Se connecter「『大蠍の尾』?」
朝食のBLTサンドを食べ終わり、指に残ったソースを舐めながらメルランスが怪訝そうな顔をした。 「ええ、次の獲物です」 南野はモップを片手に、ページを開いた『レアアイテム図鑑』をカウンターの上に置く。 「なになに……『3メートルを超える巨大な蠍の尾。その尾には象をも一撃で昏倒させる毒が宿っており、しばしば暗殺のための毒薬として使用される』……なるほどね」 「私も知ってます、強力な魔法薬の材料としても使われます」 隣で市場で買ってきたらしいリンゴをかじりながら、キーシャが便乗する。 うーん、とうなるメルランスの顔の険しさを見て取り、南野は不思議そうな顔をした。 「なにか問題でもあるんですか?」 すると、メルランスは結い上げた金の髪を掻きながら、 「多分、この毒がないとレアアイテムとは認められないんだろうね……この毒、大蠍が死ぬと活性を失うんだ。ってことは、生きた大蠍を仕留めてすぐに尾を切り離さないといけないってこと」 そう言って、メルランスはエールのジョッキをぐっと傾けた。 それを聞いた南野の顔色が青ざめる。 「さ、3メートルの大蠍を、ですか……?」 「そ。まあ、ある程度経験を積んだ冒険者ならそんなに難しい獲物じゃないけど」 「じゃあ、私が魔法でお手伝いします!」 「ダメ。あんたの場合は必要な尾まで爆砕させちゃうでしょ」 「ううう……!」 図星を突かれたキーシャは悔しそうにリンゴをがじがじと噛みしめている。 「熟練の冒険者……だったら、メルランスさんがいれば大丈夫じゃないですか」 南野が言うと、メルランスはジョッキを干してから深いため息をついた。 「……あたし、虫って苦手なの」 「……へ?」 いきなり出てきた意外な言葉に、思わず間の抜けた声がこぼれてくる。 メルランスは言い訳をするようにまくし立てた。 「だってなんなの!? あのうじゃうじゃした脚とか、妙につやつやした外骨格とか、なに考えてるかわかんない複眼とか! そりゃあ、ダンジョンとかで遭遇したらきちんと倒すけど、あんまり積極的に戦いたい相手じゃないの!」 メルランスにも苦手なものがあるのか……となんとなく感慨深く感じた南野。 とはいえ、相手はまだ年端もいかない女の子だ。虫くらい苦手な気持ちもわかる。今までずっと頼り切りだったが、彼女だって得手不得手くらいあるのだ。 「それは……といっても、キーシャさんに任せたら確実に尾まで爆散させるでしょうし、俺は俺でまさか3メートルの大蠍を仕留める腕もないし……」 結局は、頼るしかないのだ。己の無力さがいやになる。 とはいえ、虫が苦手なメルランスがこの話に乗ってくれるかどうかだが…… 祈るような心地で見つめていると、メルランスは瞑目しつつうなったあとで、 「……大蠍の身は料理にも使われる。カニよりも芳醇な味わいで、市場に出回ることも少ない……ま、市場に売ればお小遣い程度の稼ぎにはなるでしょ」 「それじゃあ……!」 言外の承諾に、南野の顔色が明るくなった。 「やってやるよ。あんまり乗り気はしないけど」 「ありがとうございます!」 勢いよく頭を下げた南野に、メルランスは思いっきり苦い顔をした。 「その代わり、あたし近接戦闘はしないよ? あんなのに触れたくないし」 「ってことは魔法で?」 「そうなるね」 「じゃあ私が!」 「あんたは黙ってなさい」 「はい……」 しゅんとしたキーシャが引き下がる。メルランスは億劫そうに席を立ち、 「そうと決まれば行くよ。掃除ももう終わったんでしょ?」 「ええ。行きましょうか」 モップを片付けてから、三人は『レアアイテム図鑑』を囲んでその上に手を置いた。目をつむる。 次に目を開けたときには、三人は砂漠のど真ん中に立っていた。