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第379話

Autor: 一燈月
ところが、その女は彼女を一瞥しただけで、くるりと背を向けて去ってしまった。

小夜は呆然とした。

いや、拉致にしろ何にしろ、人を捕まえておいてこんな無責任な話があるだろうか。万が一自分が死んだらどうするつもりだ!

待てよ。

狼と睨み合ってからしばらく経つが、この狼はなぜ一向に襲いかかってこないのだろう?

もしかして、この狼は人を食べないのでは?

どうせ死ぬなら同じことだ。小夜は思い切って足を動かし、前に進もうとした。ところが、一歩踏み出した途端、ふくらはぎを噛まれた。本気で牙を立てられたわけではないが、狼が口を離さない限り、これ以上進めば皮膚が引き裂かれてしまうだろう。

まだ血の匂いも嗅いでいないのに、狼はこれほど飢えている。

血を見たら、どうなることか。

小夜は動くのをやめた。

彼女はもう開き直り、廊下に立ち尽くしたまま、逃げ出したいという恐怖感をこらえ、ふくらはぎに感じる狼の熱い息と、鋭い牙の感触に耐えながら、ただひたすら睨み合いを続けた。

油絵が並ぶ長い廊下で、白いドレスの美人が静かに立ち、一頭の浅黄色と灰色が混じった大きな狼が、女の周り
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