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第 7 話

last update Tanggal publikasi: 2026-08-09 11:21:07
だが、彼女の隣にいた若い司祭補佐が、不安そうに目を伏せた。

オスカーは、胃の辺りに痛みを覚えた。

「殿下。議題の順番は、単なる並びではございません」

「では、何だ」

「発言権の優先、予算配分の重み、王家がどの案件を重視しているかの表示でもございます」

ジュリアスは不機嫌そうに唇を結んだ。

「朝から細かいな」

細かい。

その一言で、オスカーは昨夜のクラリスの背中を思い出した。

あの方は、この“細かい”ものを十年近く積み上げていたのだ。

そして、それを細かいと呼ばれた。

ミレーヌが一歩前へ出た。

「あの、殿下。でしたら、皆様に順番にお話しいただけばよろしいのではありませんか?」

彼女は善意で言った。

本当に、そう思っている顔だった。

だからこそ、場は凍った。

順番に話せばいい。

それは、王宮の朝会を知らぬ者の言葉である。

この場で誰が先に話すかは、ただの順番ではない。

王家が誰の訴えを重く見ているかを示す。

王太子妃候補がそれを知らない。

その事実が、重臣たちの目の中に冷たく沈んだ。

ジュリアスはそれに気づかず、むしろ安心したように頷いた。

「そうだな。ミレーヌの言うとおりだ。難しく考えすぎるから滞る」

マルタが、ほんのわずかに目を伏せた。

オスカーは、心の中で三倍の胃薬を四倍に増やした。

「では、最初の議題を」

「はい」

オスカーは、候補一覧の一番上を見た。

慈善事業寄付金配分。

なぜ一番上にあるのか。

おそらく正式文書を作った時点では、神殿から届いた順に記録しただけだ。

クラリスなら、これを朝会の冒頭には置かなかった。

財務卿がいる前で、神殿寄付金を最初に出せばどうなるか分かっていたからだ。

だが、王太子が上からと言った。

オスカーは逃げられない。

「第一議題。王都大神殿管轄、孤児院ならびに施療院への冬季寄付金配分について」

フィオナ司祭が静かに顔を上げた。

バルツァー財務卿の片眉が、はっきり動いた。

「冬季寄付金ですと?」

低く、重い声だった。

「まだ北方街道の補修費も、軍部の備蓄費も確定しておりません。それより先に神殿への配分を決めるおつもりか」

軍務局長が鼻を鳴らした。

「補修費を後回しにすれば、雪が来る。街道が止まれば物資も兵も動かん」

フィオナ司祭は穏やかに言った。

「孤児院の冬支度も、雪を待ってはくれません。毛布と薪は、今月中に手配が必要です」

「それは理解している」

バルツァーは理解していない顔で言った。

「しかし財源は一つです。神殿は毎年、要求ばかりが早い」

「要求ではございません。昨年、王妃執務院より今年の冬季支援を前倒しで内示すると伺っておりました」

フィオナの一言で、オスカーは目を閉じたくなった。

それは確かにあった。

クラリスが手配していた。

孤児院の冬支度は、薪商人との契約が早いほど安くなる。だから秋の終わりでは遅い。夏の終わりに見込みを出し、初秋に内示、冬前に支給。

その流れを、クラリスは昨年作っていた。

今年も同じにする予定だった。

だが、それを知っている資料は、正式文書ではない。

クラリスの私的な覚書の中だ。

「そのような内示は、正式決定ではありませんな」

バルツァー財務卿が切った。

フィオナ司祭の目が、少しだけ細くなる。

「では、王妃執務院からの言葉は、正式ではなかったと?」

「決裁印のないものは、あくまで相談です」

「その相談を信じて、孤児院では今年、先に冬服の採寸を始めております」

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