Compartir

五日ぶりの温かい飯

Autor: 結城慎二
last update Fecha de publicación: 2026-06-03 06:00:03

「で、僕のステータスはどうやったら確認できるの?」

「なにそれ、美味しいの?」

 え?

「うそうそ、そんな便利機能現実世界にあるわけないじゃない」

 だよねー。

「数値が知りたいなら体力測定とかIQ検査でもしてみる?」

「それって実際あてになるの?」

「参考程度には」

 だめじゃん、そんなの。

「まぁまぁ。ホラ、そろそろ準備始めなきゃまた木の上で寝ることになるよ」

 リリムに言われて気がついた。

 お日様がだいぶ西に傾いているらしく、僕の影が僕の二倍以上に伸びていた。

 秋の日は釣瓶落としと言いまして、確かにここでただ喋っているのは時間の無駄だ。

 僕は村に戻って今日の寝床の準備をすることにした。

 焼け跡の村でまずはぶんの室を開く。

 今日の晩飯と、麻袋をゲットするためだ。

 それらを探していたら運よく火打石を見つけた。

 これで頑張れば火を熾せるはずだ。

 用水路に水を汲みに行くのに台所があったあたりを物色して鍋をゲット。

 流石に鉄製で煮炊きをするのに使うものだ、火事の中でもそれなりに原型をとどめている。

 とりあえず今はこれだけあればいい。

 鍋は担いて、他のものはお手製の袋に突っ込んで用水路へ。

 用水路に着くと、無事な建物発見。

 水車小屋だ。

 中を覗くと籾殻がいっぱい。

 こりゃラッキーだ。

 鍋で水をすくって地面に穴を掘って籾殻を入れた上に置く。

 火打石を取り出すと盗賊襲撃の際、唯一持ち出せた便利道具のナイフで火打石を叩く。

 そこはそれ、十五歳。

 悪戦苦闘しながらもなんとか籾殻に火をつけたんだけど、これがまたもくもくと煙がひどい。

 やばい、野盗が近くにいたらどうしよう。

 とか思ったけどありがたいことに襲われることはなく、念の為現場から避難するにあたって「焚き木を集める」と言う大義名分を編み出してひと抱え持って戻ってくると、いい感じにお湯が沸いている。

 そこに持ち出した保存食をホイポイと放り込み、煮えるまでの間を使ってナイフで木のスプーン作り。

 五日ぶりの暖かいメシはそれだけで贅沢ってもんだ。

 塩味も保存食から適度に出ていてお子様クッキング(十五歳になってるからこの世界では一応大人なわけだけど)としてはまずまずだ。

 腹がいっぱいになった後は水車小屋に入って籾殻の中に潜り込んで、こちらも五日ぶりの屋根の下でお休み。

 …………。

 あれ?

 何か忘れているような?

Continúa leyendo este libro gratis
Escanea el código para descargar la App

Último capítulo

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    緊急集会

     肚が決まれば行動は早い。  その日の夜には村人全員を緊急集会に招集して昼の一件を報告する。  村の人口は八十に近い。  キャラバン不在でさえだ。  キャラバンの隊員を含めれば優に百人を超える。  そんな村人が口々にざわめくのだからなかなか収拾がつかない。  ここは一番、声の大きなガーブラに騒ぎを納めてもらおう。「あー、静かに、静かにっ!」 すげーでけー声で突然言われたので、中央広場はしんと静まりかえる。  先生に一喝されてしゅんとなる児童みたいだ。「みんなにも色々意見はあると思うけど、村は当初から自治独立を目指していた。この件については一応全員説明を受けていたと思う」 説明を受けていたからと言って納得していたとは限らない。「王国の北西の僻地に隠れ里的な村があるらしい」 的な噂を頼りに戦火を逃れてきたような人たちが、「すわ、男爵が徴税に来たから武力で追い返すぞ」 なんて言われても「おいおい待ってくれ、俺たちは戦いから逃げてきたんだ。おとなしく税を払ってなにが問題なんだ?」 とか思っても仕方ない。  でも、納税したからと言って安泰なんてありえない。  『ご領主様』の要求なんてエスカレートするのが前提だ。  やがて税額が高騰する。  戦ってのはとにかく金がかかるものだ。  前世日本では米本位制の期間が長くて歴代政府は主に米で税を徴収していた。  教科書では江戸時代の年貢は一般に五公五民と教わった。  実際には中期以降四公六民だったみたいだけど、実に収穫量の半分を徴収されていたことになる。  ところが安土桃山時代、例えば有名な太閤検地後の年貢率は基本「領主が三分の二」という法令が出ていた。  戦国の時代が収束してなお、三分の二も持って行かれていたのだから、戦国期はどれだけ取られていたか判ったもんじゃない。  もちろん、地域によって条件も違っていて、穀倉地帯なら五公五民だったかもしれないけど、土地の痩せたところでは八割持って行かれてい

