Mag-log in「でしょうな」 それは、今日初めて少しだけ柔らかい声だった。 会議が終わった後、エリオットがクラリスへ近づいた。 「クラリス顧問」 「はい」 「先ほどの条件整理、助かりました。財務院側からも、交易利益と慈善物資を分ける理由が立ちます」 「あなたの発言があったからです」 エリオットは少しだけ目を伏せた。 「財務院内では、また嫌がられると思います」 「でしょうね」 「でも、財務院のためにも必要だと思います」 「はい」 クラリスは、少し声を低くした。 「無理をしすぎないでください」 エリオットは苦笑した。 「それは、クラリス顧問に言われると不思議です」 「最
「確かに、慈善免除分の荷が商業倉庫へ移れば、関税記録にも影響します」 「はい」 エリオットは続けた。 「金額が大きいほど、確認が必要です。交易路だからこそ、です」 その言葉は、前の協議でも彼が言ったものに近かった。 だが今回は、より財務院の言葉になっている。 慈善のためだけではない。 財務のためにも、分ける必要がある。 グレゴールはしばらく黙っていた。 その沈黙は、エリオットにとって長かっただろう。 彼は財務院内で孤立し始めている。 ここでまた発言するのは、簡単ではなかったはずだ。 しかし、エリオットは目を伏せなかった。 「……一理あります」
クラリスはその点を軽んじなかった。 「そこを確認するために、まず共同調査が必要です」 「共同管理ではなく?」 「はい。現時点では、共同管理に進む前に、毛織物と薬草布の二品目に絞った共同調査を提案します」 セルゲイ大使が静かに頷いた。 「ノルヴァルト公国としても、その方向で再提案する用意があります」 グレゴールはセルゲイを見た。 「大使も、共同管理ではなく調査からでよろしいと?」 「制度は、急げば壊れます」 セルゲイは穏やかに答えた。 「長い交易路ほど、最初の杭を深く打つべきです」 詩のような言い回しだが、内容は現実的だった。 グレゴールは少しだけ鼻から息を吐い
その下に、まず一行。 財務院の関与は不可欠。ただし単独管理は不可。 オスカーが、その一文を見て頷いた。 「今回の中心ですね」 「はい」 「財務院が見たら、かなり嫌がりそうです」 「でしょうね」 クラリスは、淡々と答えた。 「でも、書きます」 午後、財務院との協議が開かれた。 場所は財務院ではなく、王宮中央棟の小会議室。 どちらかの部署の部屋に入ると、場の主導権が偏る。 そこで、あえて中立の部屋が選ばれた。 出席者は、クラリス、レオンハルト、オスカー。 財務院側からは、グレゴール財務参事官、エリオット若手監査官、港湾会計担当官のボルク。 ノルヴァ
財務院からの照会文は、予想より早く届いた。 北方慈善交易路の提案が王宮筆頭実務顧問室に届いてから、まだ二日しか経っていない。 その間に、クラリスは王太子府、王弟府、王妃執務院、ノルヴァルト大使館との初期整理を始めたばかりだった。 財務院には、正式共有前の概要照会を出す予定だった。 こちらから出す予定だった。 しかし、向こうが先に動いた。 封筒には、財務院の公印。 差出人は、グレゴール財務参事官。 表題は、丁寧で、硬く、そして主張がはっきりしていた。 北方慈善交易路に関する財務院管轄確認について クラリスは、それを見ただけで小さく息を吐いた。 「来ました
オスカーは何も聞かなかったふりで記録を続けている。 会議の最後に、セルゲイは改めて提案した。 「では、北方慈善交易路共同管理案については、直ちに制度化せず、まず共同調査案として再提出いたします。対象物資は毛織物と薬草布。期間は三か月。調査範囲は輸出記録、港湾到着、国内中継、慈善受領先まで」 「その方向で、初期検討に入ります」 ジュリアスが王太子として答えた。 クラリスは、はっきり補足した。 「ただし、正式承認ではありません」 「承知しています」 セルゲイは笑った。 「即答しない貴女の流儀にも、慣れてきました」 クラリスは、少しだけ苦笑した。 「最近、周囲に徹底さ







