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知っている理由

Author: 影畑凛星
last update publish date: 2026-09-05 11:52:28

『事故を見てたんですか?』

 千紘が送った問いに対して、返ってきたのは『もう聞かないで』という一言だけだった。

 ここで追えば、芹奈は逃げる。

 そう分かっていても、千紘はスマートフォンを置けなかった。

 あの日、芹奈が現場にいたことを、千紘自身は知っている。

 けれど、雨宮凛は知らない。

 まして、千紘の記憶を証拠として差し出すことなどできない。

 必要なのは、自分が知っている真実を、雨宮凛でも辿れる形にすることだった。

 もう一度だけ、千紘はメッセージを送った。

『見ていないなら、どうして嘘だと分かるんですか?』

 既読はすぐについた。

 返事はない。

 一分。

 二分。

 やがて、入力中の表示が現れた。

『彰人さん本人から聞いたことがあるから』

 千紘は眉を寄せた。

『何を?』

『奥さんが亡くなったあとの話』

 

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    『事故を見てたんですか?』 千紘が送った問いに対して、返ってきたのは『もう聞かないで』という一言だけだった。 ここで追えば、芹奈は逃げる。 そう分かっていても、千紘はスマートフォンを置けなかった。 あの日、芹奈が現場にいたことを、千紘自身は知っている。 けれど、雨宮凛は知らない。 まして、千紘の記憶を証拠として差し出すことなどできない。 必要なのは、自分が知っている真実を、雨宮凛でも辿れる形にすることだった。 もう一度だけ、千紘はメッセージを送った。『見ていないなら、どうして嘘だと分かるんですか?』 既読はすぐについた。 返事はない。 一分。 二分。 やがて、入力中の表示が現れた。『彰人さん本人から聞いたことがあるから』 千紘は眉を寄せた。『何を?』『奥さんが亡くなったあとの話』 さらに続く。『助けられなかったって後悔してるようには見えなかった』 そう来たか。『でも、それだけで嘘だとは分からないですよね?』『言い方が悪かった』『どういう意味ですか?』『私がそう思っただけ』 完全に引き返した。『じゃあ、事故を見ていたわけではない?』 今度はすぐに返ってきた。『見てない』 嘘。 千紘は思わず笑いそうになった。 自分を殺した夜、あの場所に芹奈がいたことは覚えている。 だからこそ分かる。 今、芹奈は慌てて自分の発言を取り繕っている。『そうなんですね』 千紘は、それ以上追及しなかった。 ここで「嘘ですよね」と突きつけたところで意味はない。雨宮凛が嘘だと断言できる理由を説明できないからだ。 むしろ、今は逃げさせた方がいい。 芹奈は凛に彰人から離れてほしい。その

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