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last update publish date: 2025-12-23 06:42:44

「……美しいな」

 思わず、感嘆の声が漏れた。達筆すぎて読めないようなくずし字ではない。誰にでも読める、けれど品格と力強さを兼ね備えた文字。

 紙面から、書き手の熱量と誠実さが立ち上ってくるようだ。

「これなら、億の小切手より重いかもしれん」

 隼人は墨が乾くのを待って丁寧に手紙を折り、封筒に入れた。

 それを内ポケットにしまう。小切手が入っていた場所よりも、心臓に近い場所へ。

 ほとんど無意識だったが、そうするべきだと思ったのだ。

「行くぞ、小夜子」

 隼人はジャケットをひるがえした。

「もう一度、特攻だ」

 武器は金ではない。妻が書いた一枚の手紙のみ。2人は再び、あの頑固な扉を開くために歩き出した。

 午後4時。鎌倉の山間に、冷たい夜の気配が忍び寄っていた。大河原邸の重厚な門の前で、インターホンのスピーカーから、家政婦の困惑した声が響く

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