頬には乾いた熱風が吹きつけ、足元の砂を巻き上げている。遠くは砂煙で見えない。 「う、わ……!」 突如現れた壮観に南野が声を上げると、メルランスは腕で砂風をよけながら苦い顔をした。 「すっごい太陽光線……暑いし。どうせここに転送されるってわかってたんだから、砂漠対策でマントでも持ってくればよかった……」 「わー! すごい! 砂漠って始めて来ました! 本当に砂ばっかり!」 キーシャは初めて見る砂漠にはしゃいで、その辺をうろうろしては砂に足を取られて転んでいる。 「俺も鳥取の砂丘は行ったことありますけど、こんなガチの砂漠は初めてです……」 「とっとり?……まあいいや。ともかく、『レアアイテム図鑑』でここに送られてきたってことは、近くに大蠍がいるはずだよ。奴らは日中砂の下にもぐってることが多い。獲物が来たら突然襲い掛かってくるから、気を付けてよね」 「わかりました」 そう答えると、南野はまだ見ぬ大蠍の威容を想像して、ひとり身震いするのだった。「『大蠍の尾』?」 朝食のBLTサンドを食べ終わり、指に残ったソースを舐めながらメルランスが怪訝そうな顔をした。「ええ、次の獲物です」 南野はモップを片手に、ページを開いた『レアアイテム図鑑』をカウンターの上に置く。「なになに……『3メートルを超える巨大な蠍の尾。その尾には象をも一撃で昏倒させる毒が宿っており、しばしば暗殺のための毒薬として使用される』……なるほどね」「私も知ってます、強力な魔法薬の材料としても使われます」 隣で市場で買ってきたらしいリンゴをかじりながら、キーシャが便乗する。 うーん、とうなるメルランスの顔の険しさを見て取り、南野は不思議そうな顔をした。「なにか問題でもあるんですか?」 すると、メルランスは結い上げた金の髪を掻きながら、「多分、この毒がないとレアアイテムとは認められないんだろうね……この毒、大蠍が死ぬと活性を失うんだ。ってことは、生きた大蠍を仕留めてすぐに尾を切り離さないといけないってこと」 そう言って、メルランスはエールのジョッキをぐっと傾けた。 それを聞いた南野の顔色が青ざめる。「さ、3メートルの大蠍を、ですか……?」「そ。まあ、ある程度経験を積んだ冒険者ならそんなに難しい獲物じゃないけど」「じゃあ、私が魔法でお手伝いします!」「ダメ。あんたの場合は必要な尾まで爆砕させちゃうでしょ」「ううう……!」 図星を突かれたキーシャは悔しそうにリンゴをがじがじと噛みしめている。「熟練の冒険者……だったら、メルランスさんがいれば大丈夫じゃないですか」 南野が言うと、メルランスはジョッキを干してから深いため息をついた。「……あたし、虫って苦手なの」「……へ?」 いきなり出てきた意外な言葉に、思わず間の抜けた声がこぼれてくる。 メルランスは言い訳をするようにまくし立てた。「だってなんなの!? あのうじゃうじゃした脚とか、妙につやつやした外骨格とか、なに考えてるかわかんない複眼とか! そりゃあ、ダンジョンとかで遭遇したらきちんと倒すけど、あんまり積極的に戦いたい相手じゃないの!」 メルランスにも苦手なものがあるのか……となんとなく感慨深く感じた南野。 とはいえ、相手はまだ年端もいかない女の子だ。虫くらい苦手な気持ちもわかる。今までずっと頼り切りだったが、彼女だって得手不得手くらいあるのだ。「
