LOGIN添付忘れが四件。 保管場所不明が七件。 実確認者名なし、六件。 前年踏襲のみ、五件。 文言不備、三件。 支出先不明、二件。 本当に緊急、優先度高が一件。 「半分近くが、資料の置き場所か添付漏れですね」 トーマが言った。 「ということは」 クラリスは頷く。 「王太子府が止まっている理由の半分は、判断ではなく資料管理です」 ジュリアスが深く息を吐いた。 「耳が痛いな」 「でも、改善できます」 クラリスは言った。 「根拠資料台帳と提出前確認欄で、かなり減らせるはずです」 ライオネルが表を見つめていた。 「……差し戻しが多いのではなく、資料の扱
「笑ってはいません。分類し甲斐があると思っただけです」 「それも大概です」 ジュリアスが、差し戻し理由の仮分類表を差し出した。 「トーマが作った」 クラリスは表を見る。 根拠資料不足。 実確認者名なし。 前年踏襲のみ。 支出先不明。 文言不備。 本当に緊急。 悪くない。 むしろ、初動としてはかなりよい。 「まず、この分類で十分です」 トーマがほっとした顔をした。 だが、クラリスは続けた。 「ただし、“本当に緊急”は差し戻し理由ではなく、処理優先度です。別欄にしましょう」 「あ……そうですね」 トーマがすぐに書き直す。 「それから、
「殿下。分類欄を作るのでしょうか」 「作れるか」 「はい。ええと……根拠資料不足、実確認者名なし、前年踏襲のみ、支出先不明、文言不備、緊急確認……くらいでしょうか」 ジュリアスは頷いた。 「よい。まずその分類で始める」 トーマの顔が少し明るくなった。 だが、ライオネルはまだ渋い。 「殿下、分類作業にも人手がかかります」 「分かっている」 「差し戻し対応に人員を割けば、通常処理はさらに遅れます」 「だから記録する」 ジュリアスは言った。 「どれだけ遅れるか。何に人手がかかるか。どこが詰まるか」 「そこまで記録している時間が」 「記録しなければ、毎日同じ話をする
王太子府に置かれた新しい箱は、朝のうちは空だった。 磨かれた木製の箱で、側面に小さな札がついている。 差し戻し たった四文字。 けれど、その四文字を見た王太子府の書記官たちは、まるで見慣れない獣でも置かれたような顔をした。 「……これ、常設ですか」 若い書記官のトーマが小声で尋ねた。 隣にいた古参補佐官ライオネルは、眉間に皺を寄せたまま答える。 「殿下が、そうお決めになった」 「常設なんですね」 「聞き返すな」 「はい」 トーマは慌てて背筋を伸ばした。 王太子府では、書類は基本的に流れるものだった。 王太子に上げる前に補佐官が整え、要点を付け、関係
自分の失敗を残す。 それは、やはり怖い。 だが、残さなければ同じことをする。 自分だけではない。 次に照会文を書く誰かも。 「はい」 ミレーヌは別の紙を取り出した。 上に、少し迷ってからこう書いた。 照会文の不備記録 その下に続ける。 受領先に責任追及と受け取られる表現あり。修正。 文字にすると、頬が熱くなった。 自分の失敗が、はっきり紙に残る。 でも、不思議と逃げたい気持ちは少なかった。 失敗が形になったから、直せる。 そう思えたからだ。 午後遅く、クラリスが慈善記録官室へ顔を出した。 マルタから簡単な報告は行っていたのだろう
「……はい」 「地方孤児院は、王宮の書式に慣れていません。人手も少ない。受領控えを書く者が、院長一人かもしれない。あるいは、読み書きに慣れた職員が限られているかもしれない」 ミレーヌは、手元の紙を見つめた。 自分の文面が、急に冷たく見えてくる。 このままでは受領確認として認められません。至急、正確な数量、状態、受領者名を記入し、再提出してください。 間違ってはいない。 でも、受け取る側からすればどうだろう。 王宮から、あなたの書類は認められません、と言われたように見えるかもしれない。 自分たちが何か悪いことをしたのかと怯えるかもしれない。 「確認は、相手を怯えさ