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第467話

作者: 一燈月
小夜が本気で怒っているわけではないと気づき、奈々は背後でようやくほっと息をついた。

けれど、その胸のうちは好奇心でいっぱいだった。

秘書として小夜のそばにつくようになってしばらく経つが、奈々から見れば、彰という男は絵に描いたような完璧な右腕だった。細かい指示を出さずとも、必要な時に必要な資料を先回りで揃え、代替案まで常に何パターンも用意してある。

あれだけ完璧に仕事をこなせる男がいるなら、自分のような若手の秘書をわざわざもう一人雇う意味などないはずだ。

実際、奈々の仕事は小夜と彰の間の「橋渡し」に過ぎなかった。

自分の秘書としての能力を活かす場面などほぼなく、たいていはただの伝言役だ。それなのに小夜は、明らかに彰を意図的に遠ざけている。

奈々に言わせれば、彰ほど優秀で、かつ忠実な部下はどこを探してもいない。

しかも、とんでもなく顔がいい。

オフィスに黙って立っているだけで目の保養になるというのに、小夜は彰を目の敵のように扱い、国内での社長室まで彼とは完全に分けているのだ。

二人の間に過去に何があったのかは知らないが、そこまで彼を毛嫌いしているのなら、い
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    小夜が本気で怒っているわけではないと気づき、奈々は背後でようやくほっと息をついた。 けれど、その胸のうちは好奇心でいっぱいだった。 秘書として小夜のそばにつくようになってしばらく経つが、奈々から見れば、彰という男は絵に描いたような完璧な右腕だった。細かい指示を出さずとも、必要な時に必要な資料を先回りで揃え、代替案まで常に何パターンも用意してある。 あれだけ完璧に仕事をこなせる男がいるなら、自分のような若手の秘書をわざわざもう一人雇う意味などないはずだ。 実際、奈々の仕事は小夜と彰の間の「橋渡し」に過ぎなかった。 自分の秘書としての能力を活かす場面などほぼなく、たいていはただの伝言役だ。それなのに小夜は、明らかに彰を意図的に遠ざけている。 奈々に言わせれば、彰ほど優秀で、かつ忠実な部下はどこを探してもいない。 しかも、とんでもなく顔がいい。 オフィスに黙って立っているだけで目の保養になるというのに、小夜は彰を目の敵のように扱い、国内での社長室まで彼とは完全に分けているのだ。二人の間に過去に何があったのかは知らないが、そこまで彼を毛嫌いしているのなら、いっそ辞めさせてしまえばいいのに。 ――まあ、いいか。 大財閥には、大財閥の複雑な事情があるのだろう。 一介の会社員である自分が、深く首を突っ込む話ではない。 奈々はこっそり振り返り、風を切るように歩く長身の美男の姿をたっぷりと鑑賞してから、上機嫌で小夜の後を追った。 高い給料をもらえて、おまけにタダで極上のイケメンまで拝めるのだ。 文句なし、十分すぎる待遇だった。 …… レセプション会場。 会場に入った小夜は、グループと取引の多い重役たちとそつなく二言三言言葉を交わし、紹介された若手起業家にも型通りの挨拶を済ませると、適当な理由をつけて早々にその輪から抜け出した。 ウェイターから受け取ったシャンパンをひと口含み、何気なく視線を巡らせたところで、彼女の動きがぴたりと止まった。 ――まったく、いつまでも執着してつきまとう女だ。 「高宮さん。久しぶりね」金のフリンジが揺れる華やかなドレスをまとった若葉が、完璧な笑みを浮かべてゆっくりと近づいてきた。 「……」 小夜は素っ気なく返した。「昨日、電話で話したばかりでしょう」 「…

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