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子供の虚勢―戸惑い(1)―

مؤلف: 鷹槻れん
last update تاريخ النشر: 2026-01-23 04:02:53

 ねっとりとした大気が身体からだにまとわりつく。

 チュウが旅立ってから二週間余りが経過していた。

 盆も過ぎたのに、暑さは一向に弱まる気配がない。

 こんな夜は扇風機を回したところで焼け石に水だ。ましてや、窓を開けたぐらいで心地よい風なんて期待できるはずもなく。

 扇風機を回すことを早々に諦めると、俺はクーラーのリモコンを手に取った。

「暑……」

 言いながら、スイッチを入れる。

 風呂に入る前にそうしておかなかったことが悔やまれたけれど、今更どうしようもない。

 団扇を片手にくつろげた胸元を扇ぎながら、ふと隣家の幼馴染みのことに思いを馳せる。

(今日も来るんだろうか……)

 幼馴染み――忠成ただなり――の家にはエアコンがない。

 それで、今日のような熱帯夜には当然の顔をして涼みにくるのが常になっていた。

 忠成には何ら他意がないであろうその行動が、俺にとっては無茶苦茶苦痛だなんて思いもよらないはずだ。

「はぁ……」

 気が付くと団扇を動かす手が止まっていた。

 エアコンから吹き付けてくる風が心地よい。

 そんなに広い部屋じゃないので、考え事をしている間に冷えたらしい。

 勉強なんて別にやらなくても出来るけれど、所在無さにとりあえず学習机に向かってみた。

 夏休みに入って二日目で、課題の大半は終えている。

 頭の体操にもならないような簡単な問題の羅列に飽きてしまってからは、ほんの数頁を残して放り出していた。

(それでもアイツにとっちゃ難問だらけなんだろうなぁ)

 眉間に皺を寄せて真剣に問題に取り組む幼馴染みの姿を思い浮かべ、自然口許がほころぶ。

(本当、アイツは何をやっても可愛い)

 無意識にそう思ってから、俺は頭を振ってその考えを追い払った。

(男相手に有り得ねぇだろ!)

 普通、異性に対して抱くであろう感情を、最近何故か忠成に対して感じてしまう自分に俺は戸惑いを覚えていた。

 中学に入ってから、俺はぐんぐん背が伸びた。

 それまでは大差なかった忠成ただなりとの身長差が、ここ1年で15センチ以上開いてしまった。

 それで、今までは対等に正面から俺を見ていた忠成の視線が、自然上を仰ぎ見るような格好になったのだ。

 俺ばかり背が伸びることを不満に思っているらしく、時折挑むような目つきで俺を睨みつけてくる忠成。

 その表情が、はからずも俺の庇護欲ひごよくをくすぐり、困っている。

 忠成に上目遣いで見上げられるたびに、俺は自分の心臓がどうにかなってしまいそうで焦った。

 最初は何でそうなるのか理解出来なかったけれど、俺は馬鹿じゃない。すぐに、その感情が恋心だと気が付いた。

 正直、自分で自分が信じられなかった。

 何で俺が、同性の――しかも幼馴染み――相手にそんな気持ちになるんだ!?

 言っとくが、俺はノーマルだ。

 断じて同性愛者じゃねぇ。

 現に初恋は、小学1年のころ担任だった若い女教師だったし。

 聡明な彼女の雰囲気を思い出すと、今でも綺麗だったなぁ、と思える。

 他の大人たちみたいに俺をやたらと子供扱いしないところが特に好きだった。

 だから、だ。

 まさか同性相手にこんな気持ちになるだなんて、我がことながら青天の霹靂へきれきで。

 本音を言うと自分の気持ちが整理しきれていないというのが正しい。

 この気持ちが気の迷いならそれでいい。早いところ正気に戻ってくれと願うだけだ。

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  • 優等生の秋連くんは幼なじみの忠成くんを落としたい   子供の虚勢―枕になんて(1)―

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  • 優等生の秋連くんは幼なじみの忠成くんを落としたい   子供の虚勢―序―

     燦々と降り注ぐ柔らかな日差しの下、猫と老婆と園児が二人、心地良さそうに日光浴を楽しんでいる――。「ばあちゃん、ばあちゃん」 そう言っては嬉しそうに老婦の顔を見上げながら、他愛のない質問を矢継ぎ早に投げ掛ける男の子。「アレはなに? こっちのは?」  庭に咲き乱れる花を指差す小さな手に、優しい声が応じる。「あれは合歓、こっちは椿」 どの花を指差しても、まるで魔法のように答えてくれる皺まみれの顔を、男の子は尊敬の眼差しで見つめる。「ばあちゃんはすごいや! なんでも

  • 優等生の秋連くんは幼なじみの忠成くんを落としたい   温度差―呼び出し(4)―

    「……その、この間は俺が悪かった。あんなことするつもりじゃなかったんだ。お前が俺を受け入れてくれるまで、絶対に手なんて出すつもりはなかった……」  どういう状況であれ、俺を信じ切ってくれていた忠成を、俺は裏切ったのだ。  心底申し訳ないと思っている。 「……けど」  そこまで言って、忠成には分からない程度に、俺は唇を噛み締めた。  けど、と言って言葉を区切った俺を、忠成がどこか不安げな表情で見つめてくる。 「……お前が彼女だのなんだの言うから焦ったんだ。今、何と

  • 優等生の秋連くんは幼なじみの忠成くんを落としたい   温度差―呼び出し(3)―

    「……帰れ」 俺は忠成を振り返らないままに何とか一言、それだけを告げる。 「で、でも……」 俺の言葉が信じられないという風に、忠成が言葉を連ねる。恋愛感情で迫られるのは勘弁して欲しいけれど、俺に背を向けられるのは怖い。そんな雰囲気がまざまざと感じられて、忠成はずるい、と思った。 「……聞こえなかったのか? 帰れ、と言ったんだ」 忠成に背を向けたまま。怒っているのか悲し

  • 優等生の秋連くんは幼なじみの忠成くんを落としたい   温度差―呼び出し(2)―

    「お前が何をしたか分からない俺だと思うか?」 そればかりか、忠成の手を壁に押し付けるように押さえつけて、その身体をその場に縫いとめた。さらに空いたほうの手を彼の顔の真横について壁際に閉じ込めると、至近距離から幼なじみに詰め寄る。 「……だ、だって前に俺と妹、似てるかな?って聞いたら……秋連、うん……って言ったじゃんっ。……だからっ!」 今まで俺から視線を逸らすように俯いていた忠成が、キッと俺の顔を見上げるようにして睨みつけると、そう言った。

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