~夏休みの終わりと新学期~
夏休みが終わりを迎え、9月の初旬、星見小学校に再び活気が戻ってきた。蝉の声が遠のき、朝の涼しい風が校庭の桜の木をそよがせていた。 通称「星見キッズ」は、夏休みに星見一族の不正を暴いた後、少しの休息を楽しんだ。しかし、シュウの心にはまだ引っかかるものがあった。 星見計画の古い日記に記された 「星見の真の目的は未来への希望を託すこと」 という言葉だ。 その意味を解明する手がかりが、どこかに残っているはずだと感じていた。 新学期初日の朝、校門で待ち合わせた5人は、ランドセルを背負いながら談笑していた。 カナエが元気よく手を振って言った。 「シュウ、お盆に海に行ったんだけど、めっちゃ楽しかったよ! でも、また事件が気になって眠れなかったんだから」 「そうなんだ。僕も夏休み中、星見計画のことを考えてた。まだ謎が残ってる気がするんだ」 シュウはメガネをクイッと直し、ノートを手に持った。 「夏の財宝事件でバタバタしてたけど、次は何が待ってるかな?」 ケンタがサッカーボールを足で軽く蹴りながら笑った。 「ねえ、夏休みの冒険、町中で有名になったよね。みんな、星見キッズのこと褒めてたよ」 リナがスケッチブックを手に持って微笑んだ。 タクミがタブレットを操作しながら言った。 「ネットでも話題になってる。星見一族の不正が明るみに出たから、町の開発計画が変わったみたいだよ」 教室に入ると、黒板には新しい担任、田中先生の名前が書かれていた。 田中先生は穏やかな笑顔の女性で、夏休み中の活躍を褒めてくれた。 「みなさん、夏休みに町を救ったなんてすごいね。星見キッズ、頼もしいよ」 シュウは少し照れくさそうに頭を下げた。 「ありがとうございます。でも、まだ星見計画の全部は分かってないんです。もっと調べたいんです」 田中先生は目を細めて言った。 「そうか。なら、校長室に古い資料があるかもしれない。許可を取るから、興味があれば見てみてね」 ~校長室への訪問~ 放課後、シュウたちは田中先生の許可を得て校長室に向かった。 校長室は古い木の扉が特徴で、窓からは校庭が見えた。 校長の山本先生は白髪の厳格な男性で、机の上には古い書類が積まれていた。 「星見キッズか。夏休みの活躍は聞いたよ。星見計画の資料か…。確かに、古い校長日誌がある。だが、重要なものだから慎重に扱え」 山本先生が書棚から分厚い本を取り出した。 日誌は革表紙で、ページは黄ばんでいた。シュウが慎重に開くと、1940年代から始まる記録が並んでいた。 リナがスケッチブックで表紙を写しながら言った。 「これ、すごく古いね。星見計画のことが書いてあるかもしれない」 シュウがページをめくると、 「1945年9月、星見計画の最終目標は平和教育の基盤を築くこと」と記されていた。 カナエが目を丸くして言った。 「平和教育? 財宝や不正とは違う目的みたいだね」 「うん、でも詳細が書かれてない。『基盤の鍵は地下に隠された』ってあるだけだ」シュウがノートに書き込んだ。 タクミがタブレットで校舎の設計図を調べた。 「地下…。夏に見つけた地下室とは別の場所かもしれない。旧体育館の隣に小さな倉庫があるけど、そこが怪しいよ」 「じゃあ、明日探してみよう!」ケンタが元気よく提案した。 ~謎の訪問者~ 翌日、放課後、シュウたちは旧体育館の隣にある小さな倉庫に向かった。 倉庫は錆びた鉄扉が特徴で、草が生い茂っていた。 タクミが錠をハックしようとした時、背後から足音が聞こえた。 振り返ると、見知らぬ男が立っていた。 黒いスーツを着た中年の男で、冷たい目つきをしていた。 「お前たち、星見計画を嗅ぎ回ってるな。やめなさい。それ以上進むと危険だ」 「あなた、誰ですか? 星見一族の関係者?」シュウが冷静に尋ねた。 