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第348話

Author: 青ノ序
東都に着くと、青木家から電話があった。健吾に綾を連れて夕食に来いと言うのだ。

その報せを聞いた綾は、緊張で落ち着きを失っていた。

「私には無理よ。ご挨拶なんて初めてだし、やっぱり行くのやめようかな?」

「いずれ避けては通れない道だ。それに、お前は綺麗で優秀な科学者じゃないか?

お前に会えるなんて、うちの祖父と父も光栄に思うはずだ」

健吾は優しくなだめ、綾を高級ブティックへ連れて行き、服を選ばせた。

「言われてみればそうね!財力は違っても、中身なら負けてないわ」

自分を鼓舞して自信を取り戻した綾だった。

「大人しく見られたくないから」と、綾は少しクールな黒を基調とした服を選んだ。

「ほら、すぐそうやって強気になる」

健吾は笑って綾を冷やかし、代金をスマートに支払った。

夜になり、二人は青木家の本邸へ向かった。

綾が丁寧に応対すると、相手は健吾の父親と祖父、それにビアンカだけだったので少し肩の荷が下りた。

「こんにちは、ビアンカさん」

「うちへようこそ」

ビアンカは、冬馬から教わった通りの丁寧な言葉遣いで返した。

「さあ座ってくれ。家族しかいないから堅苦しい
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