INICIAR SESIÓN寺巻さんと賢哉さんは、相棒でありお互いの理解者だと賢哉さんは言っていた。 賢哉さんも寺巻さんも、お互いに大事な人を亡くした過去を持つ相棒であり、同士と言ってもいい。そんな二人はもう、家族同然な存在であることに違いはない。 「寺巻さんも、きっと嬉しいと思うよ。賢哉さんにも家族が出来たこと」「そうだな。アイツは意外と心の優しいヤツだからな」ハンドルを握りながらそう話す賢哉さんは、どこか嬉しそうに微笑んでいた。 「寺巻さんにも子供の写真送ってあげたら?」「写真か。……そうだな、一応送っといてやるか。無事に産まれたってことは伝えてるけど」私はチャイルドシートで眠る我が子を眺めながら、「帰ったら、名前決めなきゃね」と呟いた。「この子に相応しい名前、考えなきゃ。大人になった時に、この名前で良かったって誇れる名前、付けてあげたい」「そうだな。大人になった時、きっとイケメンになるだろうからな」「賢哉さんに似て?」「ああ。……って、何を言わせるんだ」「ふふふ」 でもこんな会話が出来るのも、愛おしい我が子がいるからだよね。私に大切な宝物をくれてありがとう、賢哉さん。これからもずっと、あなたを愛してる。「ずっとさ、この幸せが続くといいね」私がそう話すと、賢哉さんは「そうだな。この幸せがずっと続くといいな」と微笑む。「私は、賢哉さんとこの子がいればずっと幸せだよ。賢哉さんとなら、ずっと幸せでいられる気がする」「それは嬉しいことを言ってくれるな」「本当よ。 私は、あなたと生きる未来しか見えてないからね」 窓の外を眺めながら、私は賢哉さんと出会った日から今日までのことを考えていた。 賢哉さんと出会ったあの日から、私の人生は大きく変わっていった。初めて出会った日にプロポーズされた時は、夢かと思った。でも私は、あの日のことは「奇跡」だと思っている。「俺だって、舞美絵と生きる未来しか見えてないよ。俺には、舞美絵しかいないからな」「私はずっと、あなたの家族だから。 この子も、あなたの家族だからね」賢哉さんはその言葉が嬉しかったのか、「家族か。……いい響きだな」と微笑んでいた。「そうだね。いい響きだよね、家族って」「ああ」私たちは今日から、家族になる。 ううん、結婚したあの日から私たちは家族になっていたんだ。「家族ってさ、温かいイメージがある
「帰ったら、名前決めないとな」「そうだね。 いい名前、考えないとね」この子に付ける名前は、私たちが一生懸命考えてあげるからね。楽しみにしててね、我が家の天使さん。「産まれてきてくれて、ありがとう」私は我が子を抱き抱えながら、そう呟いた。 すごく待ち望んでいた愛おしい我が子と三人での生活に不安もあるけど、賢哉さんと一緒なら大丈夫な気がする。「これから色々と大変になるな」「そうだね。 だけど、私たちならきっと大丈夫だよ」「そうだな。大丈夫だといいな」賢哉さんの運転する姿を眺めながら、私はその横で「安全運転でお願いしますね、パパ」と声をかける。「了解。安全運転、心掛けます。ママ」「……ママ、か」この子は初めて言葉を発すると時、なんて言うんだろうな。 私的にはやっぱり、「ママ」と言ってほしいけど、なんて言うかな……? もしかしたら「パパ」と言うかもしれないよね。男の子は大体喋れるようになるのって、大体二歳くらいになってからって聞いたことはある。 女の子の方は一歳半とかで、男の子より早いらしいと聞いたんだけど。 うちの我が子は、どうだろうか。 でも、それも楽しみの一つになる気がする。「賢哉さん、ちょっと寄りたいところがあるんだけど、いい?」「ああ、別にいいよ」私は賢哉さんに私たちが初めて出会った公園に連れて行ってほしいとお願いしたら、賢哉さんは「わかった」と快く連れて行ってくれた。公園に車を停めて、我が子を抱きしめながら、私たちは二人で歩いた。「懐かしいね。 私たち、ここで出会ったんだよね」「あの時、舞美絵死にそうな顔してたな」二人で公園をゆっくり歩きながら、出会った頃を思い出していた。「そうだったね。……でもあの時、あなたが私にプロポーズしてくれた」「そうだったな」「……あの時、プロポーズしてくれてありがとう」賢哉さんにプロポーズしてもらわなかったら、この子にも出会ってないし、そもそも賢哉さんと結婚することもなかった。「こちらこそ、プロポーズ受け入れてくれて、ありがとう」私は我が子を抱きながら「これからも、三人で幸せになろうね」と微笑んだ。「ああ、幸せになろうな」私たちは再び公園を歩き出す。「見て、気持ち良さそうに寝てるよ」「本当だ。寝てる」こんなにかわいい我が子との日々が始める。 気合い入れて頑張ろう。