メイドに取り次いでもらって、南野たちは早々に以前と同じ屋敷の応接間へと通された。あるじは首を長くしていた様子で、「おお、待っていたよ。この街で一番まずいものはできたかね?」「ええ、ここに」 身を乗り出すあるじに、南野は皿に乗ったキーシャ作のカレー(?)を差し出した。「ああ、ついに、ついに……!」 感涙しそうなあるじは、スプーンを片手にカレー(?)を口にする。もごもごとかみ砕いて、そして。「…………がふbふぁgfdん」 味帝王と同じく、奇声を上げてばたりとソファの上に倒れ込んでしまった。「旦那様!? 旦那様ー!!」 メイドたちが慌てふためき、屋敷は一気に騒がしくなる。 もしかしたらとんでもないことをしでかしてしまったのかもしれない……と南野が罪悪感を覚えているうちにも、あるじは寝室へと運び込まれていった。 小一時間ほどしてから、あるじはようやく目を覚ました。目を覚ました瞬間にすごい勢いで水差しから水をがぶがぶと飲み、ふう、と一息つく。「…………すばらしくまずかった…………」「そ、それはなによりで」 まだ放心した状態のあるじがつぶやくと、南野はぎこちない笑みを浮かべた。 あるじは、うむうむと満足げにうなずきながら、「あれほどまでにまずいものがこの世にあるとは……いやはや、期待以上だった。南野君、よくやってくれたね」 『よくもやってくれたな』と言われてもよさそうな場面なのに、なぜかお礼を言われた。世の中にはいろいろなひとがいるものだ。「それでは、例の『オーロラスパイス』は……」「ああ、約束通り、あれは君たちに譲ろう。私にはもう必要のないものだ。これからは美味も不美味も味わっていこうと思う」「ありがとうございます!」 一礼する南野の元に、メイドが小瓶を持ってきた。褐色の粉が入ったスパイスポットだ。それを大事そうに抱えると、南野はもう一度だけあるじに一礼する。 屋敷をあとにした三人は、『レアアイテム図鑑』を使ってもとの酒場に戻ってきた。 時刻はもう夕暮れになっていて、酒場は冒険者たちでにぎわい始めている。「ああー、どうなることかと思った。よくあんな策思いついたね」 ほっとしているメルランスに向かって、南野は至極真面目な顔で返答する。「いえ、以前会社のレクリエーション活動で提案して即却下された案でして……」「れく……?…
『まず最初は! ロメイユさんの作ったカレーからいただきましょう!』 景気の悪い顔をしたさすらいのコックのロメイユさんは、一歩前に出て審査員席に皿を配った。銀のふたを開けると、そこには……「ほう、これは……」「い、一応カレーの形はしていますわね」 色も形もカレーの体裁は保っている。審査員たちは一安心したようにほっと溜息を漏らした。『それでは、実食たーいむ!!』 司会の掛け声でスプーンを口に運ぶ審査員たち。口にした瞬間、眉根をひそめる。「これは……野菜くず?」「下水で煮込んだのか?」「この舌に絡みつくような甘さは……?」「くさい、とにかくくさい」 散々な言われようだった。ロメイユさんは『またか……』とばかりにがっくりと肩を落としている。 そんな中、味帝王だけがぱくぱくとカレーを食べている。会場中の驚嘆の視線が集まった。『さ、さすがは味帝王! ちょっとやそっとのまずさではびくともしません!』 カレーを完食した味帝王は、ふう、と息をついてまた腕を組んで瞑目した。やはり大物の貫禄だ。『ロメイユさん、くさい野菜くずという名のカレーを作りました! 一応はカレーです! これでは味帝王のこころはつかめません!』 ロメイユさんはコック帽を握りしめて涙ながらに退場していった。『続いては主婦のミレッタさん! 今度はどんなカレーが飛び出してくるのかー!?』 審査員たちの隣に並んだミレッタさんは、笑顔で皿を供していく。もうここまで届くほどのむせかえるような悪臭が胸やけを誘った。「みなさん、私の特製カレー、召し上がってくださいな」 にっこり微笑んで銀のふたを開けると、そこには……『こっ、これはぁぁぁぁ!?』 司会が吃驚の声を上げる。 ……それはもはや、カレーではなかった。 紫色の液体から緑色の泡がこぽこぽと立ち上り、皿からは触手のようなものがはみ出ている。ライスはなにで染まっているのか真っ赤になっており、時折どこからか『ぎぎいいいいい』と悲鳴じみた声が聞こえてくるような気がした。「うっ……!」「なんてこと……!」 これからこれを食べる審査員たちは今すぐにでも逃げ出したい気分だろう。しかし、引き受けた以上、そして群衆たちがそれを期待している以上、逃げるわけにはいかない。 すえたようなすっぱい悪臭に鼻を覆いながらも、審査員たちは果敢にスプーン
