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第4話

Author: カラカラ
昼休みが終わり、弁当箱を手に廊下を歩いていると、何人もの生徒がこちらを見ながらひそひそ話していた。

俺は足早に通り過ぎた。そんな視線は気にならない。

人生をやり直せるのなら、まずは前の人生で犯した過ちを償いたい。他人の目など気にしている場合ではなかった。

先日の告白を皆の前で断ったせいで、校庭へ出ても好奇の目を向けられた。

「あれが星野?別に大した男にも見えないのに、よく雨宮さんを振れたよな。何様なんだよ」

「雨宮さんは学年首席だぞ。星野みたいなやつを好きになるわけがない。きっと、うまいこと言ってだましたんだ」

「わざと焦らしているだけじゃない?内心では喜んでるくせに。感じ悪い」

もっと心をえぐる言葉をいくらでも聞いてきた俺には、そんな噂を相手にする気などなかった。

立ち去ろうとしたとき、背後から未央の怒った声が飛んできた。

「もうやめて!朔はそんな人じゃない。これ以上ひどいことを言うなら、先生に報告するから!」

未央は生徒会長だ。その言葉には、生徒たちを黙らせるだけの重みがあった。

集まっていた生徒は、気まずそうに少しずつ散っていった。広い校庭に、俺と未央だけが残される。

未央がこちらを見つめていたが、俺は表情を変えずに歩き出した。

助けてもらったつもりもなければ、感謝する気もない。

前の人生で、俺が働いて稼いだ金を学費として渡すたび、未央は見下すような顔をした。金で愛情をつなぎ止めようとする汚い人間だと、面と向かって罵られたことさえある。

だが大学へ通うにも、大学院で研究を続けるにも金はかかる。

未央は金に執着しない清廉な人間のつもりでいて、生活を支えた俺だけを卑しい人間として責めた。

未央の中で、俺はその程度の男だったのだ。

いちばん深い傷をつけるのは、たいてい、いちばん愛した人だ。

頭では納得できることでも、やっぱり悲しくなることはある。

一度深く傷つけられたら、もう許すことはない。時間がすべてを消してくれるわけじゃない。

その傷跡は、死ぬまでずっと、俺の心に残り続ける。

だから今さら未央に優しくされても、嫌悪感が増すだけだった。

彼女を無視して通り過ぎようとすると、腕を強くつかまれた。泣きそうな声が耳に届く。

「朔、本当に……もう一度だけでも、チャンスをくれないの?」

未央の声は震えていた。目はひどく赤く腫れ、唇をかみ締めた顔には絶望がにじんでいる。

まるで、俺が未央を裏切ったかのようだった。

うんざりして腕を振りほどこうとしたが、未央はかえって力を込めた。指を食い込ませるように俺の袖を握り、涙のたまった目で訴えた。

「自分があなたにとって大切な人だなんて、思い上がっていない。でも、もう一度だけ私を見てくれない?」

その言葉と同時に、涙が頬を伝った。

俺は苛立ち、校庭の隅を指さした。

「泣くなら、あっちで泣け。こんなところで騒ぐな」

未央は素直にうなずき、俺について校庭の端まで来た。

俺はできるだけ距離を取ろうとした。それでも未央は、袖から手を離さない。

「黒川さんとは、どういう関係なの?」

頬をふくらませ、涙で潤んだ目を向ける未央は、まるで俺が浮気でもしたかのようだった。

弁当箱を持つ手に、思わず力が入る。それを見た未央は、さらに声を荒らげた。

「朔、二人は付き合っているの?」

「何を言ってるんだ?」

突然の言いがかりに眉をひそめると、未央はわずかに安堵したようだった。

「じゃあ、どうして毎日お弁当を持っていくの?休み時間になるたび、黒川さんのところへ行ってるじゃない」

鼻をすすりながら訴える姿は、ひどく頼りなく見えた。

そこで初めて、未央が俺と紬の関係を誤解しているのだと気づいた。

焦りきった未央の顔を見ていると、前の人生でいつも高みから俺を見下ろしていた姿が思い出され、笑いがこみ上げた。

もし俺と紬が付き合っていると知ったら、未央はどんな顔をするのだろう。

「黒川は優しくて、きれいで、それに勉強もできる……」

わざと甘い声で言うと、未央は不安に満ちた目で俺を見つめた。腕をつかむ手に力がこもり、全身が小さく震えている。

「黒川には勉強を教えてもらっている。それが何か問題か?」

俺は最後まで嘘をつけず、皮肉な笑みだけを浮かべた。

本当は、付き合っていると言って未央の反応を見たかった。

だが紬は、奨学金と学校の支援がなければ通学を続けられないほど生活が苦しい。天才肌の未央とは違い、努力を積み重ねて学年2位まで上がった生徒だ。

俺が軽率な嘘をつき、未央が何か騒ぎを起こせば、親切にしてくれた紬まで巻き込んでしまう。

俺自身は何を言われても構わない。だからといって、恩のある人を傷つけるわけにはいかなかった。

未央は大きく息を吐き、あからさまにほっとした顔を見せた。

そして俺をまっすぐ見つめ、二人にしか聞こえない声で言った。

「前にあなたは、人を好きだという気持ちは、どうすれば証明できるのかと私に聞いたよね。あのときは、どう答えればいいかわからなかった。考える時間もくれないまま、あなたは私を置いて逝ってしまったから。

でも……お金なら、なくなってもまた稼げる。あなたを失ったら、私はどうやって生きていけばいいの?」

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