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第4話

作者: 瑞穂
「これ……オークションに出品されていた『シャイニング・スター』じゃないのか?」

拓海は連日のようにオークションに参加しているため、その名には聞き覚えがあった。

彼は私の手元に顔を寄せると、指輪を凝視しながら強引に私の手を掴み上げた。

しばらくして、彼は顔を上げ、詰問するように声を荒らげた。

「どこで手に入れた?これ、数十億円の指輪だぞ」

私は一瞬呆然とした。この指輪が、まさかこれほどまでに高価なものだったとは。

これは橘隼人(たちばな はやと)と婚約した際、彼から贈られたものだった。

私が言葉を失っていると、拓海は鼻で笑い、小馬鹿にするように言った。

「まさか、盗んだんじゃないだろうな?

お前如き、全臓器を売り払ったところで、この指輪の価値の万分の一にも届かないだろうな」

言い返そうとしたその時、スマホが鳴った。

私は周囲の連中をかき分け、静かな場所へ移動して電話に出た。

「ええ、今すぐ向かうわ。待っていて」

電話を切り、振り返ると、そこには拓海が立っていた。

指にタバコを挟み、その瞳には何を考えているのか測りかねる、底の知れない色が浮かんでいた。

「へぇ、今の電話……例の『夫』からか?」

私は静かに頷くと、一片の迷いもない真剣な眼差しで彼を見据えて言った。

「そうよ。入籍の予約時間になったから。

興味があるなら、あなたたちも一緒に来れば?」

拓海が口を開くより早く、ある人が囃し立てた。

「いいぜ!島を買い取って、シャイニング・スターを競り落としたっていう、その億万長者様を拝ませてもらおうじゃないか!

柚希、無理して見栄を張って、後で恥をかくんじゃないぞ!」

私が背を向けて歩き出すと、拓海が不意に私の腕を掴んだ。

「白状するなら今のうちだ。ここを出る前なら、まだ引き返すチャンスをやるぞ。

役所まで行って、自分の惨めな姿を晒すことになるのはお前なんだからな」

私は眉をひそめ、不思議そうに彼を見返した。

「拓海、どうして私が嘘をついていると決めつけるの?

私は本当に、これから結婚するの」

そう言い捨てて、彼の反応を待つこともなく、私は野次馬と化した彼の取り巻きたちを引き連れて外へと向かった。

役所へ向かう道すがら、取り巻きたちは四方八方から私の顔や姿にスマホを向け、執拗に動画を回し始めた。

「おい見ろよ!拓海に必死にしがみついてたあのストーカー女が結婚だってよ!笑えるだろ、誰が信じるかってんだ!」

「皆さん注目!拓海の金魚の糞だったこの女が、なんと億万長者の夫がいるなんて」

動画がSNSに投稿されると、瞬く間に拡散され、私はコミュニティ全体の笑いものになった。

誰もが、私が役所の前で嘘を暴かれ、無様に泣き崩れる姿を期待していた。

だが、役所の前に着いても、隼人の姿は見当たらなかった。

隼人の姿がないと見るや、彼らはここぞとばかりに、鬼の首を取ったような顔で牙を剥いてきた。

「おい、自慢の旦那様はどこだよ?姿も見えないじゃないか!」

「お前の夫ってのは、そこらへんをうろついてる野良犬のことか?」

彼らは私を嘲笑いながら、通りすがりの人々にも声をかけ始めた。

「おい、みんな注目だ!この女、自分は億万長者と結婚するんだと言い張って、わざわざ俺たちをここまで連れてきたんだぜ!なのに見ての通り、相手の影も形もありゃしねえ!

最近の奴は、息を吐くように嘘をつきやがる。よくもまあ、こんな見え透いたホラを吹けたもんだな!

ここで賭けようぜ!もし十五分以内にその『大富豪様』が現れたら、俺がこの場にいる全員に二十万円ずつ配ってやるよ!

だがもし来なかったら、この嘘つき女が一人につき二百万円払うってのはどうだ」

その煽りに釣られるように、通りすがりの人々が次々と足を止めた。

あっという間に幾重もの人垣ができ、私はその中心で完全に囲い込まれた。あちこちから好奇の視線が突き刺さり、容赦のない指差しとひそひそ話が広がる。

誰もが、私の嘘が暴かれ、無様な姿を晒す瞬間を今か今かと待ち構えている。

膨れ上がる群衆を前に、私は思わず後ずさりした。

「何だよ、まさか今更ビビって逃げ出すつもりか?」

颯真が、逃がすまいと私をねめつけてくる。

言い返そうと口を開きかけたその瞬間、不意に誰かが私の肩を優しく抱き寄せた。

続いて、丹念に編み上げられた糸の花束が私の目の前に差し出された。

「待たせてごめん、柚希。僕のお嫁さんをこんなに待たせるなんて、夫失格だね」
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