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第 596 話

Author: 一笠
車内は、甘い吐息と艶かしい空気に満ちていた。

優奈は服が乱れたまま、ドアにもたれかかり、スカートは太ももまで捲れ上がって、白く長い脚を露わにしていた。

一方、煌は反対側の座席に座り、落ち着いた様子でシャツを整えていた。さっきまでの情熱的な雰囲気はどこへやら、視線は真っ直ぐ前を向いていた。

認めざるを得ない。優奈はまるで妖精のように男を魅了する。

それに比べると、清子の真面目さ堅苦しさは、つまらなく思えてしまう。

だからこそ、彼は何度も優奈の罠にはまってしまうのだ。危険だと分かっていながら、自分を抑えることができない。

今日も、黒ストッキングを履いた優奈の写真が送られてきて、いてもたってもいられ
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