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第116話

Penulis: 一燈月
小夜は一瞬、呆然とした。

初めて会った時?

それは七年前、土砂降りの深夜、妊娠中の身で長谷川本家の門前に跪き、雨に打たれながら無我夢中で門を叩き続けた、あの時のことだ。

あの時の彼女は、実家と圭介に追い詰められて逃げ場を失い、やむなくあのような狂気じみた、背水の陣とも言える行動に出た。

そんな無様でみっともない姿が、義母の目には、称賛に値する「勇敢さ」と映っていたというのか?

本当に、一目見た時から自分を気に入っていたと?

では……もしあの時、お腹に子がいなかったら?長谷川家の嫁という立場ではなかったら?

それでも、自分を好きになってくれただろうか。

その問いを、彼女はついに口に出すことはなかった。しかし、大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ち、掛け布団の上にぽつぽつと濃い染みを作った。

そういうことだったのか。

それだけで、もう十分だった。彼女は、元来多くを望む人間ではないのだ。

彼女は浅く微笑み、涙を拭った。

しかし、ふと見ると、佳乃は眉間に深くしわを寄せ、その顔には濃い苦悩の色が浮かんでいる。何か恐ろしい悪夢にうなされているようだった。

「私が、もし……あなたのように勇敢だったら、よかったのに。そうすれば……そうすれば……」

佳乃は低く呻き、呼吸は浅く速くなる。小夜に握られた手も、微かに震え始めていた。

「まずい」

――そう直感した小夜は、慌ててベッドに上がり、布団の中に潜り込むと、佳乃の華奢な体を腕の中に抱きしめた。

まるで幼子をあやすように、その背中を優しく叩きながら彼女をなだめる。

「大丈夫、私がいるから。ここにいるから……」

そう繰り返しているうちに、やがて、佳乃の体は小夜の腕の中で丸くなり、呼吸も次第に穏やかになって、その表情も安らかになった。まもなく、彼女は深い眠りに落ちた。

小夜は、安堵のため息をついた。

しかし、佳乃の眠りは浅く、小夜も下手に動くことはできない。仕方なく、そのまましばらく彼女に寄り添って眠ることにした。

夜、佳乃が目を覚ますと、そばにいる小夜の姿にぱっと顔を輝かせた。そのおかげか気分も上向いたようで、夕食も普段より少し多く口にした。

それを見た雅臣も安堵に相好を崩した。

しかし、就寝の時間になると、雅臣はそうも喜んでいられなくなった。

佳乃はしばらく小夜に会っていなかったせいか彼女が恋し
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