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第857話

Author: かおる
雅臣は一瞬、呆然とした。

そして次の瞬間、全身が震えた。

――翔太でさえ分かっていた。

星は、もう自分とは一緒にいたくないのだと。

彼女には、すでに新しい生活がある。

自分がいないほうが、きっと幸せに過ごしていける。

雅臣は長い間茫然としていた。

舞台の灯りが落ちて、ようやく意識が戻った。

自分はこれほどまでに星を傷つけてきた。

彼女が自分と一緒にいたくないと思うのは当然だ。

――だが、それでも諦めない。

ふたりはできちゃった結婚で、恋愛も、まともな結婚式もなかった。

彼女は恋の幸せを味わうことなく、結婚そのものに希望を失った。

だから、今の彼女が自分と一緒にいたくないのも、当然のことだ。

ならば――また一からやり直せばいい。

彼は、再び彼女を取り戻すことができる。

五年も共に過ごしたのだ。

星を自分以上に理解する者はいない。

彼女は自分にまったく愛情がないわけではない。

影斗よりも、自分のほうがはるかに有利だ。

それに、あの正体の分からない仁志など――

身元も明かせない時点で、恐れるに足りない。

航平は、前列の暗がりの一角に座っていた。

視界は良好でありながら、目立たない場所。

ここは星がわざわざ用意してくれた席だった。

雅臣に気づかれたくなかった。

彼の視線は舞台に釘付けで、もはや熱を隠す必要さえなかった。

「星......」

彼は小さくつぶやく。

この数年間、ずっと陰から彼女を見守り続けてきた。

自分の星が、どれほど優れているか――彼はずっと知っていた。

星の輝きを覆い隠していたのは、雅臣だった。

塵が払われた今、彼女は宝石のように光を放っている。

そうだ。

もし雅臣が彼女の光を曇らせていなければ、自分など彼女に近づくことすら不可能だった。

自分は彼女に相応しくない。

それは分かっている。

だが――それでもかまわない。

遠くから見守れるだけで十分だ。

これからは、彼女の行く道を阻むものをすべて取り除き、二度と誰にも彼女を傷つけさせない。

葛西先生、影斗、怜、そして仁志の四人は、前列の中央――特等席に座っていた。

会場が暗くなると、仁志をナンパする女性たちもようやく引き下がった。

影斗は思わず笑った。

「仁志は本当に人気者だな。

たったこれだけの時間で、十人はお前の連絡先を聞
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