最近は潜入捜査とか、少し時間がかかる捜査とかは減らしてくれてはいるみたいで、なるべく早く帰れるように仕事をセーブしてくれている。いつ何があってもいいようにと、おとり捜査も控えてくれている。 私のために仕事をセーブしてくれているのは、嬉しいけど……ちょっと複雑だったりする。「仕事、本当に大丈夫?」「大丈夫。 舞美絵は、何も心配しなくていい」優しくそう言葉を掛けてくれる賢哉さんは、私の頭を撫でてくれる。「……私のために、いつもごめんね」「何言ってる。 舞美絵は、謝ることなんて何もないだろ?」その優しい言葉の後で、賢哉さんは私のおでこにキスを落としてくれた。「舞美絵は、ちゃんと子供のことだけを考えてて」「……賢哉さん、ありがとう」私たちはもうすぐ親になる。初めての子供だから、もちろん不安もある。 だけど、私たちは二人で親になっていく。 だから、その不安も二人ならきっと乗り越えていける。「舞美絵の不安は、俺も一緒に背負っていくって言っただろ?」「うん」彼の言葉はいつも、私に勇気を与えてくれる。 私は、その言葉に励まされて頑張れる。「賢哉さん……二人で、頑張ろうね」「ああ、頑張ろう。一緒に」私は賢哉さんの微笑みに、救われている。「あ、すごく動いてる」「本当か? どれどれ」私のお腹に耳を寄せて、子供の鼓動を感じて嬉しそうな賢哉さん。私は、そんな賢哉さんとの幸せをずっと守りたいと思った。 「早く出て来たいって言ってるみたいだな」「確かに、早く出て来たいのかもね」この子が元気に産まれてきてくれれば、私はそれでいいの。 とにかく、何事もなく産まれてきてくれれば、それで。✱ ✱ ✱それから一ヶ月ちょっとが経ち、私は無事に第一子である男の子を出産した。 「かわいいね……赤ちゃん」「ああ、すごくかわいいな」家にいる時に破水してしまい病院へ向かうも、陣痛が来てもなかなか子宮口が開かず、第一子はなかなかの難産だった。産まれるまで十六時間くらいかかったから苦労もしたけど、ようやく会えた私たちの天使に、涙が止まらなくて感動した。こんなにかわいくて、こんなに愛おしい我が子に、私たちはもうどうしようもないくらい愛情を注ごうと決めた。ずっと会いたかった我が子に、私はもう笑みが止まらずにいた。 「どうしよう……すごくかわいい」「……舞
あれからお腹の子は、順調に元気に育っている。「ただいま、舞美絵」「おかえりなさい、賢哉さん」数ヶ月前までパパになる実感が湧かないと言っていた賢哉さんだけど、最近はパパになる実感が湧いているようだった。 「ただいまー、元気だったか?」家に帰るといつも、お腹の子に話しかけている賢哉さんは、もうすっかりパパの顔になっている。仕事がいつも忙しい賢哉さんだけど、賢哉さんは日々麻薬取締官としての仕事を全うしている。 私はそんな賢哉さんのことを尊敬しているし、これからも尊敬し続ける。「今日もね、すごく動いてるの。 元気すぎるくらいにね」「そうか。それはいいことだな」「うん」お腹の子が男の子だとわかった時、きっと賢哉さんは嬉しかっただろうなと思う。 性別がわかったのは、大体妊娠五ヶ月目の時だった。賢哉さんにはちゃんと男の子だとわかってから、教えてあげたいと思ったから、私はサプライズ的な感じで伝えた。賢哉さんはとても嬉しかったみたいで、私のことを子供ごと抱き締めてくれた。「男の子かあ……産まれて来るのが楽しみだな」「うん、本当に楽しみだね」この子は、どんな子に育つだろうか。「賢哉さん、ご飯食べるでしょ?」 「ああ、腹減ってる」 「今用意するから待っててね」私はキッチンへ向かいビーフシチューを温める。「今日はね、久しぶりにビーフシチューにしたの」「ビーフシチューか。いいな」 テーブルに二人分のビーフシチューとサラダを並べる。「さ、食べよう」「ああ、食べよう」二人で「いただきます」と手を合わせ、ビーフシチューを口にする。「ん、美味い」 「本当? 良かった」家で賢哉さんとこうしてご飯を一緒に食べられる喜びがあるって、幸せだ。「ビーフシチュー、本当に美味しいね」「ああ、すごく美味い。 舞美絵と一緒に食べているから、より美味いのかもな」賢哉さんは微笑みながら「俺は舞美絵と一緒に食べるご飯が、一番美味くて好きだよ」と言ってくれた。「嬉しい。ありがとう」賢哉さんと一緒にご飯を食べる時は、二人で他愛もない話をする。「最近寺巻のヤツ、いい感じの人がいるらしいんだけどさ」「え、そうなの?」寺巻さんにもついに彼女が……?「なんか、距離の詰め方がわからないって悩んでるみたいなんだよな」「距離の詰め方、か……。結構そ
