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第2話

ネコ助
けれど、そのマフラーを湊が自分の手で心春の首に巻いているのを見て、すべて私の勘違いだったのだと知った。

もうすぐ死ぬからだろうか。未練が残っていたからなのか、今になってそのマフラーを目にした瞬間、どうしても手に入れたいという強い衝動が胸の奥から噴き上がった。

湊は私の指先を見た瞬間、露骨に顔を曇らせた。

「それはだめだ。心春は体が弱い。寒がらせるわけにはいかないだろ。それに、俺が手作りしたものだ。彼女にとっても大事なはずだから、別のものを選べ」

「私はこれがいい」

湊の心にまだ私がいるのか確かめたかったのかもしれない。私は譲らず、強い口調で言い張った。

けれど湊は、思いがけず逆上した。

「千夏、心春は将来、君を救ってくれるかもしれない存在なんだ。君が腎臓を一つ差し出したのも、彼女への借りを返したようなものだろう。前の君なら、こんな物にこだわったりしなかった。なのに今さら、彼女の大切なものを奪ってまで意地を張るのか?」

私は力なく笑った。

湊はもう、自分がどちらを大事にしているのか隠そうともしない。

一年前、心春が入社時の健康診断を受けたとき、彼女と私が同じ血液型だと知ってから、湊は心春を特別に気にかけるようになった。

仕事では、湊は心春を昇進させ、給料まで上げた。おまけに、私が進めてきたプロジェクトの成果を彼女の手柄にして、社内で一目置かれる存在にまで押し上げた。

私生活では、彼女の洗濯をし、食事を作り、三度の食事まできっちり世話した。呼ばれれば、いつでもすぐに駆けつけた。

私が少しでも不満を漏らすと、湊は決まって私を心が狭いと責めた。心春はいつか私の命を救ってくれるかもしれない人間なのだから、私は彼女に借りがあるのだと。そうやって私は、いつの間にか身に覚えのない重い負い目を背負わされていた。

これほどあからさまに心春ばかり大事にされているのに、それでも私は、湊の中にまだ少しは私への気持ちが残っているのではないかと期待していた。

本当に、笑ってしまう。

死を目前にして、ようやく湊の本心が見えた。

今思えば、かつて真夜中に何度も寝返りを打ちながら、どうしても納得できずに思い悩んでいたことなど、大したことではなかった。

「冗談よ。心春の大事なものを、私が奪うわけないでしょう」

私は小さく笑って、それ以上言い張るのをやめた。

同時に、湊への未練もきれいに手放した。

ところが心春は、急に傷ついたような顔をした。

「千夏さんがお金持ちで、いいものなら何でも持っているのはわかっています。私のものなんて安っぽくて、受け取る価値もないって思っているんですよね。そうですよね。私は所詮、ただの血の保険ですもの。お二人の友達になりたいなんて、思い上がりでした」

湊の目には、痛ましげな色が浮かんだ。

「大丈夫だよ、心春。今日はオークションがある。今から、もっといいものを買いに連れていく」

彼は振り返ると、ボディーガードにベッドの上の品々を片づけるよう命じた。まるで、私が本当に持って行ってしまうのを恐れているかのようだった。

ドアのところまで歩いたとき、湊は何かを思い出したように、はっとしたように足を止めた。

彼は窓を閉め、私に上着をかけると、優しい声でなだめた。

「千夏、連れていかないのは君のためだよ。今の体で無理をさせたくないんだ。俺が一番大事にしているのは君だよ。欲しいものがあったら言って。全部競り落として、結婚祝いに持って帰ってくるから。な?」

そう言い終えると、彼は心春と寄り添って出ていった。

窓越しに、私は下を見下ろした。

車のそばで、湊は心春のために身をかがめ、シートベルトを締めてやっていた。

心春が、助手席に置かれていた私と彼のツーショット写真を指さした。

次の瞬間、私たちの写真は窓の外へ投げ捨てられた。

車が動き出し、後輪がその写真を無情に踏みつぶしていった。

これが、湊が何度も口にしてきた「君を大事にしている」「愛している」という言葉の答えだった。

湊、私はもう長く生きられない。

それに、あなたと結婚する気もなくなった。

私はカーテンを閉めると、医師のもとへ行き、退院したいと伝えた。

「東雲さん、最期をどう過ごすかは、あなたの意思が一番大切です。ですから無理に引き止めることはできません。ですが、治療をやめれば、おそらく——」

私は口元だけで笑った。けれど、目は少しも笑っていなかった。

「先生、お願いは一つだけです。十日分の痛み止めを出してください」

残された十日間を、病院で過ごすなんてごめんだった。

両親が病院で亡くなってから、私は病院という場所にどうしても恐怖を覚えるようになっていた。

病院の正面玄関を出たところで、湊から電話がかかってきた。

「どうして退院した?」

「退屈だったの。寝ているのも好きじゃないから」

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