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    開いた口が塞がらないとはまさにこのこと

     村の税は秋に穀物で納税していた。  収穫量ではなく畑の大きさで収める量が決められていて、例年だと収穫量の四割くらいを納めていたはずだ。  これが不作の年なら収穫量が減るわけで、僕が十二歳の年は総収穫量の六割近くを徴税されて大人たちが青くなってた。  納税額が三割り増しになったら平年どおりの収穫量だったとしても半分以上をもっていかれることになる。  数字でしかものを見ていないだろ。  こっちは生活がかかってんだ。  そんな横暴許されると思ってるんなら、早晩下から追い落とされるんだからな。「しかと申し渡したぞ」 若様はそれだけ言い残してとっとと帰っていく。  お連れのおじさんはじっと僕を見下ろしてこう言った。「これでも他領に比べるとましな方と聞いた。戦をしているところなど……いや、お前に言っても詮ないな」 この人は話が通じそうだ。「あの、お名前は?」「ワシか? ズラカルト男爵様の側近オルバック様に使えるルビレルだ。お世継ぎ様の失礼はワシが謝る。では」 と、頭を下げて後を追う。  苦労してるんだな。  うん、ありゃあ典型的な世間知らずの坊ちゃんだ。  都市からも出たことがないと見た。  この旅が初めてで田舎のあばら家(この村は違うけど)は汚くて入りたくないとか思ってたんだろ?  だからって野宿もできそうにない。  てか、そもそも野宿の準備をしてたように見えないからな。  隣村まで歩きで三日くらいだったろ?  ホルスを飛ばしゃ日暮れまでには着くはずだ。  だから用件だけ済ましてとっとと帰ったんだぜ、きっと。 さて。 僕はリリムを見る。「なに?」「秋までの時間が稼げた」「うそ? あんなやり取りで?」「な? あんなやり取りでさ」「でも、秋までなのね?」「それは仕方ないな。覚悟してたことだ。だけど、デッドラインが決まったことは悪いことばかりじゃない」「そうなの?」

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    紅顔の小太り

    「そこの男、止まれ!」 と、使者の一人が鋭く僕を呼び止める。  肩をすくめてビクリとこわばる。  あ、これは演技じゃない。  なにせこちらは丸腰の農夫、向こうはホルス上で帯剣した男爵の部下だ。  こわごわとゆっくり振り向くと、相手は紅顔のでっぷり肥えた少年と白髪交じりのおじさんだった。「この村のものだな?」 高圧的な態度なのは少年の方。  いやいや、使者なんて仕事についてることを考えれば成人してるか。  一年目の新兵か、いいとこ自分と同年ってとこだろうな。「はぁ……」 と、曖昧に応えとこう。  リリムが僕の横で腹を抱えて笑ってる。  チッ、いい気なもんだよ。「村長を呼べ!」 おやおや、それでいいんですか?  どうやって、中に入れずに済ますか考えてたのに。「あー、それ、僕です」 ここは素直に答えとくべきだろう。「なに!?」 あー……いつものリアクションですね。  いいんですよ、慣れてますから。「この村の唯一の生き残りで、それが縁で村長させてもらってます」「そうか」 と応えたのはおじさん使者の方。  鞍や身につけているものが若い方より質素なのは身分の差だろうか?  だとすれば若様のお目付役ってとこか。  交渉の一切は若様がやるらしい。「なら話が早い。村が復興したと聞いてきた。事実か?」 下手か?  交渉ド下手か!?「……復興ってのがどういうものか知りませんがね、野盗や戦を避けてやってきた人たちが住み着いてるのを復興っていうならそうなんでしょう?」 リリム、気になるから僕の視界に入らないで。  できれば笑い声も抑えてくんないかな?  今後を左右する大事な駆け引きやってんだからさ。「では、今年から税を納めてもらおう」 オフゥ……なんだその説明一切吹っ飛ばした結論のみの伝達は。  

