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第377話

Autor: 一燈月
「うっ……」

深紅の天蓋に囲まれた円形のベッドの上、漆黒のシルクの掛け布団に包まれて、白いシルクのロングドレスを纏った美しい女が横たわっていた。

瞼が数回震え、低い呻き声と共にゆっくりと目を開く。涼やかな瞳には、戸惑いの色が浮かんでいた。

目覚めたばかりの小夜は、頭が重く、割れるように痛み、すぐには状況が飲み込めていなかった。

ベッドの上でしばらく体を休め、ようやく気づいた……ここはどこだ?病院の病室ではない。そうだ……誰かに襲われたのだ。

その瞬間、はっと意識が覚醒した。

慌てて体を起こし、周囲を見回す。だが目に入るのは床まで垂れ下がった深紅の天蓋だけで、外の様子は窺えない……大叔母様の敵が、自分をここへ連れてきたのだろうか?

理解できなかった。

相手はどうしてこれほど素早く手を出せたのか。海外に着いたばかりで、警戒もしていたはずなのに。どうして?

それに、ここは一体どこなのか?

大叔母様はどうなった?彼らは大叔母様に何かしていないだろうか?

心に渦巻く不安を無理やり抑え込む。詳しい状況が分からない以上、軽率な行動はできない。慎重にベッドの
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