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第5話

Author: ミズキ
晃は、紗江が必ず言い訳を始めると思っていた。

だが、ふらつきながら立ち上がった紗江は、いきなり二人に向かって頭を下げた。

彼女が顔を伏せていたせいで、表情は見えない。だが、耳に届いたのは一切の感情を排した冷たい声だった。

「吉岡さん、すみません。私が慌ててしまって、ぶつかってしまいました。

わざとじゃありません」

その言葉に、晃も雛乃も思わず目を見開く。

雛乃の泣き声も、ぴたりと止んだ。

彼女は晃の胸に顔をうずめたまま、目に複雑な光を浮かべている。

やがて、雛乃は晃の服の裾を軽くつまんで、上目遣いに甘えたように言った。

「もういいよ、晃くん、彼女が本気かどうかは別として、謝ってくれたんだし。あなたのためにも、私は騒ぎたくないの」

寛大な一言に、晃の目に一瞬浮かんだ迷いも消えた。

卑屈に頭を下げる紗江の姿を見て、彼は冷笑を浮かべる。

そういうことか。

これまで一度でも、こいつがわきまえていたことがあったか?

今だって、ただの芝居に過ぎない。

やはり階層が違うのだ。雛乃のような器量は、いつまで経っても持てないのだろう。

彼は紗江を愛しているのだ。ただ、彼女はあまりにも救えない。

そう考えるほど、晃の胸はイラ立ちに満たされた。「謝るなら、もっと誠意を見せろ。君は彼女に借りがあるんだからな。この部屋は今後、雛乃に使わせる。お前には別の部屋を用意させる」

そう吐き捨てると、彼は雛乃を抱きかかえたまま、その場を足早に去ろうとした。

廊下はそう広くない。

わざとなのか、偶然なのか。通り際、雛乃のハイヒールが紗江の頭を蹴った。

紗江は何も言わず、ただ静かに屈辱を受け入れる。

誰にも気づかれなかったが、その眼差しは氷のように冷たく凍てついていた。

別の部屋を用意すると言っていたが、与えられたのは物置部屋だった。

この屋敷の使用人たちは、もともと紗江を見下してる。

彼女が刑務所から出てきたと知れば、将来の篠田夫人になる可能性などないと確信する。

晃が今、彼女を追い出さないのはただの情けでしかない。

だから、誰もが彼女に対してぞんざいだった。

紗江はすべてを受け入れていた。

なぜなら、さっき執事から送られてきた連絡を読んだからだ。すでに手続きは整っていて、問題がなければ、三日後には小松家に戻れる。

さらに、執事からもう一つ知らせが届いていた。

「お嬢様、以前、吉岡雛乃を拉致した連中のこと、調べがつきました。吉岡家とお金のやり取りがあったようです」

「ふざけた吉岡家め。お嬢様にこんなことを仕掛けるなんて……」

画面越しでも、執事の怒りと焦りが伝わってくる。

それこそが、彼女を心から思ってくれる人の反応だ。

昨日、彼女と再会してからまだ24時間も経っていない。それでも執事はすでに裏を取っていた。

つまり、吉岡家のやり方は稚拙だったということ。

晃が本気で動けば、とっくに真相にたどり着けたはずだ。

けれど、彼は動かなかった。

つまり彼の中では、自分こそがそんなことをする人間だと決めつけられていたのだ。

鼻の奥がつんと痛む。胸の奥が痙攣するように締めつけられる。

彼女は涙を堪え、執事に静かに言った。

「山口さん、このことはまだ両親にも兄にも言わないで。私が自分で片をつけるから。

親不孝でごめんなさい。こんなに長く家を離れて、心配ばかりかけて」

彼女の頼みに、執事はため息をつきつつも承諾した。

そして、彼女が昔よく使っていた私物をいくつか送ってきてくれた。

それらは箱に収められていた。

紗江がそれを取り出そうとした時、部屋の扉は、いきなり乱暴に開かれた。

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