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第 704 話

Author: 水原信
「私は海咲に会いに行く!」紅は病室にいても、もう我慢の限界だった。

「ダメだ。お前は犯人だ。病室から一歩も出ることは許されない!」竜二が言い放つ。

「だったら君がついてきたらいいでしょう?今の私の状態で、どこに逃げられるっていうの?」紅は竜二の頑固さに呆れ、どうしてそこまで融通が利かないのか理解できなかった。

竜二はさらに反論する。「上からの命令がない限り、お前は病室を離れることはできない!」

彼がどうしても首を縦に振らないと分かると、紅の眉間には皺が寄り、表情が険しくなった。「じゃあ、どうしても彼女に会いに行くと言ったらどうするの?」

竜二は言いかけた。「それなら......」

話が終わる前
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