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第4話

Author: ハルエ
私は修司をじっと見つめた。

その言葉が彼の口から出たものだなんて、どうしても信じられなかった。

あの年、彼に連れ出されてからしばらく、私はずっと現実感のないまま生きていた。

目の前で両親が炎に吞まれていったことが、私にとってどれほど越えられない傷になったのか、彼はよく知っていたはずだ。

あの頃、彼は私を無理に慰めようとはしなかった。

ただ毎日、黙って霊園まで付き添ってくれた。

当時、世間では両親を「自業自得」だとする噂がひどく広まっていた。

父が会社の金を不正に流用したとか、母が違法な実験に関わっていたとか。

私は何度も壊れそうになった。

その言葉は両親を侮辱するだけではなく、私の中にかろうじて残っていた信じる力まで、根元から揺さぶったからだ。

両親のような人たちまで「自業自得」だと言われるのなら、この世に信じられるものなんてあるのだろうか。

そのとき、修司は私の隣に立って言ってくれた。

「お父さんに会ったことがある。立派な経営者だった。お母さんも、尊敬すべき研究者だった」

私は、その言葉を信じた。

それなのに今、彼は私の前に立ち、父を貶める嘘を私自身の口から言わせようとしている。

父の無能がすべての不幸を招いたのだと、私に認めさせようとしている。

伊織に逃げ道を作るために。

ようやく我に返ったとき、もう失望すら残っていなかった。

「それをしたら、私は何をもらえるの?」

私が応じることを、修司は少しも意外に思っていなかった。

彼にとって私は、いつだって求めれば応じる女だったのだ。

「埋め合わせとして」

彼は条件を出した。

「別れると言ったことは、聞かなかったことにしてやる。お前は今までどおり、俺の彼女でいればいい」

少し間を置いて、それでは足りないと思ったのか、彼はさらに付け加えた。

「婚約者でもいい」

彼は私を見ていた。

私の反応を待っているようだった。

「婚約者」という肩書きを、昔の私はあれほど望んでいたから。

私は小さく笑った。

自分でも驚くほど、冷たい笑いだった。

「断ったら?」

修司の目がかすかに動いた。

けれど声は変わらなかった。脅すつもりさえないように、ただ淡々と言った。

「そのときは、偽物の藤原夏希を用意するだけだ。俺が本物だと言えば、それが本物になる」

私は目を閉じた。

暗闇の中で、いくつもの場面が走馬灯のように過ぎていく。

十九歳の私。夜の店で、どれだけ殴られても頭を下げなかった私。

救世主のように現れて、私を連れ出してくれた彼。

その後の十年、霊園に付き添ってくれたときの、黙って立つ彼の背中。

「修司」

私は目を開けた。

「この告発文に書かれていることは、私が自分で確かめる。

佐伯家が本当にあんなことをしたのなら、私はかばわない。佐伯家と関係がないのなら、誰かを陥れることもしない。

だから、あなたの頼みは」

私は彼を見て、一語ずつはっきりと言った。

「応じられない」

家の前で、勝ち誇ったような顔をした伊織を見ても、私は驚かなかった。

五年前、彼女がどれほど演技がうまい人間か、嫌というほど思い知らされていたからだ。

か弱いふりをして修司を騙すことなど、彼女にとっては造作もないのだろう。

あの頃、彼女は帰国して間もなかった。

東区では、佐伯家のお嬢様が戻ってきた、高城家の跡取りとよりを戻すのではないかと、誰もが噂していた。

そのとき修司の恋人だった私のことなど、誰も気に留めなかった。

それでも私は、不安に思っていなかった。

彼と過ごしてきた年月なら、五年前に式の前から逃げ出した女にだって負けないと、本気で信じていた。

高城家のパーティーまでは。

彼女は私の手を取り、イヤリングが緩んだみたいだから見てほしいと言った。

私が身をかがめた、その瞬間、彼女は螺旋階段から転げ落ちた。

それ以来、彼女は二度とバレエを踊ることができなくなった。

そして目を覚ました彼女のその一言で、私は何も言えなくなった。

「藤原さん、どうして私を突き落としたんですか」

周囲の責めるような視線に、私は押しつぶされそうになった。

最後の頼みの綱にすがるように、修司の袖をつかんだ。

けれど彼は言った。

「伊織に謝れ」

そして今、彼女は言った。

「夏希、取引しましょう。説明動画を撮ってくれたら、1億6000万円出すわ。どう?」

取引、という言葉さえ、彼女の口から出ると、当然のような施しのように聞こえた。

私は顔を上げ、彼女を見た。

「五年前、身に覚えのない罪で謝らせようと、玄関先で三日間、ボディガードに押さえつけられても、私は謝らなかった。

それなのに五年経った今、たった1億6000万円で、私の両親の名誉が金で買えると本気で思っているの?」

すれ違った瞬間、彼女の声が聞こえた。

「後悔しないことね」

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