交渉が成立して部屋を出ると、屋敷内はばたばたとあわただしく動いていた。 外に出ると、もうすでに『本日14時、まずいもんコンテスト開催!!』とのビラがあちこちに張られている。「よっぽどまずいものに飢えてたんですね……」「あたしにはちょっとわかんないな。オカネモチの考えることって」 例によって、メルランスはオカネモチ相手には手厳しい。呆れたようなため息をついてやれやれと肩をすくめる。 対してキーシャは怪訝そうにして、「けど、おいしいものならともかく、まずいもので誇らしげに大会に出場するひとっているんですかね?」「誇らしげかどうかはわかりませんが、あのあるじのことです、それなりの賞金を懸けるでしょう」 南野の回答に、キーシャは、ぽんと手を打った。「なるほど、それに釣られて選手が集まるんですね!」「そうだ、キーシャ、あんたも出てみれば?」「ええ!? 私ですか!?」 いきなり水を向けられて、キーシャは裏返った声を上げた。「この際だから賞金もいただいちゃおう。大丈夫、あんたならできるって! 前の『スライムゼリー』の出来栄え、なかなかのものだったじゃん。ね?」 視線で発言を求められ、南野は深々とうなずいた。「……あれは、思い出したくないくらいの素晴らしい……いや、なんというか、素晴らしい出来栄えでしたね……」 暗に『信じられないくらいの激マズだった』という感想を述べられ、キーシャが涙目になる。「うう、これでも魔法薬学の成績はいい方なのに……!」「薬学と料理は違いますよ」「けどけど! これって優勝しちゃったら、私の料理はまずい!ってことになるんでしょ!? それって乙女的にすっごくフクザツなんですけど……」「細かいことは気にしない! まずい料理を作れるって一種の特技じゃん! ってことで、早速エントリーしに行こう!」「うううううう……!」 メルランスは会場となる公園へと、不服そうな顔をするキーシャを引きずっていった。 ……そして迎えた午後二時。 会場にはそれなりの観客が集まっていた。ほとんどが物珍しさの野次馬だろう。『さーあ、やってまいりました、『まずいものコンテスト』! この街で一番まずい料理を作れるのは誰だ!? 栄えある優勝者には金貨10枚が贈られます! みんなー! まずいものが食いたいか!?』『…………』 やたらテンション
「げbぶしゃああ!!」「ぼぶrrっら!!」「おbgぶぅぅぅ!!」 抜けるような青空の会場に、審査員たちの嘔吐音がこだまする。 あらかじめ用意されていたバケツに胃の内容物をぶちまける審査員たちに、観客たちは、ごくり、と生唾を飲んで青ざめた。『こ、これは……!』 実況者すら息をのみ、言葉も出てこない。「…………すごいな」 ぽつり、南野がつぶやく。壇上にいるキーシャは涙目になっていた。 なぜこんなことになったかというと……「『オーロラスパイス』?」 朝からカウンターでリブステーキとエールを飲んでいたメルランスが首をかしげる。 南野はそれをうらやましそうに横目で見ながら、視線を『レアアイテム図鑑』に戻した。「『どんなにまずい食べ物でもこれを振りかけると途端に至上の美味に変わる』……らしいです」「なんだか、料理人の立場がなくなる一品ですね!」 