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    早速役に立ってもらう

    「家がルンカー造りだべ?」「あ! ああ!」 この国ではルンカーで家を作れるのは法律で決められた一定額の税を納めた者だけということになっている。  もちろん、最終的には領主と一戦構える心算だけど、それは今じゃない。  今は全力で門前払いをするのが僕の至上命題だ。「お館様」 すっと、オギンが僕のそばに立つ。「あと、八半時間ほどで到着します」 !「オギン」「はい」「今の見張りはガーブラだったよね」「はい」「使者に声が届く距離まで来たら僕を大声で呼んでくれるように頼んでくれ」「かしこまりました」「あ、その時は村長って呼ぶように念を押してね」 ひとつ頭を下げ、村へと戻る。 八半時間の半分もしないうちに、「おや……村長ぁ! 誰かやってきます!」 でけー声だな……。  つーか、どんだけ声届くんだよ。  使者だと判るってことはホルスに乗ってきたってことだろ?  並足で歩かせてるとして、あと八半時間の半分ちょっとはかかるってんだから一カルは先にいるんじゃねーの?  まぁ、いい。  僕は見張りを見上げ、道の向こうを見る演技をする。  そして手ぬぐいで汗をぬぐって農作業をしていた他の村人と畑から出ようとする。(リリム)「なによ?」(使者はホルスに乗ってるよな? 歩かせてるか? 走らせてるか確認してくれないか?)「はいはい」 リリムはすっと飛び上がるとすぐに戻ってくる。「結構な速さで向かってきてるわよ」 おおぅ!  じゃあ、もう少し芝居しとこうか。「みんな! 急いで村の中に戻るんだ!」 なんて大声で叫ぶ。  村人は「突然なんだ?」という困惑を浮かべながら、それでも指示に従ってくれる。  僕は指示を出しつつ殿をつとめるふりをして使者との距

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    衝撃の事実発覚!

     村は急ピッチで発展を遂げる。  秋蒔きのフレイラを刈り取って、春の種蒔きが終わる頃には人口が倍近い七十六人になっていた。  戦火を逃れてきた農民がほとんどだったのは、町ではなく他領の農村でこの村の話を広めた成果でもある。  なぜ、そうしたかといえば、態勢が整う前に男爵の茶茶が入らないようにっていう配慮だったんだけど、こんだけ一気に増えたら嫌でも悪目立ちするよな。  てな訳で、初夏に入る前の天気のいい日、ついにズラカルト男爵の使者がやってきた。「あー、来ちゃったんだね」 と、第一報を受けた僕はため息をつく。  場所は北の開墾地。  見張りからの報告だったんで、到着までには多分まだ一時間はある。「とりあえず、到着したら門の前で待たせておいて」 と、頼んで着替えることにする。  …………。  いや、このままで行こう。「どうして?」 あ、リリムおまっ、また人の心を読んだろ!「あのね、この際だからいっとくけど、私はあなたのために神から遣わされた神の眷属なんだから、本来考えるだけで会話できるんだからね」「え? え!?  今までずっと思考垂れ流しだったの?」「そうよ」 や、やべー。「それって一種のサトラレ状態ってことじゃねーの?」「ね」「…………」「安心して、恥ずかしいこと考え始めたら意図的に思考をブロックしてるから」 僕は、声も出せずに口をパクパクさせるしかない。「ひ、一つ確認してもイイデツカ?」「なによ?」「その能力は、例えば遠く離れてても有効だったりする?」「そもそもこの能力は神への報告のための能力なんだから、当たり前じゃない」 …………。 もはや天を仰ぐしかない。「そろそろ質問に答えてもらってもいい?」「え?」「どうしてその格好のまま会おうとしているか」「あ、ああ……人は見た目が九割って話があ

