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34.笑顔の佳奈と怯える啓介(後編)

last update Huling Na-update: 2025-06-09 09:26:04
「え……。佳奈まで巻き込むようなことは出来ないよ。」

「何を言っているの?キスするところを見た時点でもう十分巻き込まれているわよ。それに、私もこのままじゃ終われないのよね」

私は笑顔で啓介に言った。啓介の顔は引きつっている。

凛の行動は、私たちの結婚という未来にも影を落とす可能性がある。もしかしたら、私たちの結婚式を妨害しようとするかもしれないし、私たちの家族や友人に接触して何かを企むかもしれない。

今でさえ暴走をしている彼女が、今後どのような行動に出るのか全く予想がつかない。最悪の事態を想定しておかなければ手遅れになる可能性もある。手遅れになる前に凜にあって直接決着をつけたいと思った。

凛と私を会わせることで事が大きくなることを危惧する啓介の気持ちも理解できる。平和主義で穏便に過ごしたい啓介らしい。しかし、私は黙っていられなかった。挑発したようにキスしてきた凜を無視できなかった。

(お母さんに近付いてきたことで啓介も気にかけている。どんな思いでキスしたのかは知らないけれど、パートナーが目の前で別の女性とキスするのを見て黙っておけるわけないじゃない。結婚するのは私なんだから。)

私の闘志は燃え上がっていた。にこやかに笑ったつもりだったが、いつもの私とは全く違う挑戦的な笑みだったのだろう。その時の私の表情が啓介にとってどれほど恐ろしかったのか、のちに彼は思い出話をするたびに「佳奈が、口角をあげているのに全く笑っていないで闘志を剥き出しにしているから正直ゾッとした」と何度も私に語るのだった。

(凜は『啓介のことを一番好きなのは私!』と言ったみたいだけど、『啓介のことが好きで啓介に愛されているのは私』なんだから。好きだけじゃなくて、私たちは生きていく上でのパートナーなの!!)

こうして、啓介をめぐって婚約者の私と元カノ・凛のバトルが音を立てて幕をあけたのであった。
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