今日もキーシャは身もふたもないことを元気よく口にする。「そうですね。けど、希少なものですから料理人の仕事はなくならないと思います」「だったらよかったです!」「あー、それはいいんだけど、そんな便利なもの、所有者がやすやすと手放すとは思わないなあ」 リブステーキの骨をぽいっと壺の中に投げ捨て、メルランスがエールを飲みながらぼやく。「そこはまた、あんたの交渉術次第ってことになるね」「うう、自信はないんですがなんとかやってみます……」 泣き言じみたことを口にする南野の背中を、ばーん!とメルランスが叩いた。「なに言ってんの! さあ、善は急げだよ、さっさと片付けよう!」「私、その『レアアイテム図鑑』の転移魔法も気になってるんですよね……!」「それはまた今度。さ、行こう!」「は、はい!」 そうだ、ここでへこたれていても仕方がない。 南野たちは『レアアイテム図鑑』のページに手を置いて目を閉じた。 ……最初に目に入ってきたのは、街のざわめきだった。 どうやら高級住宅街らしく、あちこちに豪奢な一軒家が立ち並んでいる。 三人がいるのは、ひときわ豪華な大豪邸の前だった。なんだかデジャブだ。「ここですか……」「まあ、そんな『おいしい』もの、オカネモチが持ってるに決まってるよね」 ほえー、と屋敷を見上げるキーシャに、メルランスが肩をすくめる。「一体いくらふっかけられることやら……」「不吉なこ
朝日が昇るころ屋敷にたどり着き、メイドに取次ぎを要求する。出てきた主人は寝起きなのか、パジャマにガウン姿だった。「約束通り、山賊たちに話を付けてきました」 南野が代表して報告すると、主人の目が丸くなる。「……本当かね?」「ええ。これでふもとの別荘地は安全です」 南野がにっこりと断言すると、主人はふーむ、とうなってからうなずいた。「わかった。では『嘆きのミセリコルデ』は、約束通り君たちに譲ろう」 商談成功。書斎に引き返した主人は、鞘に収まった銀の短刀を持って戻ってきた。「こんなもの、なにに使うのかは知らないが……私が持っていても仕方がない。どうか大事にしてくれたまえ」「ありがとうございます」 短刀を受け取った南野の手には、ずしりとした重みがあった。ひとを傷つける刃物の重みだ。 が、このミセリコルデは違う。 屋敷を出たところでメルランスが『嘆きのミセリコルデ』を奪い取って鞘から抜いた。「な、なんのつもりですか!?」 いきなり抜剣された側はたまったものではない。うろたえる南野に、メルランスは意地悪そうに笑って見せた。「ふっふー、毎回恒例の実験だよ」「だから言ったでしょう! レアものは新品未開封が至高だって!」「あの主人の手にあった以上、新品未開封ではないでしょ!」 よく研ぎ澄まされた刃は朝日を浴びてぎらりと光っている。これがひとを傷つけないというのはあまり信用できない。「まあまあ、死ななそうなところ刺してあげるから、万が一のことがあっても大丈夫だって」「へ?」「やぁっ!!」 そのままメルランスは南野の腹にミセリコルデの切っ先を突き立てた。「いづっ!?」 やられた!と時代劇の斬られ役ばりに倒れようとしたところで……「……あれ? 刺さってない……?」 衝撃はあったものの、『嘆きのミセリコルデ』は一ミリたりとも南野のからだを傷つけてはいなかった。相変わらず刃は研ぎ澄まされた光を放っており、触れたものは傷つけそうなものなのに。「不思議ですね……まだちょっと痛いけど」「そりゃあ、『緑の魔女』のレアアイテムだもん」 当然のように言うメルランスにミセリコルデを返してもらって、改めて矯めつ眇めつ眺める南野。 不思議なものだなあ、と感心していると、ふとキーシャがつぶやいた。「……刃はあっても、ひとを傷つけない……」 ずっと