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第55話 もう一度、桜の下で

مؤلف: 八戸三春
last update تاريخ النشر: 2026-07-12 12:00:15

 三月最後の日曜日。

 都内の桜は、ようやく咲き始めていた。枝の先には固い蕾も残り、その間に淡い花が点々と開いている。

 澪は駅を出ると、去年と同じ道を歩いた。

 隣には鷹司がいる。

 一年前、この道を歩いたとき、二人はまだ上司と部下だった。

「覚えていますか」

 澪が聞くと、鷹司はすぐに頷いた。

「忘れるはずがありません」

「去年も、同じことを言っていましたね」

「そうでしたか」

「私が桜のことを覚えているか聞いたら、忘れるはずがないって」

 鷹司は少し考え、小さく息を吐いた。

「進歩がありませんね」

「変わらないところがあってもいいと思います」

 公園へ入ると、芝生にシートを広げる家族や、写真を撮る夫婦の姿が見えた。

 その光景を眺めていると、未来というものが急に身近に感じられる。

 以前の澪にとって、未来は不確かなものだった。

 努力しても評価されるとは限らない。信じた人が隣にいてくれるとも限らない。

 だから、期待しすぎないようにしていた。失ったときに傷つかないように。

 けれど今は違う。

「先週の家具、どうでしたか」

 鷹司が聞いた。

「楽しかったです。でも、一緒に暮らすこ
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