Mag-log in「......」凛がこんな反応をするなんて、志穂は全く予想しておらず、しばらく唖然としていた。凛が部屋を出てだいぶ経ってから、ようやく我に返った。......秋が深まってきた頃、日が暮れるのが日に日に早くなってきた。凛が仕事から帰ってきて玄関を開けると、美味しそうな匂いが中から漂ってきた。室内が明るく照らされ、そのおかげか窓の外の暗い夜空までもが、少し優しく感じられた。聖天がスープの入った鍋をキッチンから運んできて、テーブルに置いた。「ちょうどいいタイミングで帰ってきたな」明るい光に照らされた聖天の顔には、普段の厳しさなんか一ミリもなく、とても穏やかだった。目尻には、笑みまでもが浮
煌の納骨の日。その日は雨が激しく吹き荒れていた。納骨が終わると、優奈はしばらく霊園に残った。墓石の写真を見つめるばかりで、遠く離れた場所に立っている志穂に気づいている様子は全くない。志穂は黒いワンピースを着てきていた。そして、風雨に打たれ揺れる黒い傘を握りしめるその姿は、なんだか心までもが雨に打たれているようだった。30分後、志穂はその場を後にした。水たまりにハイヒールが沈み、小さな水しぶきが上がる......その後、志穂はわざわざ着替えると、「ベゴニア」スタジオへと向かった。中に入ると、ちょうど会議を終えた凛と鉢合わせた。凛は志穂をちらりと見ると、彼女から漂うなんだか重々しい雰
だから、潮が煌を助けてくれと頼みに来た時、良平は冷たくあしらったのだ。そして次に受け取った知らせが、煌の訃報だった。そう思い返すと、良平の心はさらに重くなった。だから、死んだ人間のことを考えても仕方ない、と自分に言い聞かせるしかなかった。気持ちを切り替え、良平は葬祭場に向かった。傘をしまう際にうっかり水滴を喪服に飛ばしてしまい、少し汚らしい姿になってしまった。良平と翔太が近づいてくるのを見た潮は、慌てて起き上がり、両手を広げて彼らの前に立ちはだかった。「出て行って!煌をあなたたちなんかに合わせないから!」潮の目は真っ赤に充血し、憎しみが渦巻いていた。その目で、良平を睨みつける。「実
潮の顔色は土色になり、震える声で尋ねた。「な......何を言っているの?」大輔夫妻は娘をかばい、すぐさま優奈に反論した。「無茶な言いがかりはやめてくれ!証拠はあるのか?煌は、どうせ死ぬ運命だったんだ!病気になったのを、うちの娘のせいにするなんて。煌が死んで、頭がおかしくなったんじゃないか!」しかし、清子だけは何も言わなかった。優奈は清子の背中を睨みつけて告げた。「私の言っていることが本当かどうか、あなたが一番よく分かっているはずでしょ?」「だったら......」清子は振り返り、憎しみに満ちた優奈の視線を見つめ返す。「煌を死なせたのは、あなたにも責任があるわ。私が彼の診断書を受け
優奈が抵抗せずにいると、潮の罵詈雑言はどんどんと酷いものになっていく。しかし、優奈は何も聞こえていないかのように、うつむいたままスマホで葬儀社の人とやり取りをした。その日、潮は声が枯れるまで優奈のことを罵り続け、最後には何も言えなくなった。煌を失った潮は、すべての気力を失い、葬儀は優奈に任せるしかなかった。今、葬祭場の外は雨が降り続いており、潮の泣き声が一層悲しく響く。煌が死んでしまってから、潮はずっと泣き続けている。目は真っ赤に腫れ上がっていたが、涙が枯れることは決してないように見えた。それに比べて、優奈の目はまるで枯れ果てた井戸のように、乾ききって空虚だった。雨が吹き荒れる中
北都に小雨が降る中、飛行機は無事着陸した。空港を出て車に乗り込むと、聖天は礼から電話を受けた。「煌が昨夜、亡くなった」聖天は思わず凛の方を見た。その視線は複雑だった。視線が合った瞬間、凛は何かに気づいた。「何かあったの?」「ああ、煌が亡くなった」聖天は礼の言葉を繰り返し、落ち着いた口調で言った。凛の顔色がわずかに変わった。心に言いようのない感情が湧き上がってくる。結局のところ、かつては愛し合った二人なのだから。しかし、もう二度と会うことはない。だから、なんの感情も湧かないと言えば、それは嘘になる。ただ、残るのはため息だけだった。煌はこの世を去ってしまったのだ。彼は生涯、権力







