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第12話

青ノ序
「どうしたの?」

明里は綾の視線を追って、ものすごい人だかりを見た。

「なんでもない」

綾は首を振って、視線を戻した。

最近どういうわけか、幻覚を見ることがよくある。

「湊が二宮さんたちを連れて試合を見に来てたよ。でも、表彰式の前に帰っちゃった。あなたが選手だって知らなかったみたい」

「湊もずいぶん変わったよね。昔は私が観劇に誘っても、付き合ってくれなかったのに」

綾は助手席に座った。久しぶりに運動したせいか、試合に出ただけで手首がひどくだるい。

「今夜はうちに泊まっていきなよ」明里が誘った。

「私はいいや。フェンシングの道具だけ、持って帰ってくれる?」

綾は、湊が和子を言い訳にするのを聞きたくなかった。でも、どうせ同じベッドで寝るわけじゃないし、大きな問題はないだろう。

明里は綾を玄関まで送った。「綾、おやすみ!」

明里は心の底から綾を気の毒に思った。人生はままならないものだ。

「おやすみ。気をつけて帰ってね」

綾は明里の車が見えなくなるまで見送ってから家に入った。こんないつも味方でいてくれる親友がいるなんて、自分は幸せ者だ。

時には、好きという気持ちよりも、友情がもたらす力の方が心強いものだ。

湊は綾を見るなり、開口一番こう言った。「綾、明里には今後、言葉に気をつけるよう言っておけ」

綾は聞かなくても分かった。試合を見に来た時に、明里が何か本当のことを言って凪の機嫌を損ねたのだろう。

「明里が何を言おうと、彼女の自由よ」

湊は苛立ちを隠さなかった。「お前が凪をいじめるのはもう見たくない。お前が凪をいじめるほど、俺の彼女への負い目は増していくんだ」

湊の眉間には疲れの色が滲んでいた。素直だった綾が、なぜ急に変わってしまったのか理解できなかった。

いじめる?

なるほど。湊から見れば、ずっとこっちが凪をいじめている、ということなのね。

綾はソファに腰掛け、華奢な手首を揉んだ。

「離婚して凪と結婚すればいいじゃない。そうすれば、もう負い目を感じることもなくなるわ」

綾の口調は柔らかく、恨み言ひとつない。むしろ、二人の仲を取り持つ仲人のようだった。

その言葉を聞いて、湊の目は氷のように冷たくなり、その奥に冷たい光を宿した。

「たかが、凪たちがこの家に住み始めたというだけで、どうしても離婚すると言うのか?」

綾は少しだ
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