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Home / BL / 十五年目の同窓会～ただ、君の隣に帰るために / 遥の捨て台詞

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遥の捨て台詞

Author: 中岡　始
last update Last Updated: 2025-08-20 17:32:19

沈黙が続いた。

河川敷の風が、草をざわつかせる音だけが耳に残る。

遥は唯史を睨みつけたまま、唇を噛んでいた。

その目の奥には、怒りと悔しさが入り混じっている。

涙をこらえているのか、まぶたがわずかに震えていた。

「あんたのこと、昔から嫌いやったわ」

遥が、低く言った。

声は震えていたが、その目は真っ直ぐだった。

「男のくせに、女より綺麗な顔して」

唇の端が引きつり、目が潤む。

それでも、遥は笑おうとした。

けれど、その笑みは明らかに失敗していた。

悔しさと嫉妬が、全部顔に出てしまっている。

「ほんまムカつくねん」

その言葉は、唾を吐くように放たれた。

遥は、足元の小石を蹴飛ばした。

足音を立てて、草を踏みしめながら後ろを向く。

ヒールのかかとが、乾いた音を立てた。

唯史は、その背中を黙って見ていた。

佑樹の隣で立ったまま、何も言わなかった。

遥は振り返らなかった。

肩を揺らしながら、河川敷の出口に向かって歩いていった。

その背中が小さくなるまで、唯史はただ黙って見送った。

佑樹は、隣でゆっくりと息を吐いた。

唯史は、その横顔を横目で見た。

佑樹の唇がかすかに震えているのを見たとき、胸の奥がぎゅっとなった。

「……ごめんな」

佑樹が小さく呟いた。

けれど、唯史は首を横に振った。

「謝ることやない」

風が、二人の間を通り抜けた。

遥の足音が遠ざかると、河川敷はまた静けさを取り戻した。

唯史は、自分の手のひらを見た。

少しだけ汗ばんでいる。

けれど、その手は確かに佑樹の手を握るためにあると、今は思えた。

夜の空は、ほんの少しだけ星を見せ始めていた。

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