象のモンスター扱いしそうなところなんだけど、彼らは縄張り意識が強く排他的なところがあるだけで、人と交易もする種族なんだそうだ。 厄介なのは人族のように明確な領域を主張しないところ。 ぶっちゃけその時の気分でテリトリー主張するってことだ。 前の日に問題なかったところで次の日には襲われたり、以前襲われた場所で「ここはテリトリーじゃないから」と気さくに語らったりするという。 領土意識が明確な人族には理解しがたいはた迷惑なテリトリー意識だけど、それが異種族交流というやつだと言われれば仕方ない。 前世でも野生動物とはそういう折り合いでやっていた。 ここでは言語による意思疎通ができる存在が人族以外にいるだけ。 ホルスに乗っていれば一日で隣村までつけるんだけど、視察も兼ねて今日は第一宿場町で一泊することにしている。 途中で街道整備のカイジョーたちと出会って以降はびっくりするくらい道幅が広くて進みやすい。 いやあ、いい仕事してますねえ。 まだ日の高いうちに到着すると十七人総出で出迎えてくれた。 宿場町とはいうが、立派すぎる宿が二つあるだけの総人口四家族十七人の集落だ。 街道整備の作業員も逗留しているが、さっき会ったばかりだし彼らはまだ帰ってきていない。 まだ、役割の割り振りもできていないようで、みんなで手分けして仕事をしている。 まぁ、僕らが最初の客なんだから当然か。 宿賃も設定してないくらいなんにも決まっていなかった。 この世界、村々では村長の家に泊めてもらえることもあるようだけれども基本的に旅は野宿のようで、「宿」があるのは大きな町くらいなのだとルビンスが教えてくれた。 あ・こりゃだめだ。 僕は急遽前世知識とオギンの
ロットに僕の代行を押し付けて五日ほど様子を見た。 もちろんルビレルをその補佐につけて。 僕もオブザーバーとしてアドバイスはしたけど、最終決断は彼に任せた。 その結果、多少決断が遅いきらいはあったけど、町の運営に支障が出るようなことはなさそうだとの結論に至った。 六日目、僕は二人に町の運営方針を指示して、完全に後を任せることにする。 七日目、町の諜報にザイーダを残して、ホルスの世話をしているチローに良さげなホルスを三頭選んでもらってルビンスとオギンを供に旅立つ。「嫁探しもお願いしますね」 と、笑いながらいうサビーと、なぜか寂しそうなクレタが見送りに出てくれた。 嫁取りねぇ……。 旅の支度はオギンに任せ、僕はいくつかの魔法の道具と冬の間試作を重ねてきた紙を背負う。 魔法の道具といえば冬の間、ラバナルと弟子のチャールズにいくつかの新しい魔道具を開発してもらった。 改良型の飛行手紙は僕の館宛ではなく特定個人に届くようにしてもらったもので、当面は僕に届くようにしてもらっている。 というか、ようやく僕個人に送れるようになったというか、他の人ではテストしていないというか、なかなか複雑な魔法陣のようだ。 ともあれこれで僕がどこにいても政治的判断を僕に仰ぐことができるようになったわけだ。 従来型も僕の館以外にルダーの代官屋敷宛の飛行手紙も作ってもらった。 これで町と村は有事の際にすみやかに連携ができるようになる。 本当は電話を開通したいところなんだけど、あれは魔力が必要なんで村側に使える人材がいないんだよね。 その飛行手紙は僕が二十枚を背負い袋に背負っている。 村についたらルダーに渡す予定だ。 そして結界の寝袋。 寝袋に入ることを発動条件に攻撃意思、敵意を持った相手が十五シャル以内に入ると知らせてくれるという優れものだ。 残念ながら込められる魔力量の関係から三泊分の効力しかないのが欠点だ。
「奥の村の先に第五中の村がありますので、ここを抑えるのは確定として、その先どこから攻めましょうか?」 ルビレルが地図を指差しながらいう。 奥の村だの第五中の村だのちゃんとした名付けはされてないのかよ。 第五中の村ってのも正式な名前じゃなくて、代官であるオルバック家が便宜上そう呼んでいたってんだから、なんだかなぁ……だよ。 十三ヶ村を先の村六ヶ村、中の村五ヶ村と奥の村、そして僕の生まれ故郷は果ての村って呼んでたってんだから泣けてくる。「僕自身が視察に行きたいんだけどねぇ……」 町を長い間留守にするには留守居役が必要で、その留守居役、つまり僕の代行者が務まる人がいないのがネックなんだよなぁ……。「ルビレル、この町の代官やってくんない?」「ワシには務まりませんよ」 実務能力的には絶対務まるよね。 むしろ僕より務まる気がするんだ。 やっぱり懸念は新参で騎士ってことかなぁ。 諸々反発は予想されるよ、確かに。「けど、ルビレル以上の適任者はいないと思うんだ」 実際、日が浅いにも関わらず町人の受けはいい。 むしろ息子のルビンスより馴染んでいる。 亀の甲より年の功ってやつかもしれない。「いやいや……」「じゃあ、お飾りで誰かを代官に任命するから、そいつの補佐ってことで」「補佐……ですか?」 お!? 口から出まかせ、瓢箪から駒だな。 もっとも、この世界にひょうたんがあるかどうかは知らないけどね。 もう一押しだ。 担ぐのにちょうど良さげな軽い神輿を選べれば、なんとかなりそうだぞ。 パッと思いつくのはサビーとかガーブラ? 政治向きの仕事させてなかったからルビンスを補佐に据えたら、実質的な傀儡だってすぐバレちゃうか。 オギンもザイーダも僕が手足として使いたいからダメだ。 カーゲはジョーの執事だからちょっと立場的にどうかな? あ! いた。 ロット
