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第4話

Author: 三日月
誠は黙り込んだ。

スピーカー越しに、彼が息を殺している音だけが聞こえる。

隣で玲奈が小声で何かを言い、その後、誠はふっと息を吸い込んだ。

「父さん、調書の作成がもう少しで終わるんだ。終わり次第、すぐに向かうから。

ここまで待ったんだ。今さら多少遅れたところで、どうってことないさ」

私はカウントダウンの赤い数字を、ただ死に物狂いで見つめていた。

残り3分だ。

義父は怒りのあまりスマホを地面に叩きつけ、画面が粉々にひび割れた。

母は特殊急襲部隊に強行突破の準備を指示しながら、ショックで倒れそうな義母を支えていた。

しかし、強行突破の結末は「爆弾の即時起爆」だということくらい、誰もが分かっている。

私は深く息を吸い込み、通信機のボタンを押した。

「三上、少し話をしましょう。

私は誠の妻よ。あなたが知りたいこと、もしかしたら私なら答えられるかもしれない」

1秒、2秒……

通信機の緑色のランプが点灯した。

「1階のロビーだ。お前一人で入ってこい。

もし上の階に来ようとしたら、容赦なく起爆してやるからな!」

時間が惜しかった。私は母から渡されたイヤホンを耳に装着し、そのままビルの中へと飛び込んだ。

だが、1階のロビーには誰もいなかった。

私は螺旋階段の下に立ち、上に向かって叫ぶしかなかった。

「三上!あなたは誠から、一体何を聞き出したいの!」

「去年の9月末、川から引き揚げられた女性の遺体だ。その司法解剖の結果を知りたいんだ」

私が30秒ほど待っていると、イヤホンから母の声が聞こえてきた。

「調べがついたわ。死因は自殺。解剖の署名は誠よ」

私がそれを復唱し終えた瞬間、通信機の向こうで何かが激しく叩きつけられる音がした。

三上が狂ったように怒鳴り出した。

「あり得ない!俺の妻が自殺なんかするはずがない!間違いなくあの野郎が偽造したんだ!

九条誠をここに連れてこい!今すぐにだ!」

私はその場に釘付けになった。

去年の9月末、誠は確かに半月ほど、ほとんど帰宅しないことがあった。

彼は仕事が忙しいと言っていたが、後になって彼の同僚からたまたまこんな話を聞いたのだ。

新人の法医が仕事に不慣れで、誠がその後始末に追われていたのだと。

その新人法医こそが、玲奈だった。

私は再び誠に電話をかけた。

呼び出し音が2回鳴っただけで、彼は応答した。

「沙耶、今からそっちに向かう。玲奈に靴を履かせたら、すぐに出るから」

イヤホンから、母の切羽詰まった声が聞こえた。

「沙耶、あと1分よ!

りくの目がうつろで、顔が真っ赤になってる。

何かを飲まされたのか、それとも熱を出しているのか分からないわ!」

私は目を閉じ、震える声で言った。

「もう……間に合わないわ」

「間に合うって!あと10分で着くって三上に伝えろ!」

「誠、残り50秒よ」

私が言い終わるや否や、通信機のランプが点灯し、りくの弱々しい声が響いた。

「パパ……僕、すごく怖いよ。いつになったら助けに来てくれるの?

今夜は一緒に、宇宙船のレゴを作ってくれるって約束したのに……」

電話の向こうで一瞬の間があり、誠の呼吸が乱れたのが分かった。

「りく、怖がらないでいい。パパが今すぐ……」

「ああっ、靴紐が切れちゃった!」

受話器の向こうから、ガサガサという衣擦れの音が聞こえてくる。

「沙耶、落ち着け。お義母さんが寄こした連中がずっと急かしてくるせいで、玲奈の靴紐が切れてしまったんだ。

彼女、足を挫きそうになったから、別の靴に履き替えないと……」

「誠、残り20秒よ」

私は彼の言い訳を最後まで聞くことなく、そのまま電話を切った。

顔を上げ、最後に屋上の方向を見上げると、私は歯を食いしばって階段を駆け上がり始めた。

イヤホンの向こうで、母が私の名前を叫んでいる。

でも、立ち止まるわけにはいかなかった。

息子を助けられないのなら、せめて一緒に死んでやりたい。

同じ頃、誠の車がようやく住宅街を抜けていた。

助手席の玲奈は、慌ててメイクを直している最中だった。

前方の空気が一瞬にして歪み、巨大なオレンジ色の爆炎が膨れ上がった。

直後、耳をつんざくような轟音が響き渡り、地面がまるで地震のように激しく揺れた。

誠は急ブレーキを踏み、顔を上げた。視線のその先に、空を焦がすような炎と黒煙が立ち上っていた。

玲奈は悲鳴を上げ、「怖い」と言いながら彼の袖を引っ張った。

しかし、誠の耳にはもう何の音も届いていなかった。

彼は口を半開きにしたまま、ゆっくりと視線を落とした。

爆発が起きた場所は、ナビが目的地として示していたその場所だった。

次の瞬間、彼は狂ったようにドアを開け、車から飛び出した。

「りく!」

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