「お腹の子が大きくなったら、舞美絵のチキン南蛮食べさせてやりたいな」「それは嬉しい」「マジで美味いからな、舞美絵のチキン南蛮は。世界一美味いと思う」 ご飯を食べながら、舞美絵は「ええ?本当に?」とびっくりしている。「本当だ。舞美絵のチキン南蛮食べたら、他のチキン南蛮は食べられないよ」「そんな、大袈裟だよ」 舞美絵はそう言っているけど、俺にとってそれは大袈裟なことでもなんでもない。「俺にとっての思い出の味は、このチキン南蛮かな」「思い出の味かあ。……それは、嬉しいな」「これからも、たまにこうしてチキン南蛮作ってくれると嬉しい」舞美絵は嬉しそうに「それは、もちろん」と微笑む。「あ、賢哉さん」「ん?」舞美絵は俺に「明日のおにぎり、一緒に作る?」と聞いてくれるので、俺は「いいのか?」と返事をする。「もちろん、一緒にやろうよ」「ああ、頼むよ」「せっかくだから、寺巻さんの分作ってあげたら?」え、俺が寺巻の分を俺が……? ま、まあ、作ってやってもいっか。「おにぎりの具材いくつか用意したから、好きなの作っていいからね」「ありがとう」おにぎり作りは寝る前に行うことになった。「ごちそうさまでした」「お粗末さまでした」 夕飯の後は、先にお風呂に入ることにした。 「舞美絵、風呂出たぞ」「あ、うん」舞美絵はソファに座って、何やらスマホを見ていた。「何見てるんだ?」「んー? 赤ちゃんの名前、何しようかなって思って見てたんだ」「名前か……。そうだよな、名前決めないとな」俺はタオルで髪の毛を拭きながらソファに腰掛ける。「性別、もうわかってるんだろ?」「うん、分かってるよ」知りたい気持ちはあるが、舞美絵からサプライズの発表があるのを待つことにする。「名前ってその子の一生を左右するから、やっぱりちゃんと決めたいよね」「そうだな。……大人になった時に恥ずかしくない名前にしないとな」「そうだね」舞美絵はスマホをテーブルに置くと、「私もお風呂に入ってくるね」とソファから立ち上がる。「賢哉さん、お風呂出たらおにぎり作るから待っててね」「わかった」俺も今後はおにぎりくらい作れないとな。舞美絵に子供が産まれたら、舞美絵が一番大変になるわけだし。俺が今のうちに、少しでも出来ることを増やしておきたいというものあ
家族になる喜びを知ったからこそ、俺は言える。 そんな言葉で語れるほどのことじゃないけど、俺は何よりも家族を大切にしたいと思ってる。家族より大切にしないといけないものなんて、きっとないはずだ。「親父さん、体調はどうなんだ?」「あんまり芳しくはないな。……認知症も発症してるし、食欲もだんだん落ちてきてるみたいで、日に日に衰弱していってるよ」「……そうか」 寺巻は休みの日、今は親父さんのところへ行っているが、あまり体調は良くないようだ。「この間なんか、また施設勝手に抜け出して徘徊してたらしいしな」 「そうか。……徘徊してたのか」前に寺巻から「親父さんの体調があまり良くない」とは聞いてはいたが、認知症のせいもあり、入り込むだけでするようになっていたとは……。「まあな。 でも俺に出来ることなんて限られてるし、施設の人にお願いするしかないんだけどな」「……まあ、お前も四六時中一緒にいられるわけじゃないもんな。 面倒見るの大変だよな」「仕方ないさ。これも、全部事故のせいだし」寺巻は深くため息を吐くと、「うだうだ考えてても、仕方ないよな。 起きたことは変えられないし、前向いて生きていくことしか出来ないもんな」と目の前にあったお茶を飲み干す。「俺は、ずっとお前の味方だよ。どんな時もな」「ありがとうな、相棒よ」寺巻の悲しみは、俺にもよくわかる。✱ ✱ ✱「ただいま」その日仕事を終えて帰宅すると、キッチンからいいニオイが漂ってくる。 このニオイは……唐揚げか?「ただいま、舞美絵」「あ、おかえりなさい、賢哉さん」「やっぱりこのニオイは、唐揚げか?」 キッチンから漂ってくるニオイが唐揚げだと思ったが、どうやら唐揚げではないようだ。「残念。今日の夕飯はチキン南蛮だよ」「チキン南蛮か。 唐揚げだと思ったんだけどな」でも舞美絵の作るチキン南蛮は格別に美味すぎるから、また食べられるのは嬉しい。「唐揚げはまた今度ね」「わかった」「もうすぐ出来るから、着替えてきたら?」 「ああ、そうするよ」舞美絵の料理が復活してから、俺は食欲が戻ったようにまた食べるようになった。 今まで料理をあまりしてこなかった代償のせいか、簡単なものしか作れなかった。 最近やっとうどんを茹でるようになったり、パスタを茹でるようになったりはしたけど、そんなものし







