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第17話

Autor: 無限
神谷グループの四半期決算が発表されると、株価はたちまち3パーセント急落した。

会議室では役員たちが俯き、息を潜めている。

陸は手元の書類をデスクに叩きつけた。

「誰か説明しろ。どうして東区エリアが、突然出てきた『カホ・キャピタル』なんかに奪われたんだ?

それに、半年もかけて練った入札プランだぞ。向こうの提示額が0.5パーセント高いだけなんて、偶然で済むわけがないだろ!」

すると、マーケティング部長が脂汗を拭きながら言った。「社長、情報漏洩の可能性がありまして……」

「調べろ」陸は冷たく言い放った。「今月中に、誰が裏で糸を引いているのか突き止めるんだ」

会議が終わった後、会議室に残った健二が、躊躇いがちに口を開いた。

「社長。実は……カホ・キャピタルのバックにいるのが、汐里さんではないかという噂を耳にしまして」

陸は勢いよく顔を上げた。「なんだって?」

健二が続ける。「確定ではありませんが、『カホ・キャピタル』の代表の新谷というのは、かつて江藤グループの専務だった人物なんです。

それに最近、私どものプロジェクト責任者たちも何人か引き抜かれているんですが、全員が江藤グ
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    3ヶ月後。空港の国際線ターミナル。カートを押す汐里の後ろに、湊が続いていた。汐里を見つめる湊の瞳から、珍しくふざけた雰囲気が消えていた。「本当に行くのか?お前の会社も軌道に乗ったばかりだし、国内じゃ駄目なのか?『カホ・キャピタル』は今や業界のルーキーと言われるほどになったんだからさ」汐里は歩みを止める。「でも、一度離れる必要があるの」色々なことがあったこの街から、遠ざかりたかったのだ。父のお墓。ミルキーの眠る場所、それに陸と歩いた道、一緒に食事をしたレストランの数々……何をしていても、過去10年間の日々を思い出してしまう。忘れたいわけではない。ただ、その思い出を過去にするには、時間が必要だった。「どれくらい行くんだ?」汐里は正直に答える。「1年……もしかしたら、3年になるかもしれない。でも、昔からの夢をやっと叶える機会が来たから、海外でデザインを学びたいの」湊は数秒沈黙した後、ふっと笑った。「分かった。行ってこい。ただ、汐里。一つだけ約束してくれないか?」「なに?」湊は少しふざけた表情で言う。「どこかの知らない男にさらわれないでくれよ。俺がお前の帰りを待ってるんだからさ」汐里は出会ってまだ半年にも満たない、この男の顔を見つめた。湊は復讐を支えてくれ、辛い日々を共に歩んでくれた。何度も拒絶したのに、それでも笑って「待っている」と言ってくれた人。陸との10年で、自分が持ちうる情熱と信頼はすべて擦り減らしてしまった。だが、湊と過ごしたこの半年で、自分はまた笑えるようになり、人を信じる気持ちも取り戻せたのだ。それが、友人としての絆であっても……「湊、ありがとう」湊は手を振りながら、目元を少し赤くした。「着いたら連絡しろよ。誰かにいじめられたら、すぐに言え。俺が飛んでってぶん殴ってやるから」汐里は微笑む。「うん」湊を抱きしめ、セキュリティチェックへと向かった。汐里は一度も振り返らなかった。時を同じくして、神谷グループの本社ビルでは、陸が大きな窓の前に立ち、灰色の空をぼんやりと眺めていた。彼は3ヶ月前の事故で肋骨を3本折り、1ヶ月入院していた。退院後、取締役会によってCEO職を正式に解任された。今の陸はただ名前だけの役員に過ぎず、実権は何もない。汐里の手により、神谷グ

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    しばらくして、陸も距離を保って後ろからついていった。交差点に差し掛かると、ちょうど赤信号になった。湊の車の後ろに、陸の車が停まる。湊の車のテールランプを見つめる陸の思考は、混乱していた。今すぐ車から降りて、湊の車から汐里を降ろし、後悔していることを伝えたい。そして、もう一度やり直したいと縋り付きたい。だが汐里が聞いてくれないことも、自分が嫌われていることも、陸は自覚している。信号が青に変わり、湊の車がゆっくりと動き出した。その時だった。対向車線から黒いセダンが猛スピードで飛び出し、湊の車に向かって一直線に突っ込んできたのだ!「汐里!」陸の頭が真っ白になり、意識より先に、体が反応した。ハンドルを切り、アクセルをベタ踏みして、自分の車を湊の車の前に割り込ませる。ドンッ。激しい衝突音。エアバッグが開き、強烈な痛みに襲われた後、陸の意識は闇へと消えていった。気がつくと、陸は病院にいた。消毒液の匂い、白い天井、ベッド脇の点滴。少し動いただけで、全身に激痛が走る。「目が覚めた?」汐里の声だった。陸が顔を向けると、汐里がベッド脇の椅子に座っていた。表情は読み取れなかったが、目が少し赤くなっている。陸は声を絞り出した。「怪我はないか?」「私は大丈夫。あなたの車が盾になってくれたから、かすり傷ですんだよ」と汐里が答えた。陸はほっと安堵の息を漏らす。「ならよかった……」汐里が言葉を続けた。「犯人は玲だった。狂ってるよね。私を殺そうとしたみたい。もう警察に逮捕されたんだけど、今回は逃げられないと思う」玲。陸は目を閉じた。また、自分が蒔いた種だ。自分があの時玲と関わらなければ……希望なんて抱かせなければ、玲だってこんな最後を迎えることはなかったのだから。「汐里」と陸は目を開けて汐里を見つめる。「今回のことで、少しは許してくれる気になった?」汐里も陸をじっと見つめ続けた。そして彼女は笑った。それは、とても冷ややかな笑みだった。「陸、まだ分かってないの?あなたがいなければ、私と玲が知り合うことはなかった。さらに言えば、命を狙われることもなかったんだよ?だから、全ての元凶は……陸、あなたなの。あの時、あなたが腎臓を提供してくれて、命が救われたって思ったの。だから、感

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