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第4話

Author: 甘茶ニーニー
男女の体力差は歴然としており、私はビリだった。

試合が終わった後、咲は勝ち負けなど気にせず、ただ痛ましそうに私の額の汗を拭ってくれた。

家へ帰る道すがら、彼女はやはり我慢しきれずに尋ねてきた。

「パパは?今日は一緒に幼稚園に行ってくれるって約束したのに」

「たぶん、忘れちゃったのよ」

咲はそれ以上何も言わなかったが、その瞳にはさらなる失望の色が浮かんでいた。

暗くなりかけた空を見上げ、私は思わず足早になる。

家に帰り着くと、渡はソファに座りつつ、ひどく不機嫌な顔。

「どうしてメッセージを返さないんだ?

親父が咲に会いたがってるから、ずっと家で待ってたんだぞ」

私が口を開くより早く、渡は咲を抱き上げて車へと向かった。

久しぶりに父親と会った咲は、怯えたような視線を彼に向けていた。

ましてや、今の渡はまるで鬼のような形相だ。

いくらパパに会いたかった咲でも、恐ろしさのあまり泣き出してしまった。

私が慌てて彼女をあやしているうちに、車は一ノ瀬本家へと到着した。

渡の父は咲をちらりと見ただけで、すぐに私に返してきた。

だが、玲奈に対しては、あれこれと細やかに気遣っている。

食事の時間も近づいた頃、玲奈は私を階段の踊り場まで呼び出した。

彼女が何か企んでいるのではないかと警戒し、私は場所を廊下へと変えさせる。

「昨夜の電話で、渡の言いたいことは分かったわよね?

あのお荷物を連れて、毎日私の目の前をうろつくのはやめてほしいの。

そうだね。私のやり方なんて、よく知ってるでしょ。

子供は脆いものよ。ちょっとしたはずみで、すぐ死んじゃうんだから」

彼女は私を忌まわしそうに一瞥し、脅すような口調で言った。

もう昔のように、彼女の言いなりになるメイドではないと、言い返してやりたかった。

西園寺家の権力がいかに強大でも、全てを思い通りにできるわけではない。

しかし、今の私にはもっと大きな弱点があった。

咲は、この世でたった一人の私の家族なのだ。

渡は手放せてよくても、咲を失うわけにはいかない。

「離れるわ。二度とあなたたちの前には現れないようにする」

「相変わらず物分かりが良くて助かるわ」と玲奈は笑い、ヒールを鳴らして去っていった。

気持ちを落ち着かせ、再びリビングへ顔を出すと、玲奈が咲に話しかけているのが見えた。

玲奈はにこにこと笑いながら、咲の頬をつまんでいる。

「咲ちゃんはお姉ちゃんになるよ。弟が生まれたら、しっかり守ってあげてね」

いかにも優しくて良妻賢母といった様子だ。

しかし咲は、突然両手を広げて彼女を押し、はっきりと拒絶を示した。

玲奈はそのまま床に倒れ込み、お腹を押さえながら痛みを訴え始める。

私は咄嗟に、咲を連れてこの場から遠ざけようとした。

だが、渡の動きの方が速かった。

彼は一足飛びに前を行くと、咲の頬を思い切り平手打ちしたのだ。

パチンと音が響く同時に、私の心も粉々に砕け散った。

目を真っ赤にして咲をかばう。

「私の娘を叩くんじゃない!」

渡の顔には冷たい怒りが張り付き、陰惨な目を私に向けている。

「よくそんな口利けたもんだな。

玲奈が突き飛ばされたのを見てなかったとでも思うのか」

玲奈は渡に寄りかかり、まだ目立たない下腹部を押さえながらも、わざとらしい様子で彼の服の裾を引く。

「渡、もういいの。

咲ちゃんはまだ子供だし、何も分かっていないだけよ。

ただ、誰かに悪いことを吹き込まれたんじゃないかって心配で……」

一見思いやりのある言葉だが、暗に私という母親を責め立てているのだ。

「結夏、これがお前の育てた子供か」

「あの子もあなたの娘でしょ!

咲がどんな子か、自分で分かっているんじゃないの?」

咲を身ごもった時から、あの子が小さな天使だと私は知っていた。
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