男は一瞬黙った後、笑いものだと言わんばかりに言った。 「私の名は関係ない。だが、星見計画の秘密は一族だけで守るべきものだ。日誌を元に戻せ」 「それは無理です。真実を知る権利があります!」カナエがきっぱりと言った。 男はポケットからナイフを取り出し、威嚇するように構えた。 「なら、力で止めさせてもらう」 「逃げよう!」リナが叫び、5人は倉庫の裏に隠れた。 男がナイフを振り回しながら追いかけてきたが、茂みに足を取られて転んだ隙に、シュウたちは校舎の方へ走った。 「シュウ、あの男、誰だったんだろう? 怖かったよ…」ケンタが息を切らしながら言った。 「分からないけど、星見一族の残党かもしれない。日誌を守るために動いてるんだ」シュウが考え込んだ。 ~夜の決意~ その夜、シュウは家でノートを広げ、事件を整理した。 窓の外からは虫の声が聞こえ、夏の終わりを感じさせた。 タクミから電話がかかってきた。 「シュウ、今日の男、監視カメラに映ってた。顔は隠れてたけど、動きから身長や体型が分かる。データベースで調べるよ」 「ありがとう、タクミ。明日、また倉庫に行くべきか迷ってる。危険だけど…」シュウがため息をついた。 「危険でも、真実を知りたいよね。僕たちで解決しよう」タクミの声に力強さが込められていた。 「うん、みんなで相談して決めよう。明日、校庭で集合だ」シュウは電話を切り、ノートに「星見の平和教育とは何か?」と書き込んだ。 倉庫の謎と日誌の秘密が、シュウたちの新たな挑戦を予感させていた。 星見計画の真実が、地下に隠された鍵と共に明らかになる日は近いかもしれない。 (Ep:11 完)~緊迫する夕暮れ~10月下旬の夕方、星見小学校の文化祭が終わろうとしていた。5年1組の教室で片付けを終えた星見キッズは、楽しい一日を振り返りながらホッと一息ついていた。しかし、シュウのカバンから見つかった「校内に爆弾を設置した。午後5時に爆発する。星見キッズ、探してみな。――名無しの挑戦者」と書かれた犯行文が、状況を一変させた。時計はすでに4時47分を指しており、残り時間はわずか13分しかなかった。校内放送で緊急事態が伝えられ、生徒と保護者たちはホールに集められた。警察の佐藤刑事が到着し、シュウたちに状況を確認した。「君たちが見つけた手紙だな。爆発まで時間が少ない。危険だが、協力してほしい。爆発物処理班を呼ぶが、校内を調べてくれ」「分かりました。星見キッズで手がかりを探します!」シュウが決意を込めて答えた。「班に分かれなさい。危険を感じたらすぐに戻るんだ」佐藤刑事が厳しく指示した。星見キッズは迅速に行動を開始した。シュウとカナエが1階を、ケンタとリナが2階を、タクミが技術室でカメラ映像を確認する役割に分かれた。時計は4時50分を過ぎ、緊迫感が高まっていた。夕陽が校舎の窓を赤く染め、静まり返った校内に緊張が漂った。 ~1階の捜索~シュウとカナエは1階の教室や廊下を急いで調べ始めた。文化祭の装飾が残る廊下で、靴音が響いた。シュウが懐中電灯で隅々を照らしながら言った。「爆弾は目立たない場所に隠されてるはず。カナエ、机の下や棚を見て」「うん、シュウ! 気をつけて…」カナエが震えながら机の下を覗いた。3年2組の教室に入ると、窓際に置かれた花瓶の下に小
