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第612話

Author: 幸月
「いい?鈴木家も三浦家も、突き詰めれば『商』の家。でも寒川家は……『政』の世界よ。その間には、目には見えないけれど確かに存在する、越えがたい溝があるの」

「私が翔真と付き合えば、外からは、鈴木家が寒川家に高望みした、と見られる。うちのおやじ、今は好き勝手にやらせてくれてるけど、いざ家同士の利益の結びつきや今後の発展が絡んでくれば話は別よ。そうなったら、私個人の意志なんて関係なくなる」

そこで、いつも能天気に笑っている円香の顔に、かすかな苦さと、どうにもならないという諦めが滲んだ。

「それに……私は鈴木家の娘なの。ずっと鈴木家に養われ、守られてきた。いざというとき、鈴木家のために何かしなきゃいけない場面が来たら……そのとき、自分の気持ちだけを優先して逃げ出すなんて、私にはできない」

大きく息を吸って、その息と一緒に胸のつかえを吐き出すように。次の瞬間にはもう、いつものあっけらかんとした顔に戻っていた。杏奈に向かって、パッと明るい笑顔を向ける――ただ、どこかその裏に、胸がちくりと痛むような何かが見えた。

「だからね!どう考えても今が一番いいの!気ままで、お金もあって、誰にも縛られ
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