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劣等感まみれの夫、あろうことか仇敵を愛す
劣等感まみれの夫、あろうことか仇敵を愛す
Author: 甘茶ニーニー

第1話

Author: 甘茶ニーニー
結婚七年目、一ノ瀬渡(いちのせ わたる)は隠し子として一ノ瀬家に受け入れられた。

一ノ瀬家の跡を継ぐための唯一の条件は、彼が亡き兄の妻である義姉・西園寺玲奈(さいおんじ れいな)との間に長男をもうけることだった。

「玲奈から受けた屈辱は、一生忘れない」と、渡はいつも私に言っていた。

「十分に痛めつけたら、あいつを一ノ瀬家から追い出してやる」

だがその後、彼の帰宅はますます遅くなり、私と子供への態度も日に日に冷ややかなものになっていった。

そして半年後、渡は私に隠れて、玲奈との新婚の知らせを世間に公表したのだ。

娘・咲(さき)はその写真を見て、不思議そうに私に尋ねた。

「パパはどうして、玲奈おばさんの腰に手を回してるの?」

私・浅倉結夏(あさくら ゆな)は何も知らない娘を、胸が張り裂けるような思いで抱きしめた。

「パパはね、お外に新しい家ができたの。

だから、ママと咲はもう行かなくちゃいけないんだよ」

咲は私の言葉の意味が分からなかったのか、ぼんやりとこちらを見上げている。

「パパも一緒に行くの?」

私は苦笑いしながら首を振る。

「パパにはそこで好きな人ができたの。だから、もう戻ってこないわ」

咲は唇を舐め、腑に落ちない様子で問いかけた。

「もう一回だけ、パパにチャンスをあげないの?

明日、幼稚園に送ってもらうって約束したんだもん」

「分かったわ。じゃあ、パパにもう一度だけチャンスをあげましょう」

咲を寝かしつけた後、私は再びあのニュースを見る。

写真に、渡と玲奈が情愛に満ちた雰囲気で見つめ合っていた。

その瞬間、一生添い遂げると誓った男が、ついに心変わりしたのだと悟った。

私はチケットの購入ページを開き、江ノ市へ戻る直近の便を確認する。

それは七日後。ちょうど渡と玲奈が結婚する当日でもある。

迷うことなく二人分のチケットを購入して、私は洗面所へと向かう。

そこから出てくると、帰宅したばかりの渡と鉢合わせた。

彼の体に濃厚な薔薇の香りがついてる。私は思わず眉をひそめた。

半年以上経っても、彼が玲奈の元から帰ってきた時のこの匂いには慣れなかった。

渡は私を抱きしめようとした手がぴたりと止まり、代わりに私の頬をつねる。

「また怒ってるのか?」

一歩後ずさりし、男の相変わらずに優しげな瞳を見つめる。

「玲奈のところへ行くのは、もうやめてくれない?

他の女とあなたを共有したくないの。彼女にあなたの子供を宿すのもほしくない」

この半年間、「ほしくない」と何度も伝えてきた。

けれど、彼は一向に聞き入れてくれなかった。

渡は怒る風でもなく、ただ困ったようにため息をついた。

「結夏、わがままを言わないでくれ。

玲奈に一ノ瀬家の長男を産ませなければ、俺が正式に家督を継げないことは分かっているんだろう」

「じゃ離婚しようよ」

涙をこらえ、心に秘めていた言葉を口にする。

渡は呆然とし、不可解そうに問い返した。

「跡取りをもうけることは結夏も承諾していたはずだぞ。

今更何を騒いでいるんだ?」

渡の言う通りだ。

彼が子供をもうけること自体は、私が許したことだった。

ただ、半年前の約束では、体外受精で玲奈を妊娠させる手はずだったのに。

初めの頃、渡はルールをしっかり守り、かつて自分を辱めた玲奈に対して冷淡に接していたのだ。

だが、時が経つにつれ、彼が玲奈の元へ通う回数はどんどん増えていった。

月に一度だったのが、週に二度になり、今ではほとんど毎日だ。

私はどれほどの夜を待ち続け、何度孤独な眠りについたか、到底数えきれなくなった。

黙り込む私を見て、渡はまた、やりきれないようにため息を吐き出した。

「一ノ瀬家はずっと俺が結夏と結婚したことに不満だったって、分かっているだろう。

今、ようやく本家に認められるチャンスが巡ってきたんだぞ。

俺にどうしろって言うんだ?」
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