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夫と愛人に地獄に突き落とされた私を救ってくれたのは「若」と呼ばれる裏の世界の人でした
夫と愛人に地獄に突き落とされた私を救ってくれたのは「若」と呼ばれる裏の世界の人でした
Auteur: 籘裏美馬

1話

Auteur: 籘裏美馬
last update Date de publication: 2026-01-30 15:13:28

「この性悪女が!」

「人まで焼き殺したらしい、とんでもない女だ!」

「私達も殺されるかもしれない!殺される前にやらないと!」

ガツン、ガツン、と女が頭を蹴られる。

髪の毛を掴まれ、壁に叩きつけられ、女は大きく咳き込んだ。

背中を強かに打ち、息が詰まった女は、そのまま意識を失い倒れ込んでしまった。

「──うわっ、気絶した……っ」

「やばい、本当に死んでないよね?」

「やり過ぎた……?」

「いや、でも痛めつけてくれって言われたし……」

「逃げよう。看守に見つかったら私達まで罰せられる!」

倒れた女はそのままに、女を囲って暴行していた数人の女達は蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ出した。

そこに、騒ぎ声を聞き付けて興味本位にやって来た女がいる。

「──何だ?リンチかな?」

やってきた女は、わくわくそわそわとしたような顔をして、ひょこり、と壁から顔を覗かせた。

そして、目の前の光景に瞬間、目を見開く。

「お、おい!あんた!大丈夫かい!?」

慌てて駆けつける女の視界の先には、傷だらけで倒れている女──女性が、居た。

女性刑務所。

関東から遠く離れた寒い土地にあるこの刑務所には、数多くの受刑者が服役していた。

そこで、救急搬送された女性が居た。

女性の傍には、女性刑務官と発見者の先程の40代くらいの女が、ストレッチャーで運ばれる女性に付き添っていた。

ストレッチャーで運ばれて行く女性は、年は20代半ば頃。

ほっそりとしなやかな手足に、きめ細かな肌。

化粧などしていないのに、美しい女性が救急車に搬送された。

その女性の名前は、玉櫛 音羽(たまくし おとは)

玉櫛財閥の御曹司、玉櫛 樹(たまくし たつき)の妻で、この刑務所に入所して数ヶ月。

音羽は、ずっと無実を訴えていた。

裁判でもずっと無実を訴えてはいたが、音羽の訴えはあっけなく退けられ、実刑判決を受けたのだ。

刑務所に入れられた後もずっと無実を訴えていたが、それは誰にも聞き入れられず。

そして、今日。

突然音羽はガラの悪いグループに呼び出され、集団で暴行を受けてしまったのだ。

頭の打ち所が悪く、気絶した音羽を見つけた同じ受刑者はすぐに看守に知らせ、こうして救急車が呼ばれ、搬送に至った。

「465番。発見し、教えてくれて感謝する。後は任せて、戻りなさい」

「ええ、分かりましたよ」

音羽を発見し、刑務官を呼んだ465番と呼ばれた女性は、僅かに表情を曇らせ、救急車を見送った。

「──あんなに綺麗な子なのにねぇ……。しかも、顔を重点的に狙うなんて……酷い事をするもんだよ」

はぁ、と溜息を零しつつ、その女性は去って行った。

◇◆◇

都内・玉櫛ホールディングス。

大きな自社ビル。

そのビル内の最上階に、社長室がある。

社長室には本来の主は今はおらず、社長の専属秘書は、私用スマホに電話が掛かってきたのを見て、その電話を取った。

「──もしもし?」

秘書の形の良い、真っ赤な唇が声を発する。

「ええ、そう……手筈通りにやってくれたのね?ありがとう」

にんまり、とその真っ赤な唇が歪む。

「報酬は家族に振り込んでおくわね。またよろしくお願いするわ。ええ、じゃあ」

秘書の女が電話を切ったと同時。

社長室の扉が開き、1人の男が部屋に入ってくる。

「──裕衣(ひろえ)?今、誰かと話していたのか?」

「──社長!ええ、家族と少し」

「社長はよしてくれ。いつもみたいに名前で呼んでくれよ?」

「あらっ、ふふ……樹。もう会議は終わったの?」

「ああ。なんの実りも無い退屈な会議だったよ。お前を抱いている方が断然良い」

「やだっ、えっちね」

「男なんてそんなものだ」

樹──音羽の夫である玉櫛樹は、白昼堂々と妻である音羽以外の女性を自分のデスクに押し倒し、乱暴に体をまさぐりはじめる。

秘書の裕衣は、甘い声を上げながら樹の首に腕を回し、にんまりと笑みを浮かべた。

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    ◇ ざわざわ、とパーティー会場がざわめいている。 樹の腕に自分の腕を絡ませていた裕衣は、眉を顰めた。 「やだ、何なのよ。何の騒ぎ?」 「いや、ここからでは分からない」 裕衣の言葉に、樹も不審そうに呟く。 「どうやら入口で揉めているようだ。……人相の悪い人間が、招待状も無いのにこのパーティー会場に入ろうとしているらしい」 「人相の……?嫌ねぇ……場所を間違えているのかしら」 「ああ、全くだ。時折こういった場所にああ言う連中が来る所を見た事があるが……。大体は倒産しかけの企業や、馬鹿な会社の役員がああいった連中に連れていかれる。あんや奴らと関係を持つなど、愚の骨頂だ」 樹の言葉に裕衣は笑みを浮かべながら、内心冷や汗をかいていた。 (ま、まさか……私を探しているんじゃないわよね……?だ、だってこの間ちゃんと言われた通りの金額を渡したもの……。遅延だってしてないわ) だから、自分に用があるはずがない。 きっと今来ているのは、違う人に会いに来ているのだ、と裕衣は思い込む。 だが、どんな人物が来ているのか──。 それが気になって、裕衣は入口の方を確認した。 (お金の受け渡しをする人は、毎回違うけど……。知っている顔じゃないわよね……) 入口周辺には、人だかりが出来ている。 だが、ちらちらと見え隠れする人物がいた。 派手なシャツに、人相の悪い顔。 髪の毛などなく、スキンヘッドにされている。 そして、その頭には大小様々な傷跡が残っており、誰がどう見ても「普通の人」では無い事は丸わかりだった。 人の隙間から人相を確認した裕衣は、見知った顔では無い事にほっとした。 だが、ほっとしたのも束の間。 裕衣と、その人物の目がぱちり、と合った気がした。 「──え」 裕衣が驚きに目を見開いていると、目が合ったスキンヘッドの男は、にぱっと笑みを浮かべた。 そして、口を大きく開く。 その動作が、とてもゆっくりと感じられて、裕衣はひゅっと喉を鳴らした。 やめてよ、一体何を言うつもり──。 顔色を悪くする裕衣を嘲笑うかのように、スキンヘッドの男は大声で言葉を発した。 「裕衣さん!玉櫛 裕衣さん!良かった、あなたに会いたくて来たんです!」 「──ひっ」 裕衣が小さく悲鳴を上げる。 スキンヘッドの男は、ご丁寧に裕衣の名前、そして苗字まではっ

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