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第712話

作者: かおる
「じゃあ、前にあなたたちが翔太を連れてよく行ってたあの遊園地にしましょう。

小林さんも来たければ、どうぞご自由に」

ハンドルを握る雅臣の指先が、無意識にぎゅっと力をこめた。

たしかに、かつて彼と清子は何度か翔太をその遊園地へ連れて行ったことがある。

だが――星とは、一度もなかった。

電話の向こうで、清子が柔らかく微笑むような声を出す。

「わかったわ。

着いたら、また連絡するわ」

通話が切れると、車内に静けさが戻った。

しばらくして、怜が自分から話題を見つけて星に話しかけ、ふたりの間に穏やかな空気が流れ始める。

その間、雅臣も影斗も一言も発さなかった。

やがて一行が遊園地に着くと――

なんと清子はすでに園内で待っていた。

その行動ひとつで、彼女が最初から同行するつもりだったことが明らかだった。

翔太はポケットから口紅を取り出し、清子に手渡す。

「清子おばさん、これ、口紅」

清子は照れくさそうに笑った。

「もう、私ったら本当にうっかりなの。

落としたり忘れたりばっかりで」

影斗が口を挟む。

「小林さんが神谷さんの車に乗らなければ、そんな心配もなかった
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