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    オギンからの報告

     事の顛末的には実力も名声もないから仲爵を頼って命を永らえていたのに、誰かの怪しい口車に乗せられて王を名乗ったことが仲爵の逆鱗に触れたって事のようだ。「ソクタンカ仲爵とすれば、王家の争いから逃れてきたから保護していたのに『進んで争いに参加しようだなんてけしからん』ってとこか?」 と、ルダーが言えば「それもあるだろうけど『オレを争いに巻き込むな』ってのが本音じゃないかね」 と、ジョーが返す。  まぁ、僕もそんなところだと思う。「問題は、武力解決で王族を一人殺しちゃった事なんだよねぇ」「どういう事ですか? お館様」 イラードが理解できなかったようで訊ねてくる。  オギンもルダーもおんなじ表情ってことは判ってないな。「ソクタンカ仲爵はその軍事行為を単なる謀反人討伐だと考えたんだと思うんだ」「実際そうではありませんか?」「まぁ、そうなんだけどね」「そう取らない連中がいるってことか?」 あれ?  ジョーも判ってなかったの?  表情からは読み取れなかったよ。  さすがというべきかな。「『そうは取らない』じゃなくて『そういうやり方があるんだ』っていう気づきを与えちゃったっていうね?」「大義名分ってヤツか」「そ。今までは領地紛争みたいな元から対立していた同士の小競り合いだったものが、『大義名分さえあれば相手を滅ぼしてもいいんじゃね?』っていう話になって、一方的に戦争が仕掛けられていくことになるだろうって話」「それはおおごとですね」「なるほど、そういうことだったのですね」「どうしたオギン?」「いえ、その事件の後各地で一斉に軍事衝突が頻発したようで、一気に内乱状態に陥ったという次第です」「さながら群雄割拠だな」「ジョー様?」「いや、なんでもない」 うん、僕には判るよ。 秋から冬にかけての数ヶ月で国内の軍事衝突は二十以上発生したようだ。  そのほ

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    都市伝説は真実だった

    「じゃあ次は概要ね」 と、リリムは言う。「世界の概要は現世の知識があるから割愛ね」 あらま。「あなたは転生の際にDNAってやつに細工されていてね、神様曰く人よりちょっと優秀になってるそうよ」 え? ちょっと?「そこはとても優秀になってんじゃないの? テンプレ的に」「いくら世界に干渉できる環境にある神様だってそんなことホイホイしたら世の中のバランスが狂っちゃうでしょう?」「異世界転生は世界のバランスを崩さないのか?」「崩すわよ。それなりに。そもそも

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-後篇-

     村に戻った僕は村人の埋葬をする。  人の死には慣れている。  現世の僕が、だけど。  この世界は前世の世界と違って文明水準が高くない。  当然医療水準も高くない。  田舎だからってのはあるかもしれない。  大きな街はもしかしたらすごく発展しているのかもしれない。  魔法のある世界だから、当然治癒魔法もあるはずだ。  でもそれがどれくらいの効果があるかもわからない。  だからこの村はよく人が死んだ。  子供は特によく死んだ。  僕にも姉と妹がいたらしい。  妹の方はかす

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-前篇-

     僕は十五歳の朝を木の枝の上で迎えた。  この世界の元服、つまり成人の儀式が行われる日だ。  確かに一生忘れられない日にはなったけど……切ない。  あまりにも切ない。  秋とはいえ、昼頃になればそれなりに暖かくなる。  今日は天気もいいので昼頃にはむしろ汗ばむほどの陽気になった。  慎重にあたりの気配を確認しつつ、木から降り集落に戻ると、まだプスプスとくすぶっている焼け跡の中を歩く。  あたり一面、嫌な臭いが立ち込めているのは、村人の焼けた臭いだろう。  昨日から何も食べてないのに込み上げてくる胃液を吐き出し

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    泣ぬれるは枝の上

    「逃げたのはガキ一匹か」 と、僕の真下で傷だらけのごつい男が言っている。  こいつが盗賊団の頭目と見た。「へい、多分」「多分だと!?」「へ、へ……」 あたふたした下っ端が頭目にぶん殴られ、仰向けにぶっ倒れる。  気絶してろ!  盛大に気絶してろよ、でなきゃここにいることがバレる。  僕の祈りは天に通じたのか、そいつは白目をむいて動かない。「このさらに奥に行ったかもしれませんぜ」「ならいい」 頭目は、一言吐き捨てて踵

Más capítulos
Explora y lee buenas novelas gratis
Acceso gratuito a una gran cantidad de buenas novelas en la app GoodNovel. Descarga los libros que te gusten y léelos donde y cuando quieras.
Lee libros gratis en la app
ESCANEA EL CÓDIGO PARA LEER EN LA APP
DMCA.com Protection Status