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5話

Penulis: 籘裏美馬
last update Tanggal publikasi: 2026-02-03 19:16:43

樹が出て行った部屋で、1人。

音羽は痛みに呻きながら嬉しさに涙を零していた。

「樹……樹が、来てくれた……!」

音羽の瞳からは、後から後から涙が零れる。

とても、辛かった。

覚えの全くない罪で捕まり、実刑判決を受け、刑務所に入れられた。

生まれ育った場所を離れ、地方の刑務所に入れられ。

どれだけ心細く、恐ろしかったか。

だけど、樹がわざわざこんな遠い場所まで駆け付けてくれた。

そして、必ず出してくれる、と樹が言ってくれた。

それに──。

音羽は、自分のまだぺったりとしている腹部に目を向け、痛む腕を何とか動かして下腹部に触れた。

「ここに……私と樹の赤ちゃんが……」

ぶわり、と再び涙が溢れる。

「嬉しい……っ、こんなに嬉しい事って無いわ……!」

音羽が樹と結婚して、もうすぐ2年になる。

中々子供が出来ず、音羽は焦っていた。

音羽の夫、樹は玉櫛財閥の御曹司だ。

そして、玉櫛ホールディングスの代表でもある。

そんな彼には、跡取りが必要だった。

子供を周囲から強く望まれていたのだ。

音羽も、樹と共に玉櫛の本家に行く度に周囲から何度も何度も言われてきた。

玉櫛の嫁たるもの、跡継ぎを産まなくてどうする。

嫁としての務めも果たさず、仕事に出るなど言語道断だ、と本家からはいい顔をされなかった。

だが、音羽が本家の者達に言われても、いつも樹が音羽を庇ってくれたのだ。

音羽は、仕事をしたいのだ、と。

子供は焦らずとも自然と出来る、と。

音羽に浴びせられる心無い言葉たちから、樹は何度も何度も庇ってくれた。

音羽を愛し、慈しむように優しい樹。

だが──。

樹の女好きの性格。

それさえ無ければ最高だったのに、と音羽の頭の中で浮かぶ。

そんな事を考えていた時。

病室の扉ががらり、と開き樹が戻ってきた。

「音羽。そんな泣いていたら辛いだろう」

「樹……、樹」

「ああ、こんなに殴られて……痣まで出来てる……」

樹は愛おしげに音羽の頬に流れる涙を優しく拭う。

樹の目は、本当に痛ましげに歪められていて。

「これじゃあ、痛いだろう……冷やさないとな……」

「樹……?」

労るように、樹の唇が音羽の涙を舐め取り、頬に口付ける。

最初は音羽も大人しく樹の行動を受け入れていた。

樹から、労るような感情がしっかりと感じられたから。

だが、次第に樹の手が怪しい動きを始める。

するり、と音羽の病院着の中に樹の大きな手のひらが入り込み、音羽はぞっと背筋を震わせた。

「た、樹──……?」

「音羽、可哀想にな……すぐに俺が出してやる……」

樹は、音羽の言葉には返事をせず、熱に魘されたようにとろんとした声を出す。

その間にも、樹の手は明確な目的を持って動き出した。

樹の手のひらが、音羽の細くしなやかな腰を撫で回し、もう片方の腕が、病院着の上からしっかりと音羽の胸を掴んだ。

「──っ」

ぞっと音羽の背筋が凍った。

音羽が大怪我をしていると言うのに、信じられない事に樹は今ここで、事に及ぼうとしているのだ。

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