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第41話: この町には、長いんですか

Author: Sunny
last update publish date: 2026-08-10 14:35:45

ジャン・モローは、海辺の広場に立ったまま、エマを見ていた。

風に揺れる金髪も、相手の反応を待ちながら決して視線を外さないところも、八年前とほとんど変わっていない。

エマは、手にしていたチョークへ指を添えた。

驚いた顔をしてはいけない。

知っている人間を見る目を向けてもいけない。

ここにいるのは、朝倉エマ。

港町のカフェで働き、フェスティバルの地域企画を手伝っているだけの女だった。

ジャンの隣にいた事務局の男性が、申し訳なさそうに頭を下げた。

「朝倉さん、すみません。フェスティバルに出資くださる、こちらのモローさんが展示会場をご覧になる予定だったのですが、倉庫街が少し分かりにくくて」

ジャンがエマへ向き直った。

「失礼しました」

フランス語の響きを僅かに残した英語だった。

「こちらの方が、展示会場に詳しいと伺いました」

エマは、英語で静かに答えた。

「事務局の方の方が詳しいと思います」

「彼は、別の担当者を迎えに行かなければならないそうです」

ジャンは隣の男性へ視線を向ける。

男性は困ったように笑った。

「すぐ戻る
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    「ああ」玲は、驚きもしなかった。「結衣さんのことでしたら、交際していません」あまりにも即答だった。女性が少し目を丸くする。「そうなんですか?」「はい。昔からの知人です。それ以上の関係ではありません」きっぱりと。曖昧さを残さない。エマは。なぜか少しだけ胸が軽くなった自分に気づいて。すぐにグラスへ視線を落とした。何を。安心しているのだろう。「じゃあ、今は特定の方はいらっしゃらない?」別の男性が興味深そうに聞く。玲は一度。僅かに考えるように黙った。それから。視線が動いた。真っ直ぐ。エマへ。心臓が。嫌な音を立てる。「お付き合いしている方はいません」そこまでは。普通だった。「ただ」玲の声が。ほんの少し柔らかくなる。「今、好きな方はいます」一瞬。周囲が静かになった。誰かが玲を見て。その視線を追う。一人。また一人。エマへ。視線が集まってくる。逃げたい。そう思った時には。玲が続けていた。「皆さんは、僕がエレナ・カワサキの公式作品を、最後の一枚を除いて保有していることをご存じかと思います」突然出た名前に。エマの呼吸が浅くなる。何人かが頷いた。この場にいる人間なら。知らない方が珍しい。玲がエレナ・カワサキの作品へ異常なほど執着してきたこと。市場へ出れば買い。貸し出しもほとんど行わず。最後の一枚を今も探していること。「僕は、彼女を亡くしてから」玲は静かに続けた。「仕事以外のことに、ほとんど興味を持てなくなりました」周囲から笑いは消えていた。玲自身が。それを口にすることの重さを。皆が感じ取ったのだろう。「仕事はします。人にも会います。食事にも行きますし、誘われれば必要な場所には顔を出します」穏やかな声。「でも」玲の視線が。またエマへ戻る。今度は。逸らさない。「その人が何を考えているのか知りたいとか」エマの指先に力が入る。「何が好きなのか。何を見ているのか。今日どうしているのか」玲は。少しだけ笑った。「そういうことを、自分から知りたいと思うことはありませんでした」胸が。苦しくなる。知っている。それが。どれほど玲らしくないことなのか。エレナだった自分は。誰より知っている。「そんなエレナ以来に初めてです」玲が言った。「仕事以外の時間を

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