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第154話

作者: 歓乃
「智也」柚葉が智也の煙草を奪おうと手を伸ばしたとき、智也が素手で煙草の火をもみ消した。

「どうしてここに来たんだ?」智也は柚葉に問いかける。

柚葉は驚いて彼の手を掴み、火傷をしていないかすぐに確認した。

「健吾さんも梨花さんも、それに胡桃ちゃんだって、みんな智也を心配しているんだよ。もちろん、私も」柚葉は智也の頬を優しく撫でながら囁いた。「だから、もう煙草はやめて。お願い」

二人の視線が絡まり、ゆっくりと目を閉じた柚葉は、顔を近づけていく。

唇が触れ合う寸前、胸の中に焦りが浮かんだ智也は、反射的に顔を背けた。

愛しているのは柚葉で、ずっと彼女を待っていたからこそ、これまでは凛との体の関係すら拒んできた。それに、愛する人が自分から口づけをしようとしてくれているのなんて、嬉しいことのはずなのに……

だが、なぜなんだ?

もしかしたら、今日の夕方、海斗にあの動画を見せられたからかもしれない。

柚葉を愛しているからこそ、彼女を世間の批判に晒してはいけない。

柚葉は美しく才能に溢れ、明るい未来が待っているのだから。

だから、自分のせいで柚葉の未来を潰しては駄目だ。

そうだ。
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