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247.葉山と食事、開かれたキャリアの道

last update Last Updated: 2025-09-26 08:10:07
佳奈side

「打ち合わせの予定だけど、来週の木曜日の夜は予定、空いてる?店は前に一度親睦会で行った店で、十八時からどう?」

クリエイターの葉山からメールが届き、私は即座に「承知しました。大丈夫です」と返事をした。

数年前、業績優秀賞でうちの部門が社内表彰された際に、デザインを担当していた葉山を招いて食事会を行ったことがある。和食店で、個室の席もあり他の客を気にせず話をすることが出来るが、都内にしてはリーズナブルな料金で気に入っていた。

(葉山さんとは何度も仕事でご一緒させてもらったけど、外で会うのは初めてだな。どんな話をするのだろう?)

職人肌で、こだわりも強く独自の世界観を持つ葉山は、私生活も謎に包まれており、誰とでも社交的に付き合うタイプではなく、話が通じ合った人ととことん議論を追求するような見た目では分かりにくいが熱い男だった。

葉山も個室を選択したということは、打ち合わせの内容に集中したいということだろうか?私は、打ち合わせのための資料の作成などの準備に取り掛ある。

(今回の仕事でしっかり実績を残して、他の仕事も取り戻したいから頑張らなくちゃ!)

この食事で結果を出せば、部長の藤原も考えを改めるかもしれない。私はいつも以上に意欲に燃えていた。目の前に再び、輝いたキャリアの道が広がっているように感じた。

「来週の木曜日、打ち合わせで外食になったから帰り遅くなるよ。」

普段は、啓介とこんな風に細かく連絡を取り合うことはしない。でも、なんとなくこの気持ちを啓介と共有したかった。

「俺もその日会食。頑張ってね。」

すぐに返ってきた簡潔な返信。お互いが仕事に邁進している証拠だ。

私の頭の中はすっかり仕事で満たされていて、啓介のことを疑ったり、気にすることなど全くなくなっていた。
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