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第3話

Auteur: 年華
雪が目を覚ますと、手足をベッドに縛り付けられていた。部屋は真っ暗で、月の光だけがわずかに差し込んでいた。

「目が覚めたか」

冷たい声が響き、礼が暗がりから出てきた。彼の顔色は恐ろしく険しかった。

雪は抵抗するのも忘れて、ぼんやりと彼が近づいてくるのを見ていた。

「雪、5年ぶりだな」

彼はベッドの端に腰を下ろし、そっと彼女の頬に触れ、そのままゆっくりと指を下へ滑らせた。彼女の体がビクッと震える。次の瞬間、彼は彼女の首を強く掴んだ。

「この5年間、あの時の屈辱を忘れたことは一度もない」

そう言うと、彼は雪の服を引き裂き、白い肌を露わにした。そして、彼女の鎖骨に噛みついた。

雪は唇を噛み締め、声も出さずに、大粒の涙を流し続けた。涙は礼の手に落ちた。

彼はまるで手に火傷をしたかのように手を離し、起き上がって痛々しい噛み跡を見た。思わず、彼女の目元を指でなぞっていた。やがて、その表情は、静かに、けれどどこか切なげに、柔らかくほどけていった。

「雪、あの時、お前には何か事情があったんだろう?俺から離れたくて離れたんじゃないよな?そうだろう?」

雪は胸が締め付けられた。全てを打ち明けようかと思ったが、次の瞬間、正気に戻った。

今ここで真実を話せば、彼はきっと過去の自分を激しく恨み、婚約を破棄するだろう。しかし、あの動画は美羽の手に渡ったままだ。彼女を追い詰めたら何が起こるかわからない。

「別に。ただ、あなたと一緒に苦労を背負いたくなかっただけよ」

雪のあっさりとした言葉が、礼の怒りに完全に火をつけた。

「全てうまくいくって言っただろう!なぜ俺を信じて待てなかったんだ!」

彼は再び取り乱し、雪の首を絞めた。

「だって私はこういう、金に汚い女なのよ!」

唇を歪めて礼を見つめる雪の、一つ一つの言葉が彼の心に突き刺さった。

礼は鋭い目つきで彼女の顎を掴み、激しくキスをした。

唇が重なり合った瞬間、雪は彼の唇に噛みついた。血の味が口の中に広がる。

「雪!あんな店に行ったくせに、まだ清純ぶるのか?金が欲しいんだろう?俺には金が腐るほどある!」

礼はそう言うと、傍らの金庫から札束の束を取り出し、雪に投げつけた。

「今夜、俺を満足させろ。そうしたらこれは全部お前のものだ」

彼は雪を体の下に押さえつけた。冷たい視線には、情欲のかけらもなかった。

「礼、そこまで私を貶す必要があるの?」

雪は目の前の男を見つめると、今まで必死に堪えていた涙が溢れ出した。かつて愛情に満ちていた少年の瞳は、今や憎しみしか感じられない。

「辛いか?屈辱的か?雪、お前が今味わっている苦しみは、俺が味わったものの一万分の一にも満たない」

あの時、彼は土下座してまで彼女に懇願し、大雨の中で一日中彼女を待っていた。なのに、彼女の心は石のように冷たく、彼のプライドはズタズタに踏みにじられた。

雪がいなくなってから、丸一ヶ月、彼は酒とタバコに溺れ、泥酔しては心の痛みを麻痺させようとした。あの時は、ナイフを手に取り、このどうしようもない人生を終わらせようと思ったほどだ。

「お前が俺にしたことなんだからな。どんなに苦しくても、耐えろ」

礼の言葉は、彼女を暗闇の底に突き落とした。まるで心臓をナイフでえぐられるような、耐えがたい痛みが全身に広がった。

男は容赦なく彼女の体の中に入り込んできた。彼女は絶望のなか、そっと目を閉じ、唇を噛みしめる。身体の痛みよりも、心の痛みの方が何倍も苦しかった。でも、この道を選んだのは他でもない、彼女自身だった。

夜が明け、礼の怒りが収まり、解放されると思っていた雪だったが、彼は昨夜の動画を脅しに、彼女を自分の傍に留め置こうとしたのだ。

「礼、あなたはもう婚約しているのに、なぜ私をまだここに留めるの?」

「雪、調子に乗るなよ。ちょうど神楽坂家の家政婦が辞めたところだ。お前のような賤しい女にぴったりじゃないか」

そう言って、彼は背を向けて出て行った。

「待って。あなたの言うことは聞くけど、夜は会いに行かなきゃいけない……」

言葉を遮って、礼は彼女の首を掴み、壁に押し付けた。彼の目は怒りに燃えていた。

「誰に会いに行くんだ?そんなに男に抱かれたいのか!

彼は一晩いくら払っている?俺が倍払ってやる!」

雪は息苦しさに喘ぎ、必死に声を振り絞った。「娘……娘に……」

礼は一瞬動きを止め、手を離した。雪は床にしゃがみ込み、荒い息を繰り返した。部屋の空気は凍り付き、しばらくの沈黙の後、礼の冷めた笑い声が聞こえた。

「雪、お前はな」
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