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言えなかった言葉を 01

Auteur: 市瀬雪
last update Dernière mise à jour: 2025-09-30 06:00:45

「バレたらクビかな」

「クビにはならねぇだろ。一応理由も嘘は言ってねェし」

「それはそうだけど……」

「……まぁ、あとで木崎に何か奢る羽目にはなるかもしれねェけどな」

 あのあと、河原は怪我を理由に早退し、俺もその付き添いだと言って一緒に店を出た。普通に考えれば河原一人帰せばいい話だが、そこは事情を知っている木崎が横から上手い具合に説明してくれた。

 だからまぁ、そのうちまた面倒なことを言ってくるかもしれないが、今ならそれくらい安いものだとも思う。

「……でも、やっぱりちょっと」

「気が引けるって?」

「うん……」

 その後はもちろん病院にも行った。だが思いの外俺の処置が適切だったらしく、結局簡単な消毒をしたのち同じように包帯を巻き直されただけで、あとは経過観察とされてしまった。

「つっても、もう帰ってきちまったもんは仕方ねぇだろ」

「そう、だけど……」

「じゃあ、もういいから黙れよ」

 そうして俺と河原はいつものように同じマンションに帰ってきた。更に言えば、同じ部屋――俺の部屋に。

 マンションのエントランスを抜け、いつものようにエレベーターが降りてくるのを待っていた。間もなくドアの開いた箱の中は空っぽで、それをいいことに俺は河原の手を取り、引っ張り込むようにしてその中へと乗り込んだ。

 突然のことに河原は驚いたように目を瞠り――それでも、繋いだその手を振り解いたりはしなかった。ただ戸惑うように視線をうつむかせ、頬を淡く染めて、ひどく緊張している時のように冷えた指先をかすかに震わせていた。……まるで初めて会った日のように。

 だからだろうか。気がつくと俺は記憶を辿るように河原の顔を覗き込み、そのまま誘われるようにキスをしていた。六階で扉が開く寸前、掠め取るように唇の表面を触れ合わせただけのそれは、けれどもあの時よりもずっと熱を帯びた余韻をそこに残した。

   ***

「……河原」

 部屋に入るといっそう理性は霞み、シャワーを浴びるどころか寝室に行くのももどかしく、俺は急くよ

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