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第2話

Penulis: 小鹿ちゃん
私の魂は宙に浮かび、自分の体を見下ろしていた。こんな辛い世界には、もう1秒たりともいたくはなかったのだが、魂がなにかものすごい力に引っぱられるように、私の魂は大輔のそばにやってきた。

空には星が瞬き、少し冷たい風が吹いている。

大輔と若葉は、山頂の岩に座り星空を見上げていた。その様子はとてもロマンチックで、温かい雰囲気が流れている。

若葉がそっと大輔の肩に頭を乗せる。「大輔さん。私、美優さんに何か言ったほうがいいかな。だって、私のせいで二人がけんかするのは嫌なんだもん。私だってずっと美優さんと仲良くなりたかったから、頑張ってたんだけど……いつもなんだか誤解されちゃうの」

若葉が傷ついたような顔をすると、大輔は宥めるようにその頭をなでた。

「この何年、俺が美優を甘やかしすぎたせいで、あいつは思い上がってしまったんだよ。今日なんか、お前の命を救う血清を奪おうとするなんて……医者のくせに人としてやっちゃいけないことをしてさ。でも、安心して。あいつには、絶対お前に謝らせるから」

私は大輔の前に歩み寄り、怒りを込めて問い詰める。「あなた、人の心を見抜ける弁護士だって、いつも偉そうに言ってたよね?なのに、この女の腹の底は見えないわけ?あなたの目は節穴なの?」

そのときふと理解した。忘れられない女の人の前では、男の人は本当に目が見えなくなる。だって、若葉が帰国したあの日から、大輔の心はもう私にはなかったのだから。

私が大輔と出会ったのは大学1年生のとき。あの日、私はルームメイトに携帯を盗んだと濡れ衣を着せられた。いくら言っても信じてもらえず、私はもう、死んで潔白を証明するしかないと思った。

冷たい風のなか、私は顔をぐちゃぐちゃにして泣きながら、寮の屋上にたったひとりで立っていた。

下には人だかりができていて、動画を撮っている人もいれば、「早く飛び降りろよ、この腰抜け!」とヤジを飛ばす人もいた。

なんて冷たい世界なんだろう、と思った。

一歩踏み出そうとしたそのとき、誰かによって私の体は後ろからぐいっと引き戻された。

私は呆然と、目の前にいる綺麗な顔の男を見つめる。

彼も私の顔を見つめていたが、急に我に返ったらしく、すぐに自己紹介をしてくれた。「名前は菅原大輔。法学部だから、もしかしたら何か手伝えるかもしれない」と。

大輔は、私の真っ暗な人生に差し込んだ一筋の光みたいだった。そして言ったとおりに、事件の真相も突き止めてくれた。

その後、ルームメイトは疑ってしまったことを私に申し訳なさそうに謝ってきた。

謝罪を受け入れたが、許すつもりはなかった。

私は孤児で、施設育ちだった。貧乏だったが、人として守るべきプライドはあったから。

それから私は、大学の近くに小さなアパートを借りた。授業とバイトと図書館を行き来するだけの毎日。でもそうしたら、世界はずっと静かになった。

大輔とはもう会うこともないと思っていたのだが、彼はなにかと理由をつけて私に会いに来るようになった。

ある日、私は大輔に聞いた。「私のどこが好きなの?」

彼は視線を一瞬彷徨わせたが、私の目をしっかりと見つめ返してきた。

「お前の……ほかの子とは違うところが好き」

私は自分の優秀さが、同じくらい優秀な彼を惹きつけたのだと思っていた……彼の財布の中から、若葉の写真を見つけるまでは。

その瞬間、全てが繋がった。大輔がどうしてあのとき私を助け、あんなに夢中でアプローチしてきたのか……それは、私と若葉の顔があまりにも似ていたからだった。

大輔と若葉は幼なじみだったが、親の都合で若葉は海外へ行ってしまった。そして、私が屋上から飛び降りようとしていたあの日、大輔も偶然、彼女を思ってひとりで泣きに屋上へ来ていたのだった。

大輔はただ偶然私を助けただけだった。しかし、まさか私が若葉とそっくりだとは思ってもみなかったのだろう。

そう、私は若葉の代わり。

それでも私は大輔と別れなかった。なぜなら、彼を愛してしまっていたから。大輔に助けられたあの瞬間から、もう特別な気持ちが芽生えていたのだ。

感謝もしていたし、愛情もあった。それに、もしあのとき彼が助けてくれなかったら、私はとっくにこの世にいないのだから。

8年も一緒にいた。だから、私たちの気持ちは本物だって信じていた。

しかし、若葉が帰国してから、大輔は変わってしまった。

彼は残業を言い訳に、疲れきった様子で夜遅くに帰ってくる。家にいるときでさえ書斎にこもって出てこない。私が書斎に入ると、慌てて携帯を伏せて、ノックもしないのかって怒ったりもした。

私は大輔の服の匂いを、念入りに確認するようになった。すると、いつもほのかに香るジャスミンの香水。それは、若葉の特別な香りだった。
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