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第6話

Auteur: 天月
食事会が終わった後、泰明は美琴から「お茶でも飲みに来ない?」と誘われたが、丁重に断った。胸の中には後ろめたさと罪悪感があったため、家に戻ったら少し優しい言葉でもかけてご機嫌を取れば済むだろう。

だが、彼の予想は外れた。真希は、まるで彼の存在など見えていないかのように振る舞ったのだ。それに気づいた瞬間、怒りが一気に湧き上がった。

「今日は美琴の誕生日なんだぞ。俺と一花が一緒にお祝いしてたのに、お前はそれをつけ回してきたってわけ?本当、恥知らずにもほどがある」

真希は依然として一度も彼に視線を向けなかった。ただただ、この男が心底くだらないとしか思えなかった。外見だけでなく中身まで腐りきっている。

他の女とベタベタしておきながら、その責任をすべて彼女に押し付けてくるなんて、まさに他人に責任転嫁するプロだった。

泰明は眉間に深い皺を寄せ、真希を鋭く睨みつける。

以前なら、彼が少しでも不機嫌そうにすれば、真希はすぐに「ごめんなさい」と謝った。たとえ過ちが彼にあったとしても、彼女はいつも自分を責め、彼のご機嫌を取ろうとしていた。

だが、今はその手がまったく通じない。

この異常な変化に、泰明はどこか不安を感じはじめ、苛立ちが募っていく。

「何度言わせるつもりだ?俺と美琴はただの友達だよ!男女の関係なんて一切ない!少しは自分のことに集中できないのか?いつまで俺を監視してる気だ」

それでも真希は彼を見ようともせず、静かに返した。「あなたの言うとおりね。私、本当に自分のことに集中しないと」

その一言で、泰明は完全にキレた。彼女がわざと冷たくしている、そんなふうにしか思えなかった。

怒りのまま、彼はテーブルの上に置かれていたフルーツとグラスを全部床に叩き落とした。

だが真希は微動だにせず、静かにテレビを見続けていた。

泰明の目は血走り、拳を固く握りしめた。「俺は毎日朝から晩まで働いてるってのに、お前は家で優雅に暮らしてて、それでもまだ文句があるってのか?一花に母親がいないのが可哀想だから離婚しないだけだ。じゃなきゃこんなブス、さっさと捨ててるよ」

いつもの手だ。精神的に彼女を追い詰めようとする、慣れたやり口だ。

だが真希は冷たく、それでいて淡々とした口調で返す。「さっきも言ったけど、私は気にしてないし、怒ってもいない」

その言葉に、泰明はまるで綿に向かって拳を振り下ろしたような虚しさを感じた。怒りのやり場がなくなった彼は、ますます彼女の態度が気に入らなかった。

彼の中では、真希はわざとらしく無関心を装っているに違いないのだ。

彼女がどう思おうと、この件はこれで終わりにするわけにはいかない。「美琴の件は、ちゃんと面と向かって謝って許してもらえ!それができないなら、お前はこの先ずっと庭で寝ることになるからな!」

泰明はそう吐き捨てて、階段をドカドカと上っていった。

だが真希は気にも留めず、静かにソファに座り続けていた。心の中は、もう悲しみも怒りもない。ただ平穏だけが広がっていた。

一花がパタパタと階段を降りてきて、彼女の目の前に立つ。「またパパを怒らせたでしょ?あんたみたいなブス、パパには似合わない!私は秋葉おばさんと一緒に暮らしたいの、だから早く出てって」

真希は一花をじっと見つめ、口元に皮肉な笑みを浮かべた。「もうすぐよ。あなたの好きな秋葉おばさん、すぐに本当のお母さんになれるわ」

彼女はそう言いながら、庭に出ようと立ち上がる。

玄関に差し掛かったとき、一花の声が後ろから飛んできた。「ラーメン食べたい!早く作って!半熟卵付きでね」

真希は立ち止まることなく、一言だけ残して去っていった。「秋葉おばさんに作ってもらいなさい」

その背中に向かって、一花は信じられないような暴言を浴びせた。それはとても六歳児の口から出る言葉とは思えないものだった。

けれど、今の真希にとってはどうでもいいことだった。

この娘のことも、もう必要ない。彼女がどう育とうと、それは自分には関係のないことだった。

それなら、何もかも気にする必要はない。

その後しばらく、泰明は以前と同じように、一花を連れて家に帰ってこなかった。

そうやって真希を苦しめようとしているのだ。

しかも出て行くとき、彼はこう言い放っていた。「美琴に土下座して謝らない限り、俺たちは絶対に戻らない」

その言葉を思い出して、真希は思わず笑いそうになった。彼女としては、そんな父娘と一刻も早く縁を切りたかったのだ。

夜になって、美琴から一通の動画が届いた。

上半身裸の泰明に、美琴がベッドの上でマッサージをしている動画だった。

言葉は必要ない。その映像だけで、美琴の意図は明白だった。「あなたはもう彼を繋ぎ止められない」と見せつけたかったのだ。

真希は無視して、スマホをサイレントモードにした。どうせ邪魔になるだけだから。

それだけではない。普段Instagramすらろくに投稿しない泰明が、こっそりと気持ちを伝えるような投稿をいくつもしていた。彼もまた、じっとしていられなかったのだろう。

その必死さが、真希には滑稽にしか見えなかった。

もう少し。もうすぐ、自由になれる。

時間はあっという間に過ぎて、あと二日しか残っていなかった。

あの父娘のことを一切気にかけなくなると、時間が驚くほど自由になった。真希は自分の好きなことを、自分のペースでできる。

泰明は彼女をまるで無能のように扱ってきたが、会社が立ち上がったばかりの頃、大事な取引先との交渉はすべて彼女が担当していた。

軌道に乗ったあと、真希は妊娠を機に仕事を辞め、家庭に専念した。

だが、会社の株の三分の一は、今でも彼女の名義になっている。

去る前に、このあたりの整理はきっちりしておかなければならない。これからの人生のための、大事な準備だ。

彼女はそう心の中で計算していた。ちょうどそのとき、泰明が娘を連れて帰ってきた。

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