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朝食のテーブル、何も起きなかった顔で

Auteur: 中岡 始
last update Dernière mise à jour: 2025-07-04 16:22:41

朝の光は、まるで昨夜の気配を上塗りするかのように明るかった。窓から差し込む陽射しが白いテーブルクロスを眩しく照らし、波の音が遠くに淡く響いていた。キッチンからはパンを焼く香ばしい匂いが漂い、瑞希の軽やかな鼻歌が断続的に聞こえてくる。

志乃はエプロンの紐を結び直しながら、トマトのヘタをナイフで切り落とした。彼女の横で、瑞希が手際よくスクランブルエッグをかき混ぜている。

「こうやって一緒に朝食つくるの、なんか楽しいね」

「ほんと。大学のときみたい。誰かの部屋で、前夜の酒をひきずったままの朝」

「二日酔いの塩味スープとか、よく作ったよね」

ふたりの笑い声がキッチンに広がり、そのままダイニングへ流れていく。

ほどなくして、寝室から塩屋が出てきた。Tシャツに麻のパンツというラフな格好で、髪は少し湿ったまま。すれ違いざま、志乃に「おはようございます」と静かに挨拶をして、グラスに水を注いだ。目元に笑みをたたえてはいたが、その余白に、どこか見慣れない影があるように思えた。

須磨も続いて現れた。寝癖のついたままの髪に無造作な服装。彼は軽く伸びをして、塩屋の背中を一瞬だけ見ると、すぐに視線をテーブルへ落とした。

「コーヒーある?」

「あるよ、淹れたて。ブラックでいい?」

志乃がポットを傾けながら声をかける。須磨は頷いて、椅子を引いた。

四人はテーブルに並んで座り、ゆっくりと朝食を始めた。焼きたてのパン、野菜と卵、果物のヨーグルト。バカンスらしい、丁寧で明るい食卓だった。だが、その空気の中に、昨夜にはなかった何かが潜んでいた。

塩屋はいつも通りの口調で話すが、言葉と言葉のあいだに、微妙な“間”があった。説明のつかない沈黙ではなく、計算された遅れ。意識的に選びすぎた言葉が、時折、話の流れから浮いているようだった。

「昨日の焚き火、風がちょうどよくて気持ちよかったですね」

「うん。瑞希が用意してくれたランタン、正解だった。あの光、柔らかくて」

「たしかに。…ああいうの、ひとりじゃなかなか選ばないから、ありがたいです」

須磨はそのやりとりに相槌を打ちながら、塩屋の言葉の終わりに敏感になっていた。必要以上に視線を向けることはしなかったが、言葉の抑揚や、食器を置く手の力の入り方に、異常がないかを無意識に計っていた。

志乃がふと、須磨に顔を向ける。

「昨日、よく眠れた?」

ナイフをパンに当てながらの何気ない問いかけだった。だが、塩屋の手が、ヨーグルトのスプーンを持ったまま、微かに止まった。

「うん。いい夢見たよ」

須磨はあえて淡々と答えた。視線はパンの端を見つめたまま。声に感情は乗せないようにしていた。いつもの朝と同じ調子を保つために、少しだけ意識を研ぎ澄ませていた。

その瞬間、塩屋がほんのわずかに顔を背けた。口元は笑っていたが、目元の表情が、かすかに揺れた。その動きに、気づいたのは須磨だけだった。

「じゃあ、その夢の話、あとで聞かせてね」

志乃がそう言って笑ったとき、須磨は少しだけ肩の力を抜いた。誰も、気づいていない。そう思った。だが、その安心は同時に、背中をひやりと濡らす恐れにもつながっていた。

食卓の会話はその後も続いた。旅行の帰り道の予定、海岸にもう一度だけ寄っていくかどうか、次にみんなで集まるとしたらどこがいいか。そんな話題の中で、塩屋も須磨も、以前と変わらぬ友人同士の顔をして言葉を交わしていた。

けれど、ふたりの間には、誰にも触れられない沈黙が横たわっていた。それはあまりにも薄く、あまりにも慎重に置かれた“幕”だった。触れなければ気づかないが、たしかに存在していた。

テーブルの上に並んだ皿が、陽に照らされて淡く光る。パンの焦げ目、野菜の瑞々しさ、コーヒーの湯気。すべてが穏やかで、美しく、何ひとつ問題のない朝だった。

けれど、その朝の光の下で、ふたりだけが知る秘密が、確実にその輪郭を持ちはじめていた。沈黙は語らないが、沈黙の中にしかない“重さ”を、ふたりの男たちは、それぞれ胸の奥で理解していた。

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