~文化祭の賑わい~ 10月下旬、星見小学校の文化祭当日がやってきた。 校庭には色とりどりのテントが立ち並び、保護者や地域の人々で賑わっていた。校舎の窓には生徒たちが作った装飾が飾られ、秋の陽光が校内を明るく照らしていた。 5年1組の教室では、星見キッズが準備した「射的ゲーム&紅葉アート展示」が大盛況だった。教室の入り口には、ケンタが作った木の板にゴールが描かれた射的ゲームのコーナーが設けられ、子供たちが順番待ちをしていた。 タクミが効果音を流し、「ゴール!」という音が響くたびに歓声が上がった。 「シュウ、見て! めっちゃ盛り上がってる!」ケンタがサッカーボールを手に笑った。 「うん、ケンタ、よく頑張ったね。みんな楽しそう」シュウがメガネをクイッと直し、満足そうに頷いた。 教室の奥には、リナが描いた紅葉の絵と林間学校の写真が展示されていた。保護者たちが絵を眺めながら、「素敵な絵ね」「林間学校の思い出が伝わってくる」と感想を述べていた。 リナがスケッチブックを手に微笑んだ。 「田村くんの笑顔、絵に込めたんだ。見てくれて嬉しい」 カナエはチケットを配りながら、クラスメイトと協力して運営していた。「シュウ、射的ゲームの景品、お菓子が人気だよ! もっと補充しなきゃ!」 「了解、カナエ。倉庫から取ってくるよ」シュウが倉庫へ向かった。 タクミはタブレットで照明を調整し、展示コーナーを美しく照らしていた。「シュウ、照明の色変えてみる? 紅葉がもっと映えるよ」 「いいね、タクミ。暖かい色でお願い」シュウが戻ってきて笑顔で答えた。 5年1組の出し物は
~林間学校からの帰還~10月中旬、林間学校から帰った星見小学校の5年生たちは、重い心を抱えながらも日常に戻っていた。林間学校の3日目に起きた田村悠斗(ゆうと)くんの殺人事件は、星見キッズにとって忘れられない出来事だった。犯人の松本翔は逮捕されたものの、動機はまだ明かされておらず、シュウたちの心にはモヤモヤが残っていた。学校に戻った初日、教室の窓から見える桜の木は秋の色に染まり、校庭には落ち葉が舞っていた。シュウは席でノートを開き、林間学校の事件を振り返っていた。「松本くんの動機…。まだ分からない。田村くんのためにも、真相を突き止めたい」カナエが隣に座り、優しく声をかけた。「シュウ、考えすぎだよ。警察が動機を調べてくれるって。文化祭の準備が始まるから、少し気持ちを切り替えよう?」「うん、そうだね。文化祭…。田村くんの分も楽しみたい」シュウがメガネをクイッと直し、ノートを閉じた。担任の田中先生が教室に入り、黒板に「文化祭準備」と大きく書いた。「みんな、林間学校は大変だったけど、文化祭で楽しい思い出を作ろうね。5年1組の出し物、今日決めよう!」文化祭の出し物決め教室が一気に賑やかになった。ケンタが手を挙げて元気よく言った。「俺、サッカーの射的ゲームやりたい! ゴールに見立てた的を狙うやつ!」「いいね、ケンタ! でも、みんなが楽しめるように、いろんなアイデアを出してみよう」カナエが笑顔で提案した。リナがスケッチブックを持ち上げて言った。「紅葉の絵を展示するの、どうかな? 林間学校の思い出を絵にして、みんなに見せたい」「林間学校か…。いいアイデアだね、リナ。癒される展示になりそう」シュウが頷いた。タクミがタ
~3日目の朝と決意~ 10月12日、林間学校3日目の朝、森の自然の家の空気は冷たく澄んでいた。 2日目の朝、大浴場でクラスメイトの田村悠斗(ゆうと)くんが全裸の状態で遺体として発見された事件は、星見キッズに深い衝撃を与えていた。 昨夜の調査で、麻酔と消毒液を使った巧妙なトリックが浮上し、医務室と換気口が次の手がかりとされた。 警察の協力のもと、シュウたちはこの日、真相を解き明かす決意を固めていた。 宿舎の部屋で朝日が差し込む中、シュウはノートを手に仲間たちと作戦を立てた。 「昨日、麻酔と消毒液がトリックの鍵だと分かった。今日は医務室を詳しく調べ、換気口の外を確認する。田村くんのためにも、犯人を絶対に見つけるよ」 「シュウ、怖いけど…一緒に頑張ろうね」 カナエが手を握り、緊張した笑顔を見せた。 「うん、星見キッズならできる。真相に近づこう」 リナがスケッチブックを手に頷いた。 「俺、力になる! 田村くんの仇を取るんだ」 ケンタが拳を握り、気合を入れた。 「データでサポートする。トリックを解くよ」 タクミがタブレットを手に準備した。 朝食後、警察の佐藤刑事から許可が出た。 シュウたちは田中先生と一緒に医務室に向かった。医務室は宿舎の端にあり、白いカーテンと消毒液の匂いが漂っていた。 棚には包帯や薬が並び、冷蔵庫には注射器と薬剤が保管されていた。医務室の証拠シュウが冷蔵庫を開けると、麻酔薬の瓶が一つ欠けているのに気づいた。 「この麻酔薬、