同時に元傭兵組と戦士団を屯田兵的に街道整備に派遣する。 道幅を拡幅して整地、行き来をより快適にできるようにするためだ。 街道整備には労役として隣村の人手を駆り出す。 租庸調の庸である。 隣村を支配下に置く際に取り決めた徴税法を利用する取り組みだ。 人数を決めて一ヶ月労働奉仕させる賦役を早速利用したわけだ。 隣村の人口は約三十人、女子供も分け隔てなく賦役に就くことで、この秋の年貢を当初の七割徴収から五割五分に減らせる。 しかも飯付き宿付きと至れり尽くせりに見えるんで、実際にはズラカルト家同等の徴税率なのに得した気分になるという仕組み。 ま、実際一月分飯代が浮くんだから、村人にとっては冬の備蓄に余裕が出て生活が楽になると思うんだ。 本当は畑仕事がなくなる冬場に駆り出したいところなんだけど、今年はそうはいかなくて今時期になっている。 労働奉仕させなきゃ年貢に七割取り上げることになっちゃうからね。 さすがにそこまで鬼じゃない。 もちろん、町の住人にも賦役はある。 こっちは村からの復興に駆り出されていた去年までと特に違いはなく、シームレスに移行できた。 推進している貨幣経済が浸透してきたのでお金での徴税や物納も視野に入ってきた。 もっともいくら納めさせればいいかが判断つかないんで、今年は無理かな。 相変わらず流入人口の増加に町の住宅供給が追いつかなくて、新規に流入してきた人たちには集合住宅を建てるまでの間、街道整備の労役に出てもらっている。 腹の中ではどう思っているか判らないけど、表面上は納得して従ってくれていた。 副次的効果で街道整備は計画を上回る進捗状況だ。 しかし、町の規模からいってキャパオーバーなんだよね、すでに。 イラードにはできるだけ早く村に移民できるようにしろと催促しているんだけど、簡単じゃないよねー。 僕はルビレル親子と地図を広げて腕を組む。 正確なものじゃないけどね。 ズラカルト男爵領オグマリー区十
「じゃあ次は概要ね」 と、リリムは言う。「世界の概要は現世の知識があるから割愛ね」 あらま。「あなたは転生の際にDNAってやつに細工されていてね、神様曰く人よりちょっと優秀になってるそうよ」 え? ちょっと?「そこはとても優秀になってんじゃないの? テンプレ的に」「いくら世界に干渉できる環境にある神様だってそんなことホイホイしたら世の中のバランスが狂っちゃうでしょう?」「異世界転生は世界のバランスを崩さないのか?」「崩すわよ。それなりに。そもそも
村に戻った僕は村人の埋葬をする。 人の死には慣れている。 現世の僕が、だけど。 この世界は前世の世界と違って文明水準が高くない。 当然医療水準も高くない。 田舎だからってのはあるかもしれない。 大きな街はもしかしたらすごく発展しているのかもしれない。 魔法のある世界だから、当然治癒魔法もあるはずだ。 でもそれがどれくらいの効果があるかもわからない。 だからこの村はよく人が死んだ。 子供は特によく死んだ。 僕にも姉と妹がいたらしい。 妹の方はかす
僕は十五歳の朝を木の枝の上で迎えた。 この世界の元服、つまり成人の儀式が行われる日だ。 確かに一生忘れられない日にはなったけど……切ない。 あまりにも切ない。 秋とはいえ、昼頃になればそれなりに暖かくなる。 今日は天気もいいので昼頃にはむしろ汗ばむほどの陽気になった。 慎重にあたりの気配を確認しつつ、木から降り集落に戻ると、まだプスプスとくすぶっている焼け跡の中を歩く。 あたり一面、嫌な臭いが立ち込めているのは、村人の焼けた臭いだろう。 昨日から何も食べてないのに込み上げてくる胃液を吐き出し
「逃げたのはガキ一匹か」 と、僕の真下で傷だらけのごつい男が言っている。 こいつが盗賊団の頭目と見た。「へい、多分」「多分だと!?」「へ、へ……」 あたふたした下っ端が頭目にぶん殴られ、仰向けにぶっ倒れる。 気絶してろ! 盛大に気絶してろよ、でなきゃここにいることがバレる。 僕の祈りは天に通じたのか、そいつは白目をむいて動かない。「このさらに奥に行ったかもしれませんぜ」「ならいい」 頭目は、一言吐き捨てて踵