~2日目の朝と事件の発生~ 林間学校2日目の朝、森の自然の家の空気は清々しく、紅葉に染まった森から鳥のさえずりが聞こえてきた。 星見小学校の5年生は、前夜のキャンプファイヤーの興奮が残る中、2日目の予定は自然体験学習とクラフト作りを楽しみにしていた。 「星見キッズ」も、宿舎の食堂で朝食のパンとスープを食べながら談笑していた。 「シュウ、今日のクラフト作り、楽しそうじゃない? 木工細工とか作ってみたい!」カナエがパンにバターを塗りながら笑顔で言った。 「うん、僕も楽しみだよ。自然の中で何か作るの、初めてかもしれない」 シュウはメガネをクイッと直し、ノートをカバンにしまった。 「俺、弓矢みたいなの作って、サッカーよりカッコいい遊びをしたいな」 ケンタがスープを飲んで元気よく言った。 「紅葉の葉で絵を描くの、いいアイデアかも。スケッチに活かせそう」 リナがスケッチブックを手に持って微笑んだ。 「Wi-Fiないけど、写真で記録しておこう。自然の家のデータ、面白いかもしれない」 タクミがタブレットをいじりながら呟いた。 その時、食堂のドアが勢いよく開き、クラスメイトの山口くんが青ざめた顔で飛び込んできた。 「大変だ! 大浴場で…! 田村が死んでる!」 部屋に一瞬静寂が広がり、シュウたちは立ち上がった。 「田村くんが…? 行くよ、みんな!」 シュウが先頭に立ち、大浴場へ急いだ。 カナエが後ろで震えながら言
~バスの中でのたわいのない会話~10月上旬、秋の気配が深まる朝、星見小学校の5年生は林間学校に向けてバスに乗り込んだ。目的地は山間の「森の自然の家」で、紅葉に染まる森と清流に囲まれた場所だった。「星見キッズ」は、窓辺に座りながら興奮気味に話をしていた。バスのエンジン音が響き、車窓には田園風景が流れていく。「ねえ、シュウ! 紅葉がきれいそうで楽しみだよ。星見計画のことは忘れて、思いっきり遊ぼうね!」カナエが窓の外を指さして元気よく言った。「うん、そうだね。自然の中でリフレッシュするのもいいかも。たまには頭を休めたいし」シュウはメガネをクイッと直し、ノートをカバンにしまった。「俺、キャンプファイヤーが楽しみだ! 森の中でサッカーしたら、めっちゃ気持ちいいだろうな」ケンタがサッカーボールを膝に置いて笑った。「スケッチするの、楽しみだな。紅葉の色をちゃんと描けるか、ちょっと緊張するけど」リナがスケッチブックを手に持って微笑んだ。「自然の家のWi-Fi、使えるかな? 夜にゲームでもしてみたいんだけど」タクミがタブレットを手にいじりながら呟いた。その時、隣の席から声がした。「シュウたち、林間学校って何するんだろうね?」振り返ると、クラスメイトの田村悠斗(ゆうと)くんがニコニコしながら話しかけてきた。悠斗はサッカー部で明るい性格の人気者で、ショートカットの黒髪が特徴だった。「悠斗! お前も楽しみだろ? ハイキングとかキャンプファイヤーがあるみたいだよ」ケンタがボールを軽く蹴って笑った。「うん、楽しみだよ! 特に川遊びがいいな。魚でも釣れたら最高だ」悠斗が目を輝かせて言った。「魚釣りか…。僕、釣り竿持ってくればよかったかも」シュウが少し後悔したように呟いた。「大丈夫だよ、シュウ。自然の家に道具があるって